子どもの貧困と教育格差について考えよう

子どもは大人よりもはるかに弱い立場にいます。ユニセフと世界銀行は「子どもの貧困率は大人の2倍」と発表しました。2016年度のデータによると、開発途上国に暮らす子どもたちのうち、3億8500万人が極度の貧困状態にあるということでした(注1)。

貧困状態にある子どもたちが、その悪循環から抜け出すためにはどうしたら良いか、考えてみましょう。

子どもの貧困とは

開発途上国に暮らす多くの子どもが、極度の貧困状態にあります。子どもの貧困とは、どのような状態のことをいうのでしょうか。なぜ開発途上国の子どもの多くが、貧困の状態に陥っているのでしょうか。子どもの貧困の原因について解説します。

子どもの貧困の原因

ユニセフは、子どもの貧困について次のように述べています。

子どもにとっての「貧困」も国民所得だけでは語りつくせません。子どもたちが経験する貧困は、子どもの権利条約にある権利が守られていない状態でもあります。水、衛生施設、栄養、住居、教育、情報などの基本的な社会サービスを利用できるかどうか、そして子どもたちが潜在能力を十分に発揮できる環境にあるかどうかをはかる必要があるという意味では、人間開発指数でも十分ではないでしょう。(注2より抜粋)


子どもの権利条約には4つの権利が定められています。「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」です(注3)。これらの権利がはく奪されている状態が、子どもが貧困状態にある、ということなのです。4つの権利の内容は次の通りです。

子どもの権利条約 4つの権利(注4より抜粋)

生きる権利 防げる病気などで命を奪われないこと。病気やけがをしたら治療を受けられることなど。
育つ権利 教育を受け、休んだり遊んだりできること。考えや信じることの自由が守られ、自分らしく育つことができることなど。
守られる権利 あらゆる種類の虐待や搾取などから守られること。障害のある子どもや 少数民族の子どもなどは特別に守られること。
参加する権利 自由に意見を表したり、集まってグループを作ったり自由な活動を行っ たりできることなど。


ただ「お金が無い」という経済的な理由だけではなく、子どもの貧困の原因には医療や教育が与えられないこと、自由や権利や機会が奪われていること、社会サービスが受けられないことなど、様々な要因が絡み合っていることがわかりました。

世界子供白書から見る子どもの貧困

ユニセフは世界の子どもに関する統計を「世界子供白書」として発表しています。2017年には「デジタル世界の子どもたち(注5)」と題して、インターネットを切り口にした統計がまとめられました。

インターネットに接続するデジタル化社会には危険もありますが、大きな希望もあります。世界子供白書には「他の手段では最貧困層の子どもたちが逃れられないかもしれない、何世代にもわたって続く不利な立場の連鎖を、断ち切る可能性ももたらされる(注5 P45)」と述べられています。

子どものインターネット利用率は、高所得国では高く、最低所得国では低いという統計があります(注5 P47)。最低所得国とはサハラ砂漠以南のアフリカやアジアの貧しい国々です。経済的に貧困な子どもたちはインターネットへのアクセスができず、様々な情報や機会を逃しており、貧困な状態から抜け出すのが困難になっているのです。

2016年に発表された世界子供白書は「一人ひとりの子どもに公平なチャンスを」というテーマでまとめられました(注6)。医療や教育へのアクセス格差が是正されること、機会などを公平にすることで子どもたちが未来を変えることができ、貧困の連鎖を断ち切ることができると述べています。

教育格差による子どもの貧困

子どもの貧困と教育には関係があるのでしょうか。国連開発計画(UNDP)は貧困と教育の関係について、「十分な教育を受けられないこと、またもっと深刻な場合、教育を受ける機会さえも与えられないことは、人の一生を限られたものにしてしまう最大の要因の1つです(注7)」と述べています。教育は貧困を脱する手立てとして、とても有効なのです。そのように大切な教育ですが、格差があることが問題になっています。

国や地域による教育の格差

国によって教育の格差があることが明らかになっています。ユネスコによる2016年のデータ(注8)によると、学校に通っていない子どもの割合が最も高いのは、サハラ砂漠以南アフリカの国々でした。欧州や北米などの先進国と比べると、開発途上国であるアフリカと南アジアが大きく立ち遅れています(注8 P5)。

世界銀行は、世界の国々を経済発展の状態で分類しています。その内訳は、日本や欧米が属している「高所得国」・中国やブラジルなどが属している「上位中所得国」・インドやエジプトが属している「下位中所得国」・サハラ砂漠より南のアフリカの国々やネパールなどが属している「低所得国」となっています(注9)。学校に行っていない子どもの割合をあてはめると、高所得国では学校に行っていない子どもの割合は低く、低所得国では高いというデータが出ています。国によって教育格差があることは明らかなのです。

2016年度 学校に通っていない子どもの割合 (注8 P12より抜粋)

小学校に通っていない子どもの割合(%) 中学校に通っていない子どもの割合(%) 高校に通っていない子どもの割合(%)
高所得国 3 2 6
上位中所得国 4 7 20
下位中所得国 9 18 46
低所得国 20 38 59


ひとつの国の中にも教育格差があります。都市部にはいくつも学校があり、道も良いので通いやすい傾向にありますが、地方の学校は少ない上に道路などのアクセスが悪く、通いにくいという問題があります。道路の状態なども、都市部と地方の間に教育格差が生じる原因のひとつになっています。

男女や民族などによる教育格差

教育格差は、男女間や民族間にも存在しています。国際協力機構(JICA)は「小学校に通えない女子は世界全体で3,200万人。そのうち、生涯にわたり小学校に通う可能性がない女子の人数は男子の1.5倍となっている(注10)」と述べています。ユネスコによる統計(注8 )を見ると、低所得国では特に男女間に教育格差があることがわかります。内容は次の表のとおりです。

2016年度 学校に通っていない子どもの割合 男女差 (注8 P11より抜粋)

小学校に通っていない子どもの割合(%) 中学校に通っていない子どもの割合(%) 高校に通っていない子どもの割合(%)
高所得国 3.8 3.1 1.9 1.5 7.0 5.8
上位中所得国 3.8 4.2 6.9 7.5 22.8 17.6
下位中所得国 8.2 10.7 18.9 17.4 44.9 47.1
低所得国 17.9 22.9 34.8 41.4 55.6 62.9

少数民族や難民なども、教育へのアクセスがとても難しい状態です。UNDPは「純粋に経済的な障壁だけでなく、政治的・社会的・文化的な障壁によって制度的に排除されている人々 には、女性と少女、農村部の住民、先住民、少数民族、障がい者、移民・難民、LGBT のコミュニティ などが含まれる(注11)」と述べています。これらの人々は教育制度から排除されていることが多く、教育格差が生じているのです。

JICAはGlobal Partnership for Education(注12)のデータを総括して「途上国に住む障害がある子供の9割が学校に通えていない。また、途上国に住む成人の障害者の識字率は3%にとどまる。(注10)」と述べています。

また、紛争下の子どもたちも教育へのアクセスが容易ではありません。学校が破壊され、教師もいない状態なのです。紛争地帯の子どもたちで、初等教育を完了できたのは2000年で56%、2016年には改善されたものの70%という結果でした(注13)。

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紛争の影響を受けながらも学校に通うモスルの子どもたち
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子どもの貧困問題を解決するには

公平で質の高い教育は、子どもたちに貧困から抜け出す道筋を与えてきました(注6 P41)。子どもの貧困問題を解決するには、教育へのアクセスの平等化と、教育の質を高めることが重要です。国際連合や政府開発援助、そしてワールド・ビジョンは、子どもの貧困問題にどのようにアプローチしているのでしょうか。

国際連合の動き

10月17日は国際連合が決めた「貧困撲滅のための国際デー」。世界各国で貧困撲滅のためのイベントが行われています。ユニセフは2015年10月17日の貧困撲滅のための国際デーに向けて「子どもの貧困対策を優先するように」と呼びかけました。世界の貧困問題は徐々に解決されているものの、最も貧しい子どもたちが取り残されているからです(注14)。ユニセフは、子どもの命と権利を守るために支援活動をしています。

子どもの貧困に関する支援を実施しているのはユニセフだけではありません。2015年に「国連持続可能な開発サミット」が開催され、2000年に採択された「ミレニアム開発目標(MDGs)」に続くものとして「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されました。達成すべき目標が17項目あり、目標達成のために国連の各機関が活動しています(注15)。

SDGsの目標の中には「4.質の高い教育をみんなに」という項目があります。持続可能な開発をするためには、教育が最も効果的だと再認識されているのです。2030年までに、すべての男女が無償で初等・中等教育を修了することが具体的な目標です(注16)。教育によって子どもが貧困の連鎖を断ち切り、より良い生活を送ることができるよう期待されています。

政府開発援助の動き

政府開発援助(ODA)も、子どもの貧困問題を解決するために様々なアプローチをしています。その中の一つに、SDGsの目標達成に向けた取り組みがあります。

日本政府も国内外の機関と連携して、SDGsの目標達成に取り組んでいます。まず、総理大臣を本部長にした「SDGs推進本部」を立ち上げました(注17)。分野別に取り組みを行っており、SDGsの「4.質の高い教育をみんなに」の項目も、国内外の機関と連携して目標達成に努めています(注18)。

国際協力機構(JICA)もODAの一環としてSDGsの目標達成に向けて取り組んでいます。「4.質の高い教育をみんなに」と「3.すべての人に健康と福祉を」の2つを開発の基礎ととらえており、これらを充足するための支援に力を注いでいます。JICAが中心的な役割を果たしていく目標の中に「教育」が含まれているのです(注19 P6~P7)。

国際NGOワールド・ビジョンの動き

ワールド・ビジョンも、SDGsに深くかかわっています。ミレニアム開発目標(MDGs)で達成できなかった目標を、SDGsに継承されるよう、各国政府に働きかけを行いました。最も貧しい子どもたちのために、アドボカシー活動と現地での支援活動の両方を実施しています。

勉強をしている開発途上国の子どもたち
勉強をしている開発途上国の子どもたち

ワールド・ビジョンは、子どもの教育格差を無くし貧困問題を解決するためにチャイルド・スポンサーシップを通した支援活動を実施しています。そして、子どもたちが健やかに成長できる持続可能な環境を整えていけるよう、支援地域の人々とともに水衛生、保健、栄養、教育、生計向上などに取り組みます。

チャイルド・スポンサーシップは学ぶ環境を整えるだけではなく、子どもたちを病気から守り、発育を助け、安全で衛生的に暮らせるよう環境を整えることに役立っています。家族の収入が増えるための取り組みも行っています。

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