子ども兵士がいる国はどこ?子ども兵士の数と理由を調べよう

世界では数多くの子ども兵士が存在しています。なぜ、子どもが兵士として生きなければならないのでしょう。子ども兵士がいる国と数、理由について解説します。

子ども兵士の姿

子ども兵士とは?

赤十字国際委員会によると、子ども兵士とは強要されて、または、自らの意思によって軍や武装グループの一員となり戦闘に参加する子どもたちを指しています。少年のみならず、少女も含まれています(注1 P1)。

紛争地域の子どもたち

子ども兵士は、誘拐や強要だけではなく、自らの意思で戦闘に参加するケースも多いという現実があります。その背景には、深刻な社会の不平等、戦争による社会の崩壊、親族との別離などがあるのです。近親者が戦死したことによる復讐心や教育の欠如なども、子どもが兵士に志願する理由となります(注1 P1)。

子どもを戦闘に参加させるだけではなく、コックや荷物の運搬、伝達係やスパイ、性奴隷として利用することがあります。従って、戦闘に参加していない子どもでも、軍や武装勢力に利用された18歳未満を、広く「子ども兵士」とすることもあります(注1 P8)。

国際刑事裁判所の規程では、15歳未満の子どもへの強制的な徴兵や敵対行為への参加は戦争犯罪であると定められています。子どもの権利条約の選択議定書でも、18歳未満の子どもの軍への採用や敵対行為への参加を禁止しています(注1 P8)。それにもかかわらず、数多くの子ども兵士が存在しているという現実があるのです。

子ども兵士がいる国

子ども兵士が最も多く存在しているのはアフリカです。2015年時点で子ども兵士が武力紛争に参加していると言われているアフリカの国は、コンゴ民主共和国やソマリア、スーダン、南スーダン、ナイジェリア、中央アフリカ共和国などです。ミャンマーやイエメン、コロンビアなど、アジアや中東、南米でも子ども兵士の事例が報告されています(注1 P8, 注2, 注3)。

防衛研究所は子ども兵士の現状について次のように述べています(注3 P52)。

1998 年から 2003 年において子どもを兵士として用いている地域は、中南米、ロシア、 東南アジア、南アジア、中東、中央アフリカ、西アフリカにまたがっているとみられてい る。その中でもミャンマー周辺、コンゴ周辺、シエラレオネ周辺の 3 地域が、子どもを兵 士として使う習慣の中心地となっているとみられている。これらは基本的に政情も不安定 な発展途上国であり、中でも後で挙げられた 3 地域のうち 2 つは、世界の最貧地域である サハラ以南のアフリカに位置している。



子ども兵士の数

子ども兵士の数は25万人にも上るといわれています(注1 P1)。2007年には、子どもたちを戦争の道具にしないことを目的に「パリ原則」がスタートしました(注4)。それから10年のあいだに、65,000人の子ども兵士が解放されましたが(注5)、解放されていない子ども兵士の数はまだまだ多いという現状なのです。

国連などが確認した子ども兵のデータは次の通りです。

ユニセフHPより

  • 2013年以降、南スーダンでは推定1万7,000人の子どもが、中央アフリカ共和国では最大1万人の子どもが、徴用・徴兵されている
  • ナイジェリアとその周辺国では、ボコ・ハラムにより徴用・徴兵された子どもが2016年だけで2,000人近くいる
  • イエメンでは2015年3月の紛争の激化以降、1,500人近くの子どもが徴用・徴兵された


2006年時点で進行中の紛争55件のうち、18歳未満の子ども兵士が戦闘員として参加していた紛争は37件(68%)でした。さらにその中の8割が15歳未満の子ども兵士で、戦闘員全体の54.4%を占めていました。また、世界の武装組織366のうち、子ども兵士を使っているのは157でした。そのうち15歳未満の子ども兵士を戦闘に参加させている組織は84、さらに12歳未満の子ども兵士を使っている組織は64もあったのです(注3 P53)。

子ども兵士がいる理由


1980年代半ばには、戦闘に参加する子ども兵士はゼロに近い状態(注3 P53)でしたが、現在は数多くの子ども兵士が武器をもって戦ったり、後方支援などで戦闘に参加したりしています。それは一体なぜなのでしょうか。子ども兵士が存在している理由についてまとめました。

アフリカの子どもたち

誘拐された子ども兵士

ある日突然誘拐され、子ども兵士にさせられてしまうケースが紛争地域で多発しています。

2014年4月、ナイジェリアで中等学校の女子生徒約200名が武装勢力に誘拐されました。直ちに少女たちを無傷で解放するよう各機関が声明をだしました(注6)が、50人の生徒たちは数時間後や数日後に何とか逃げることができたものの、残りの少女たちの運命はわからないままです(注7)。

ナイジェリアでは2013年から2018年までに1,000人以上の子どもが誘拐され(注8)、少年たちは兵士として、少女たちは武装勢力の構成員との強制結婚や性的虐待を受けたり、自爆テロ要因として利用されているのです(注7)

少女が武装勢力に参加するようになったのは近年の特徴です。2006年時点では、子ども兵士の40%は少女であると推定されています(注3 P55)。

子ども兵士に志願するケース

紛争や内戦は貧困を拡大します。生活の基盤を失い、路上生活や難民としての生活を余儀なくされている子どもが多く発生しています。武装組織がそのような子どもに衣食住や生活資金を与えると、子どもは保護してくれる武装組織に自ら加わる可能性が高くなってしまいます(注3 P60)。

また、内戦地域に暮らす子どもは日常的に戦闘や虐殺を目の当たりにしています。家族が戦闘に巻き込まれて死亡すると、復讐心にかられて自ら武器を取ることもあります(注1 P1)。

武器を持つ子ども兵士のイメージ

子ども兵士でも使える小型武器の開発

子ども兵士の存在は、古代から確認されています。しかしその多くは軍事訓練のみで、実際に戦闘に参加することはありませんでした。近代まで、子ども兵士の役割は後方支援などの非戦闘任務でした。当時使われていた武器は大型で、子どもには取り扱うことができないという理由がありました(注3 P53)。

冷戦が終結して各地で内戦や紛争が頻発するようになり、子ども兵士の役割が変化しました。冷戦中に安価な小型武器が数多く生産され、紛争地域に大量に流入しました。子どもでも取り扱うことができる小型武器の開発が、戦闘に参加する子ども兵士の増大につながったのです(注9)。

ワールド・ビジョンによる子ども兵士への取り組み

ワールド・ビジョンは約100カ国で活動する世界最大規模の国際NGOです。世界で困難な状態に置かれている子どもたちを対象に、幅広い国際協力活動を実施しています。子ども兵士問題に対するワールド・ビジョンの取り組みを解説しましょう。

紛争下にある子どもたちへの支援

ワールド・ビジョンがウガンダなどで実施した子ども兵士問題への取り組みは、子ども 兵士の問題が紛争後の復興開発の障害となっていることを顕在化させ、国際世論の関心を呼びました(注3 P74)。

ワールド・ビジョンは、子ども兵士だった子どもたちに教育支援などを通して、紛争で失われた子ども時代を取り戻すよう働きかけています。

元子ども兵士への教育支援の様子

コンゴ民主共和国では元子ども兵士が、再び兵士に戻る危険性があります。そのような困難に直面している子どもたちへ、ワールド・ビジョンはャイルド・スポンサーシップを通した支援活動も実施しています。

チャイルド・スポンサーシップは、子どもたちが健やかに成長できる持続可能な環境を整えることを目指しています。子どもが教育を受ける権利や、安全に暮らす権利が守られるように、支援地域の人々とともに水衛生保健、栄養教育、生計向上等に取り組んでいます。

また、活動の成果を地域の人々自身が将来にわたって維持し、発展させるために人材や住民組織の育成にも力を入れています。

ワールド・ビジョンは、難民のなかで最も弱い立場の子どもたちを対象に支援活動を実施しています。難民の半分は18歳未満の子どもです。難民の子どもたちの多くは、教育の機会や安全に過ごせる場所が与えられていません。基礎学力に乏しくなり、暴力や虐待、児童労働や早婚などのリスクにさらされているのです。

紛争などの影響で子どもらしい生活を奪われるばかりか、兵士として過ごさなければならなかったケースも沢山あるのです。明るい未来を描くことができない子どもたちが、とても多いのです。

この活動は、皆さまからの募金によって成り立っています。子どもたちが「武器」ではなく「知恵」を得ることができるよう、難民支援へのご協力をお待ちしています。

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Take Back Future キャンペーン

難民の子どもたちの多くは、長期化する避難生活の中で学校に通えず、教育の空白期間が生じています。基礎学力が乏しくなるだけでなく、幼稚園や学校など安全に過ごせる場所を失うことで児童労働や虐待、早婚などのリスクにさらされています。避難する途中で親とはぐれて一人になったり、保護が受けられない子どもは特に、子ども兵士のターゲットとして狙われやすい状況です。

ワールド・ビジョンは、難民の子どもの明日を取り戻すためにTake Back Futureキャンペーンを2018年から4年間の計画で展開しています。教育を通して、紛争や貧困により移動を強いられる子どもたちに対する暴力を撤廃し、暴力が繰り返されない未来を築くことを目指しています。

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