【南スーダン】アッパーナイル州の小学校2校で、緊急期の教育支援事業を実施

(2021.03.26)

教員による家庭訪問で、自己学習を行う様子
教員による家庭訪問で、自己学習を行う様子

ワールド・ビジョン・ジャパンは、皆さまからの募金と、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成金で、南スーダン共和国アッパーナイル州バリエ郡で紛争の影響を受けた子どもたちを対象にした、教育支援事業を2020年3月31日より1年間実施しました。

平和への道のり ~再発する紛争、破綻する和平協定、そしてコロナ禍の今~

スーダン共和国は、1955年から半世紀に渡り、紛争を繰り返してきました。2011年7月9日、スーダン南部の10州が分離・独立、アフリカ大陸54番目、世界で最も新しい国、南スーダン共和国(通称 南スーダン)となりました。

しかし、2013年12月にキール大統領(現政府)とマシャール前副大統領(反政府勢力)の間で武力衝突が起き、国内の紛争が再発。以降、何度も和平協定が試みられましたが、2016年7月に再び政府軍と反政府勢力の間で対立が激化し、紛争は南スーダン全土へと広がりました。2021年2月末時点で、避難を強いられた南スーダン人は約382万人、うち国内に逃れた避難民(IDP)は162万人、周辺国のウガンダやスーダンなど国外へ逃れた難民は220万人となっています 。紛争の影響によって、人々の生活は深刻かつ危機的で、支援を必要としている人は年々増加傾向にあります。

2018年9月に締結された和平合意を受け、度重なる交渉の末、2020年2月22日に暫定政府が発足されました。国民が待ち望んでいる本当の平和の実現のため、紛争から復興へ、少しずつ前進を始めようとしていた矢先、南スーダンにも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の脅威が襲いました。紛争によって脆弱化した医療設備を圧迫しないように、政府による厳格な感染予防策(移動制限、外出禁止令)、さらには小学校を含める全教育施設の休校措置などの措置が講じられ、人々は紛争からの生活を立て直すことすら出来ない日々が続いています。

教育支援を行う意義 ~教育の場を失った最も脆弱な子どもたち~

新たな国家としての道を歩み始めたばかりの南スーダンですが、長引く紛争による教育現場への影響は今なお続いています。南スーダンの未就学児童は紛争下にある22カ国中、世界最悪の72%と言われています。

南スーダンの北東部にあるアッパーナイル州における紛争の影響は甚大で、約30%の学校が一回以上の武力攻撃を受けている、教員資格を持つ先生が授業を行っていない、約20%の学校が機能していない など、教育を続けることがより困難な状況にあります。教育を支えるための資金源が圧倒的に不足しているため、子どもたちが教育を受ける環境を立て直すことができず、教室が破壊され、子どもたちの学習机や椅子が失われたままの状態が続いています。

南スーダンでは、紛争が再発した2013年12月から続く混乱の中、学校に通えず教育へのアクセスを失った子どもたちは約240万人以上と言われていますが、COVID-19の影響による休校措置により、学校へ通えなくなってしまった子どもたちは約440万人まで増加したという報告もあります 。小学校を卒業するための試験と中等学校を卒業するための試験を受ける一部の学年(小学校7年生、中学校4年生 )以外は、2020年からのCOVID-19の感染拡大の影響により、昨年3月から南スーダンの学校は休校を余儀なくされています。

教育、とりわけ初等教育は子どもの人格育成だけでなく、生きる上での基礎力を身に着ける重要な場です。18歳以下のすべて子どもたちには、教育を受ける権利があり、教育は平和構築において重要な役割を担い、国づくりでは重要な役割を果たしています。緊急下における教育支援は、食料、水、シェルターなど他の支援分野に比べると最近まで注目されにくい分野でしたが、ワールド・ビジョン・ジャパンでは、紛争や自然災害など困難な状況におかれている子どもへの支援の一つとして、緊急期における教育支援を様々な国で行ってきました。

コロナ禍の影響を受け続ける南スーダンの厳しい環境下においても、ワールド・ビジョン・ジャパンは子どもたちへの教育が途切れないよう、バリエ郡の小学校2校にて以下の活動に取り組んできました。

学習環境の整備

修繕中の小学校
修繕中の小学校

戦闘による損傷や、老朽化によって、安全な教育環境を提供できていなかった2校において、校舎の修復と、学校施設の建設を行うとともに、学校家具・備品、教科書などの教材を提供しました。また、COVID-19対策として、石鹸・バケツ・体温計を対象校へ配布しました。

教育の質の改善

教員研修を受ける教員の姿
教員研修を受ける教員の姿

教員資格がない、もしくは研修を受けたことのない教員を対象とした基礎研修を全対象校で行いました。また長年の紛争の影響により、心に傷を負った児童への適切な心理的・社会的サポートが行えるよう心理社会的サポート研修も実施しました。さらに、学校再開に備え、対象校の教員を対象としたCOVID-19感染予防研修と周辺コミュニティへの予防啓発研修も行いました。

南スーダンアッパーナイル州ではインターネット環境が整っておらず、オンラインやラジオを通しての授業の提供ができない環境下のため、研修を受けた教員は、休校期間中も在籍児童へ教育を提供するために、教員が家庭訪問し、指導を継続して行ってきました。

学校運営へのコミュニティの参画と協力体制の強化

学校施設の維持管理は、地域のサポートなしには行えません。コミュニティや児童の保護者が学校運営や管理に積極的に携わってもらえるよう、学校周辺のコミュニティを巻き込み、定期的に学校施設の維持・管理が行えるよう、コミュニティへ向けた啓発活動や研修を行いました。

関連記事

ページトップアイコン【南スーダン】アッパーナイル州の小学校2校で、緊急期の教育支援事業を実施 トップへ戻る