カンボジアにおける貧困の原因と私たちにできること

カンボジアと聞いて、皆さんはまず何を思い浮かべますか? アンコールワットの荘厳な遺跡群でしょうか。映画「キリングフィールド」の恐ろしい光景でしょうか。日本からだけでなく海外からも観光先として人気の高いカンボジアは、近年プノンペンやシェムリアップなど都市部の発展が目覚ましいものの、いまだに貧困に苦しむ人が多いのが現状です。カンボジアの貧困についてまとめました。

カンボジアの子ども
カンボジアの子ども

カンボジアの貧困

世界銀行によると、カンボジア経済は目覚ましい発展を遂げ、貧困率も減少していることが明らかになりました。2007年のカンボジアの貧困率は47.8%でしたが、2014年には13.5%に減少したのです(注1)。世界銀行は2015年に、カンボジアが「低所得国」を卒業し「低中所得国」に仲間入りを果たしたと発表しました(注2)。それにもかかわらず、カンボジアは、開発途上国の中でも特に貧しいとされる後発開発途上国47カ国のリストに入っています(注3)。なぜカンボジアは貧困の状態にあるといわれているのでしょうか。

人間開発指数からみた貧困

経済的な指標だけでは貧困を測ることは困難です。国連開発計画(UNDP)は人間開発指数(注4)を用いて、各国の貧困の度合いを測っています。2018年のデータによれば、カンボジアは189カ国中146位という結果でした(注5)。カンボジアの出生時平均余命(平均寿命)は69.6歳、平均就学年数は4.8年、予測就学年数は11.3年、一人あたりの国民所得は3,597ドルでした(注6)。

鋭い表情で遠くを見るカンボジアの子ども
鋭い表情で遠くを見るカンボジアの子ども

人間開発指数はその国の経済成長だけではなく、保健・教育・所得の観点から貧困の度合いを測るものです。保健は、出生時の平均余命で測り、長寿で健康な生活を送っているかどうかを見ることができます。教育は、識字率・平均就学年数・予測就学年数などで測ります。平均就学年数は成人している人口が何年教育を受けたかの平均をあらわし、予測就学年数は、入学年齢の児童が何年教育を受けることができるかを予測したものです。所得については国民総所得(GNI)によって測られます。

後発開発途上国のリストにも載っているカンボジアは、人間開発指数でも下位であることがわかりました。高い経済成長率で注目されているカンボジアですが、まだまだ経済的にも人間開発的にも貧困状態にあるということが伺えます。人間開発指数は国の全体的なデータなのですが、カンボジアは地域格差が大きいことでも知られています。地域格差を測る指標はあるのでしょうか。

人間開発指数を補完するものとして多次元貧困指数(注7)があります。これは地域格差を知ることも可能なのです。2018年のデータでは、カンボジア全体の多次元貧困率は34.9%となっています。都市部と地方を比べてみると、都市部で多次元貧困に陥っているのは7.2%、地方では40.2%でした(注8)。カンボジアでは、地方に住む半数近くが深刻な貧困状態にあることがわかります。

ポルポト政権による影響

9世紀よりインドシナ半島を支配し、栄華を極めたアンコール王朝があったことで有名なカンボジア。1884年にフランスの保護領となり1953年に独立しました。1970年代はクーデターや内戦、ポルポト政権による自国民大量虐殺など凄惨な時代があり、国際的にも孤立しました。その後も政情不安が1990年代後半まで続いたのです。

葉を抱えながら悲しい顔をするカンボジアの子ども
葉を抱えながら悲しい顔をするカンボジアの子ども

カンボジアの貧困は、ポルポト政権時代の影響がとても大きいといわれています(注9)。当時は知識人を中心に、100万人とも200万人とも言われる人々が虐殺されました。眼鏡は知識人のシンボルとされ、真っ先に殺されていったという話もあります。隣人同士での密告、家族間の密告などが奨励され、家庭やコミュニティが徹底的に破壊されました。子どもの多くは親から引き離され、兵士として育てられました。強制労働や強制結婚、強制収容所などで、人々は心身ともに大きなダメージを受けているのです。

不幸な時代が終わり復興する段階では、深刻な人材不足の問題がありました。例えば教育分野では、教員不足が大きな問題でした。ポルポト政権下 の 1975 年~1979 年の間に 75%~80%もの教員が殺害され、または国外逃亡し、人材がいなくなったのです(注10)。

学校も大部分は破壊され、勉強をする場所もありませんでした。今では虐殺犯罪博物館として有名なトゥール・スレンは、もともとはフランス式の高等学校でした。そこには収容され命を奪われた人々の写真や虐待の道具が生々しく残されています。小さな子どもの写真もあり、とても胸が痛む場所です。

宗教も否定されたため、大部分の寺院が破壊されました。収容所になった寺院には血の付いた手形が壁一面に残っている場所もあります。農地も、ポルポト時代の無計画な集団農場で荒らされてしまった場所もありました。ポルポト政権下では多くの人の命や自由が奪われてしまったのに加え、目に見えるもの、見えないものが破壊されてしまったのです。

カンボジアの貧困問題への取り組み

経済発展が著しいカンボジアですが、地域格差が大きく農村部に住む大部分は多次元の貧困状態に陥っていることがわかりました。長く続いた内戦や独裁政権の影響が、現在も続く貧困の原因のひとつとなっているのです。このように複雑なカンボジアの貧困問題に対して、世界の援助国やNGOはどのような取り組みを行っているのでしょうか。

世界の援助国による取り組み

2016年の外務省によるデータでは、カンボジアに対する主要援助国は日本・オーストラリア・米国・EU・中国などで、主要な援助機関はアジア開発銀行(ADB)や世界銀行でした(注11)。日本をはじめ世界の援助国や国際機関が、カンボジアの復興と発展のために力を注いでいます。2015年に期限を迎えたミレニアム開発目標(MDGs)で、カンボジアは貧困率を19.5%以下とする目標を達成することができました(注12)。現在は持続可能な開発目標(SDGs)を履行するために努力しています(注13)。

笑顔でこちらを見るカンボジアの女性と子ども
笑顔でこちらを見るカンボジアの女性と子ども

日本は、古くからカンボジアと関係がありました。江戸時代には日本人町もあったとされています。アンコールワットの壁面には日本の武士による落書きも見られるのをご存知でしょうか。「うどん」「かぼちゃ」という言葉はカンボジアからもたらされたという説もあるほど、強い結びつきがあったのです。

ポルポト政権発足以来、日本はカンボジアとの関係を断っていました。1992年3月、17年ぶりに在カンボジア大使館を再開し、国交が正常化されました。その後、日本はカンボジアの和平と復興に向けて様々な取り組みを行っています(注14)。平成29年に日本政府が制定したカンボジアの国別開発協力方針では、大目標を「2030年までの高中所得国入りの実現に向けた経済社会基盤の更なる強化を支援」と定めました。重点分野として「産業振興支援」「生活の質向上」「ガバナンスの強化を通じた持続可能な社会の実現」の3つの目標が挙げられ、それに沿ったプロジェクトが実施されています(注15)。

NGOによる取り組み

カンボジアに対する国際支援では、NGOも大きな役割を果たしています。1992年から1998年の間、世界の主要援助国・機関は、カンボジアに総額27億5,400万ドルの援助を実施しました。その中でNGOは1億8,721万ドルもの支援を行いました。

カンボジアの学校に通う子ども
カンボジアの学校に通う子ども

NGOは、日本をはじめとする西側諸国がカンボジアと国交を断っていた1980年代もずっと援助活動を行ってきました。カンボジアの開発協議会はこうしたNGOの活動を称賛しています。NGOが草の根レベルでの活動に特別の経験・ノウハウを持っていること、弱者のエンパワーメントなど重要な活動を実施していることなどが高く評価されているのです。そして、機動力と柔軟性を活かして、政府や国際機関等の大規模ドナーがアクセス不可能な場所でも活動していくことが期待されています(注16)。

国際NGOであるワールド・ビジョンがカンボジアで活動を始めたのは1972年のことです。行き場のない人のための家建設・食料や衣料の緊急支援・子ども2000人の支援・国立小児科病院建設などの支援を実施しましたが、ポルポト政権となってからは一旦カンボジアを離れることを余儀なくされました。そして1980年代にいち早くカンボジアへ再入国。270人いたワールド・ビジョンのスタッフは、たった5人しか生き残っていませんでした。以来、ワールド・ビジョンのカンボジアでの活動は継続されており、現在では、プノンペンを中心に9つの州で800人以上のスタッフとともに、毎年270万人の子どもを対象に活動しているのです。

カンボジアの貧困に対して私たちにできること

カンボジアで貧困に苦しんでいる人々のために、日本に住む私たちに何ができるでしょうか。今すぐ参加できる方法を解説します。

イベントに参加しよう

カンボジアの貧困問題に対して実際に行われている支援は何なのか、それを知るために、支援団体が開催するイベントに参加してみましょう。

ワールド・ビジョンでは、カンボジアのイベントも実施しています。 カンボジアの支援地訪問ツアーの報告会では、実際に参加されたチャイルド・スポンサーのお話を聞き、チャイルドと会った時の感動や、チャイルド・スポンサーの皆さまのご支援が実際に役に立っている様子を知ることができます。

カンボジアから現地スタッフが来日した際には、活動に携わる熱い想いを直接お伝えするイベントを企画します。2017年には、カンボジアのボレイ・チュルサール地域開発プログラムのマネージャー、レイ・シネットスタッフが来日し、イベントを開催しました。シネット自身が貧しい子ども時代を過ごし、ワールド・ビジョンの支援で大学に行くことができたこと、ワールド・ビジョンのスタッフになって、今度は支援する側に回ることができた体験をお伝えしました。

カンボジアに関するイベントの様子
カンボジアに関するイベントの様子

ワールド・ビジョンでは、1年を通して様々なイベントを開催しています。全国で開催する活動報告会「ワールド・ビジョン・カフェ(WVカフェ)」では、寄付が適切に使われていること、子どもたちの状況が改善されている様子を知ることができます。また、チャイルド・スポンサーが交流できる場にもなっています。サマースクールユースプログラムは、日本に住む子どもたちに世界の現状を知ってほしいと願い開催している子ども向けイベントです。

イベントに参加する時間がない場合は、動画などで支援の様子を知ることができます。 ワールド・ビジョンでは外務省と連携し、カンボジアで「日本NGO連携無償資金協力」事業を実施していますが、その様子を動画で観ることができます。

また、カンボジアの支援地域に暮らす子どもたちの様子を動画で見ることもできます。

スタディーツアーで支援の現場に行こう

支援現場の状況を肌で感じるために、カンボジアへのスタディーツアーに参加しましょう。

支援者がカンボジアの子ども達と交流しているところ
支援者がカンボジアの子ども達と交流しているところ

開発途上国を支援している多くの団体がスタディーツアーを企画しています。限られた時間内で効率よく活動現場を視察できるよう工夫してあるので、個人で見学するよりもずっと多くの情報を得る事ができます。開発途上国に一人で旅行するには様々な注意が必要になりますが、スタディーツアーでしたらスタッフが同行し、安全確保に努めるので安心です。

ワールド・ビジョンでは、チャイルド・スポンサーの方を対象に支援地訪問ツアーを実施しています。カンボジアの支援地を訪問し、ご自身の「チャイルド」に会うことが可能です。ツアーとは別に、個人的に「チャイルド」を訪問することができる個人訪問も可能です。

支援地訪問ツアーは日本からスタッフが同行、個人訪問は現地スタッフが同行いたします。お気軽にお問い合わせください。

カンボジアの地域開発プログラムに寄付しよう

カンボジアで支援活動をしている団体に寄付や募金をすることは、カンボジアの貧困問題解決に向けた大きなアクションとなります。

カンボジアの開発プログラムの様子
カンボジアの開発プログラムの様子

ワールド・ビジョンはカンボジアでポニャー・ルウ地域開発プログラム、トモ・プオ地域開発プログラム、ボレイ・チュルサール地域開発プログラムなどを実施しています。皆さまからのご支援で、子どもの健康状態が改善され、教育を受けることができるようになりました。子どもたちが地域で守られて安全に過ごせるようになり、価値ある存在として尊重され、愛情を受けることができるようになりました。

これは、カンボジアのより良い未来に向けた、とても大きな前進です。農村地域では特に、子どもは労働の担い手として考えられることが多く、教育を受けたり、子どもらしく遊んだり愛情を受けたりする機会が奪われているケースが多いのです。皆さまのご支援により、カンボジアの子どもたちの過酷な環境が整備され、周りの大人に対しても子どもを慈しみ育てることの重要性を啓発することができました。

これからも、カンボジアの子どもたちのために地域開発プログラム、チャイルド・スポンサーシップによる活動を推進してまいります。皆さまからのご支援・ご協力をお待ちしております。

チャイルド・スポンサーシップについて、詳細はぜひ下記リンクよりご覧になってください。

そんな私たちの活動を支えるのは、
「チャイルド・スポンサーシップ」というプログラムです。
チャイルド・スポンサーシップは、
月々4,500円、1日あたり150円の皆さまからの継続支援です。

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参考資料

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