中南米の貧困問題と国際協力

アメリカの国境を越えて、移民になろうとする中南米の人々の様子がニュースで流れています。その背景には貧困問題があるといわれています。中南米の国々ではどのような貧困問題が発生しているのでしょうか。中南米の貧困問題を解決するために、どのような国際協力が実施されているのでしょうか。ワールド・ビジョンが中南米で実施している支援の内容についても解説します。

中南米とは

アメリカ大陸の中部と南部をあわせた地域を中南米と呼んでいます。どのような国々か、ご存知でしょうか。

中南米の子どもたちの笑顔

日本のODAプロジェクトによる区分

日本の政府開発援助(ODA)では、国際協力を行う対象の国々を8つの地域に区分しています(注1)。「東アジア地域」「南アジア地域」「中央アジア及びコーカサス地域」「サブサハラ・アフリカ地域」「中南米地域」「大洋州地域」「欧州地域」そして「中東・北アフリカ地域」です。

外務省HP:ODA(政府開発援助)国別地域別政策・情報 より
外務省HP:ODA(政府開発援助)国別地域別政策・情報 より

そのうち、中南米地域は33カ国。多様性に富み、先住民も数多く住んでいる地域です。213万人の日系人(注2)も暮らしています。

外務省HP:ODA(政府開発援助)中南米地域 より
外務省HP:ODA(政府開発援助)中南米地域 より

ラテンアメリカとも呼ばれている

中南米地域はラテンアメリカとも呼ばれています。アメリカ大陸は北半球と南半球に大きく伸びていますが、北側をアングロアメリカ、メキシコ以南をラテンアメリカとして区分されています。

この地域には「ラテンアメリカ統合連合」があります。世界貿易機関(WTO)に承認された地域経済統合隊です。中南米33カ国のうち13カ国が加盟。日本はオブザーバー国のひとつとして、ラテンアメリカ共同市場の達成に尽力しています(注3)。

中南米の貧困問題

中南米には特有の貧困問題があるのでしょうか。中米と南米それぞれの貧困問題についてまとめました。

中南米ハイチ大震災の被災者
中南米ハイチ大震災の被災者

中米の貧困問題

中米は、南米と北米をつなぐ細長い地域とカリブ海の島々とに位置しており、小規模経済国が数多く密集しています。

この地域は自然災害が多いという特徴があります。度重なるハリケーン、地震、干ばつなどの被害が続いており、経済発展を妨げる一因となっています(注4 P1)。

中米地域には、西半球でも最貧国と言われているハイチなどの国々があります。ハイチでは大きな地震があり、更なる貧困に苦しんでいます。中米地域で貧困の状態で暮らす子どもの割合は、エルサルバドルでは44%、グアテマラでは68%、ホンジュラスでは74%にものぼります(注5)。

政情不安や紛争、犯罪が多いこともこの地域の特徴です。暴力、貧困、機会の欠如などが背景となり、北米への非正規移民が増えているという問題が発生しているのです。

残忍なギャングによる暴力と貧困から逃れるために、多くの子どもたちが北米を目指して北米に渡ろうとしています。その道中では誘拐、レイプ、殺される危険があります。ようやく北米にたどり着いても、多くが強制送還されてしまい、より一層困難な状態に陥っているのです(注6)。北米と中南米の所得格差はとても大きく、2013年度の北米の所得が一人当たり5万米ドルを超えるのに対し、中南米は1万米ドルに届いていません(注7)。安全でより良い暮らしを求めて、中米の人々は非正規移民となる道を選んでいるのです。

ベネズエラ危機では、多くの難民が発生しています。世界有数の産油国でもあり、カリブ海のリゾートとして知られていたベネズエラですが、政情不安に陥り、450万人もの人々が故郷を追われました。南米最大の難民危機といわれています(注8)。2019年11月現在、いまだ解決には至っていません。

政情不安、自然災害、暴力、貧困など悲惨な状態が重なり、中米の多くの人々は自国で安全に暮らすことが困難となっています。特に子どもたちへの影響は大きく、様々な機会が奪われており、貧困から抜け出せない深刻な状態となっています。

南米の貧困問題

南米の貧困問題にはどのような特色があるのでしょうか。南米の国々でも経済格差が問題となっています。ブラジルなどの高中所得国と、ボリビアなど低中所得国との格差はもちろん、国内での地域格差も顕著です。経済成長した国の中でも、所得格差や地域格差が深刻化しており、麻薬や治安の問題も存在しています(注9 P82)。

南米には多様な先住民族が住んでいます。先住民族は世界で最も不利な立場に置かれているのです。多くの先住民族は、政策決定プロセスから外され、搾取され、ぎりぎりの生活を強いられています。社会に強制的に同化させられたり、弾圧されることもあります(注10)。先住民族や少数民族に配慮した開発となっているか、注意が必要なのです。

ボリビアは南米で最も貧しい国のひとつと言われています(注11)。先住民測や少数民族の問題に加えて、児童労働の問題があります。2014年7月現在、ボリビアで働く子どもの58%が14歳未満でした。ボリビアの法律では、12歳の子どもでも保護者の同意があれば働けること、自営であれば10歳の子どもでも働けることなどが例外として認められているのです。子どもたちは教育の機会を奪われ、経済的に搾取されている状況なのです(注12)。

南米では経済格差や治安のによる貧困問題、先住民族問題、児童労働問題があり、多くの子どもたちが困難な状況下に暮らしているのです。

中南米の貧困問題を解決するための国際協力

中南米には深刻な貧困問題があることがわかりました。それらの問題に対して、どのような国際協力が行われているのでしょうか。

中南米の貧困地域の子どもたち
中南米の貧困地域の子どもたち

国連による支援

国連は、中南米全体をカバーし経済発展を促進する目的で、国連ラテンアメリカ・カリブ委員会を1948年に発足しました。中南米33カ国と域外12カ国で構成されており、その中には日本も含まれています(注13)。

国連の各機関もそれぞれ活動しています。国連開発計画(UNDP)の活動を紹介しましょう。UNDPは中南米に対して「世界で最も不公平な15カ国のうち10カ国をかかえている」「世界で2番目に災害にみまわれやすい地域」と述べており、貧困層や女性への配慮を求めています。暴力や政情不安定に直面しているこの地域に対し、UNDPは司法制度全体をカバーする統合されたアプローチを促進し、予防措置や犯罪対策、社会復帰関連の行動を促進するプログラムを支援しています(注14 P14)。

日本政府による支援

日本政府は、中南米地域に対して多様性と発展段階に応じた、きめ細かい援助を実施しています。

日本の経験を活かした防災、復旧・復興支援をハイチで実施しました。また、中南米特有の寄生虫病であるシャーガス病撲滅のための技術支援を行い、感染リスクを減少させました。農業や水産分野への援助などにより、安定した経済成長にも貢献しています。日系社会への支援もODAを通じて行われています(注2)。

日本政府は教育分野にも力を入れています。無償資金協力で小学校を建設したり、多くのボランティア(青年海外協力隊)を投入して教員の指導能力の向上を目指したりしています(注15 P11)。

また、日本はメキシコ・チリ・ブラジル・アルゼンチンの4各国をパートナーに、「南南協力」も実施しています(注15 P12)。この4カ国が、他の中南米諸国に対して専門家派遣を行うこと等を通してへ技術協力を行っています。

南南協力とは、開発途上国の中で、ある分野において開発が進んだ国が、別の途上国の開発を支援することです。これまで教わる側だった途上国が教える側に立つことで、ノウハウや経験を蓄積することができます(注15)。南南協力は持続可能な開発目標(SDGs)の目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の重要な手段として明記されています。

ワールド・ビジョンによる支援

ワールド・ビジョンは中南米地域ではエクアドルエルサルバドルでチャイルド・スポンサーシップを通した地域開発プログラムを実施しています。

ワールド・ビジョンの中南米支援現場
ワールド・ビジョンの中南米支援現場

エクアドルでは、内陸部のプンガラ地域とコルタ地域で支援活動を実施しています。どちらの地域も先住民族が9割を占めており、住民の大部分が極貧生活を強いられているという状態です。プンガラ地域は標高3,000m以上の山岳地帯で、エクアドルの中でもとくに貧しく、電気、上下水道、教育・保健施設などのインフラ整備が遅れています。薬物やアルコール依存、家庭内暴力も問題です。コルタ地域も同様に山岳地帯で、識字率が最も低い地域の一つです。ワールド・ビジョンはこれらの地域で「生計向上」「教育の質」「栄養状態」「衛生知識の不足」に関するプログラムを実施しています。

エルサルバドルでは、ティエラ・ヌエバ地域とサンアグスティン地域で支援活動を実施しています。どちらの地域も、子どもたちが犯罪と隣り合わせの日々を送っています。ワールド・ビジョンはこれらの地域で、「保健・栄養」「教育」「生計向上」プログラムを実施しています。貧困ゆえに犯罪に手を染めたり、アメリカに移住を試みる大人が多い地域で、子どもたちが安心して暮らせるよう支援しています。

ワールド・ビジョンは、中南米地域で緊急支援も実施しています。2019年にハイチで大地震が発生した時も、直後から緊急支援を実施しました。(報告書はこちらpdfアイコン)皆さまの募金をもとに、様々な援助機関と協働し、325,540人の被災者に1,766トンの食糧を、28,590人に緊急支援物資を配布しました。150人の孤児に優先的に医療品・食糧・水を配布したり、1,200世帯にシェルターを配布する活動も実施しました。緊急支援のあとは、中長期的な支援に移行し、被災者のニーズに沿った計画を策定していきます。

ワールド・ビジョンは、中南米の格差問題や貧困問題、先住民族問題、紛争や自然災害問題に向き合い、子どもたちが安全に過ごし、未来に希望を持つことができるよう支援を行っています。

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参考資料

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