先住民族とは?エクアドルの先住民族を支援しよう

先住民族という言葉をご存知でしょうか。中南米では先住民族の問題が多く発生しています。エクアドルを例に、先住民族の現状と、ワールド・ビジョンが行っている支援について解説します。

先住民族の子ども

先住民族とは?

先住民族とはどのような人々を指すのでしょうか。その定義と、中南米の先住民族の現状について解説します。

先住民族の定義

国際連合広報センターは、先住民族について次のように述べています。

先住民族は世界のもっとも不利な立場に置かれているグループの1つを構成する。国連はこれまでにもましてこの問題を取り上げるようになった。先住民族はまた、最初の住民、部族民、アボリジニー、オートクトンとも呼ばれる。現在少なくとも5,000の先住民族が存在し、住民の数は3億7000万人を数え、5大陸の90カ国以上の国々に住んでいる (注1)。


また「先住民族とは、植民国家による領有以前からその土地に居住していた人々であり、その言語、伝統的慣習あるいは社会組織などの文化の特徴をすべてもしくは一部保有している(あるいは保有していた)人々の子孫のことである(注2 vii)。」とも定義づけられています。 先住民族とは、もともとその地に住んでいた最初の住民たちである、ということがわかりました。先住民族という言葉は、植民地主義によって生まれたもので、差別の構造なくして存在しないものなのです(注3 P29)。

国連は先住民族について「もっとも不利な立場に置かれているグループのひとつ」と述べています。その理由については次の通りです。


多くの先住民族は政策決定プロセスから除外され、ぎりぎりの生活を強いられ、搾取され、社会に強制的に同化させられてきた。また自分の権利を主張すると弾圧、拷問、殺害の対象となった。彼らは迫害を恐れてしばしば難民となり、時には自己のアイデンティティを隠し、言語や伝統的な生活様式を捨てなければならない(注1)。

先住民族とは「最初の住民」であるにもかかわらず、後から入ってきた人々によって搾取されたり弾圧されたりするケースが多発しており、現在も困難な状態に置かれているのです。 国連は、先住民族の困難な状態を解決するために、1982年に先住民に関する作業グループを設置しました。先住民族に関する国連の動きは次の通りです。

先住民族に関する動き(国際連合広報センター:先住民族 より抜粋)
1982 国連の人権小委員会が先住民に関する作業グループを設置
「先住民族の権利に関する宣言」の草案を作成
1992 地球サミットで先住民族たちが彼らの土地や環境が悪化していることに懸念を表明
1993 国連総会が「世界の先住民の国際年」を宣言
1995-2004 世界の先住民の国際の10年
2000 先住民問題に関する常設フォーラム設置
2005-2014 第2次世界の先住民族の国際の10年
2007 国連総会が「先住民族の権利に関する宣言」を採択
「先住民族の権利に関する専門家機構」設置

先住民問題に関して重要な役割を果たしている国連機関が、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)です。「先住民問題に関する機関間支援グループ」や、先住民族コミュニティの5人の代表から構成されている「先住民のための任意基金評議員会」を支援し、先住民族がよりよく暮らせるようにサービスを提供しています(注1)。

中南米の先住民族の現状

中南米には多くの先住民族が存在しており、その約8割が貧困状況に置かれています(注2 P11)。中南米を「中米」と「南米」にわけて、先住民族の現状をまとめました。

中米の先住民族

中米のメキシコ・グアテマラ・ベリーズ・ホンジュラス・エルサルバドル・ニカラグア・コスタリカ・パナマなどに現在住んでいる先住民族は、推定で1190万人から1500万人といわれています(注2 viii)。

16世紀にスペインによる植民地化が始まりましたが、それ以前は「メソアメリカ」「環カリブ地域」「チブチャ」の 3つの地域に、推定250万人の先住民集団が暮らしていました(注2 P19,21)。トウモロコシやキャッサバなどの農業と狩猟採集が行われ、様々な文化を持つ社会を築いていましたが、植民地化にともなってヨーロッパから疫病が入り、先住民族の8割から9割が減少したといわれています(注2 P21)。

先住民族の多くは村落地域で農業に従事しています。季節労働者として農園で働くこともあるようです。中米それぞれの国で、先住民族は最も現金収入の低い層にいるとされています(注2 ix)。中米の先住民族は現金収入の道が限られ、経済的貧困に直面しているのです。

南米の先住民族

南米にも数多くの先住民族が居住しています。未だ発見されていない部族もいると言われているほどです。ここではブラジルとボリビアを取り上げて、先住民族の現状を調べました。

ポルトガル人がブラジルに上陸し植民地化する以前は、ブラジル全土には300万人の先住民族が住んでいたとされています。また、最近の研究ではアマゾン地域だけで800万人の先住民族が暮らしていたという仮説もあります。現在、ブラジルの先住民族人口は約90万人で、305の民族・274の言語を持つと言われています。ブラジル政府によって先住民族が保護されているものの、小さな民族や言語の消滅は続いており(注4)、貴重な文化が失われています。

アンデス3カ国のひとつであるボリビアは現在、人口の41%を先住民族が占めており、先住民言語が36言語あるという状態です。2006年には、先住民族出身の大統領が誕生。先住民族の権利拡大などの政策を実行し、2009年には国名が「ボリビア共和国」から「ボリビア多民族国」に変更することとなりました(注5)。2001年に実施された国勢調査によれば、ボリビア人口の62%が「自分は先住民族である」と自己認識している結果となりました(注3 P41)。

先住民の権利がみとめられつつある状況ですが、南米のアンデス地域では未だに人種・民族差別意識による社会の分断があり、開発事業を行う時などに対処が求められています(注6 P22)。

エクアドルの先住民族

エクアドルが2010年に実施した国勢調査によると、次のような人口分布が明らかになりました(注7)。

  • 欧州系 先住民混血72%
  • 先住民7%
  • アフリカ系・アフリカ系との混血7%
  • 欧州系6%

人口の8割近くが、先住民との混血または先住民であるということになります。エクアドルの先住民族組織と一番数の多い先住民族であるケチュア族などについて見てみましょう。

エクアドルの先住民族組織

エクアドルでは土地の配分をめぐる闘争を発端に、先住民族の組織化が始まりました(注8 P423)。組織化の経緯は次の通りです。

1972年・・・「エクアドル・キチュア先住民連盟」がアンデス高地に誕生
1980年・・・「エクアドル・アマゾン先住民連盟 CONFENIAE」がアマゾン地域で発足
1980年代初頭「エクアドル先 住民調整協議会 CONACNIE」設立
1986年・・・「エクアドル先住民連盟 CONAIE」設立

四天王寺大学紀要:エクアドル先住民運動-参加と抵抗より抜粋

1990年代に入ると先住民の抗議活動が頻発しました。1998年には憲法が改正されて先住民の権利が認められるようになり(注3 P29)、先住民族を取り巻く環境が改善することが期待されています。

ケチュア族

エクアドルの先住民族のうち90%以上はケチュア語を話す人々で、その多くは高地に住んでいます(注9 P82)。ケチュア族はインカ帝国を興した民族の子孫とされていて、独特の衣装や文化で有名です。エクアドルの首都キトは世界で最初にユネスコ世界遺産に認定されたほど文化遺産の多い場所で、インカ帝国の第2の都市として当時はとても栄えていました(注10)。

ケチュア語は、ペルー、ボリビア、エクアドルで最も多く話されています。また、アルゼンチン、チリ、コロンビアなどでも先住民族言語として存在しています。(注11 P43)。

その他の先住民族

エクアドルには20以上の先住民族がいて、それぞれ独自の言語や文化を持つと言われています(注12)。いくつか挙げてみましょう。

東部のジャングルにはコロラド語を話す2000人ほどの「サチラ族」が住んでいます。カカオやコーヒーなどを栽培して暮らしています(注13)。

アマゾン地域に住んでいるのは「シュアル族」。首狩り族ともよばれていて、独自の文化をもつ先住民族です(注14)。

エクアドルでは「メスティーソ」と呼ばれる、先住民族と欧州系白人との混血が人口の大多数を占めています(注7)。メスティーソはエクアドルだけではなく、中南米の多くの国にも存在しています。

エクアドルの先住民族の問題と支援

エクアドルの先住民族はどのような問題を抱えているのでしょうか。先住民族が抱えている問題を解決するために、ワールド・ビジョンがエクアドルで実施しているプログラムについて解説します。

エクアドルの先住民族

エクアドルの先住民族が抱える問題

1998年の調査(Borja-Vega and Lunde 2007),では、高地農村地域に住む先住民族の98%が貧困層であるという結果が出ました(注9 P83)。先住民の殆どすべては、就業して所得を得る機会が乏しいという現状にあります。農村地域に住む先住民族の76%は「低技能労働者」と見なされています。そのうち賃金労働者は26%で、74%は非賃金労働(自営と家族就業者)です(注9 P84)。

先住民族は貧困の状態にあるため、教育や医療へのアクセスも困難です。貧困の連鎖が断ち切れない問題に直面しているのです。

ワールド・ビジョンによる支援

ワールド・ビジョンは、エクアドルの2カ所で、生計向上・教育の質向上・栄養状態改善・衛生知識向上などの地域開発プログラムを実施しています。どちらも標高3000m以上の山岳地帯にある地域で、住民の9割が先住民族です。スペイン語の他にケチュア語も話されています。

プンガラ地域開発プログラム(2007~2023年)

特に貧しい地域で、電気、上下水道、教育・保健施設などのインフラ整備が遅れています。貧困だけではなく、薬物やアルコール中毒、女性や子ども家庭内暴力、年配者や女性の識字率が低いことなども問題となっています。

コルタ地域開発プログラム(2010~2026年)

インフラ整備の遅れや、薬物・アルコール中毒が多く、女性や子供への家庭内暴力が見られます。中等学校へ進学できない子どもが多い地域でもあります。

これらの地域開発プログラムは、チャイルド・スポンサーシップを通した支援活動です。

チャイルド・スポンサーシップは、子どもたちが健やかに成長できる持続可能な環境を整えることを目指しています。子どもが教育を受ける権利や、安全に暮らす権利が守られるように、支援地域の人々とともに水衛生、保健、栄養、教育、生計向上等に取り組んでいます。

また、活動の成果を地域の人々自身が将来にわたって維持し、発展させるために人材や住民組織の育成にも力を入れています。

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参考資料

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