【南スーダン】人道危機の背景

2014.02.01


1月23日に締結された南スーダンの停戦合意により、これまで治安上の理由からアクセスが困難だった地域でも支援を実施することが可能になり、ワールド・ビジョンは早速、1月31日までにアッパーナイル州、マラカルにいる国内避難民17,000人に対して食糧支援を行いました。一方で、すぐには南スーダンへ戻れない、ケニアウガンダに逃れている難民への支援も継続しています。なぜ、南スーダンで困難な状況が続くのか、その背景を説明します。


内戦から独立まで

2011年7月、独立を祝う南スーダンの人々
2011年7月、独立を祝う南スーダンの人々

南スーダン共和国は、2011年7月9日に誕生した、世界一新しい国です。
それ以前は、スーダン共和国として、アフリカ一大きな国でしたが、北部スーダン側と南部スーダン側として、国内で長年にわたり紛争が起こっていました。1955年から20年以上にわたる内戦の結果、200万人以上が死亡、400万人以上が自分たちの住む家を追われ国内外に避難しました 。2005年に包括的和平合意(CPA)が結ばれてからは、南部スーダンとして自治権を6年与えられ、2011年1月9日に行われた住民投票では、約97%が独立賛成として成立、2011年7月9日に独立を果たしました。



新生国家が直面してきた問題


【急激な人口増加】
多くの南部スーダン国民の悲願の元、新たな歩みを始めた南スーダンですが、その道のりは決して平坦なものではありません。
独立を問う住民投票前後から、国外やスーダン側へ逃れていた多くの人々が、南(南部)スーダンへ戻ってくるようになりました。住民投票前後では、30万人、独立前後に200万人以上の人々が、「祖国」となる土地へ戻ってきました 。急激な人口の増加は、もともと豊かではない南スーダンで、さらに人々の生活を圧迫、また戻ってきた人々の生活も非常に苦しく、国民の半分以上がその日食べるものに困り、さらに100万人以上が、深刻な栄養不良状態にあるとされています。

独立後、故郷へ戻り、支援により生まれて初めて学校へ行くことになった子どもたち(2012年9月)
独立後、故郷へ戻り、支援により生まれて初めて学校へ行くことになった子どもたち(2012年9月)

【国境、石油の利権問題】
独立すると決定してから大きな議論となったのが、国境問題です。1970年代に油田が発見されてから、主にそれらが存在するとされる領域が、南北間での国境問題の焦点となっており、独立から2年がたった現在も、問題は解決されていません。さらに、国境問題の影響により2011年以降国境付近での争いが激化、2011年から現在までに21万人以上の人々が、スーダン南のコルドファン州、青ナイル州から避難してきています 。

国境問題は直接的に石油の利権問題にも大きな影響を与えています。油田は南部に多く存在していますが、精製施設や技術は北部に位置しています。独立後、2011年にはスーダンが南スーダンへ石油の輸出を制限、2012年には南スーダンがスーダンへの原油供給を停止するなどの措置を行い、石油の利権の分配に関する協議は2013年9月まで続きました。

この利権争いの影響を受け、2012年1月には、南スーダン政府は政府資金の30%をカットするなど、緊急措置をとるほどに政府資金は枯渇し、新しい国に希望を持つ人々の日々の生活が脅かされることになりました。

【長年の紛争による疲弊、貧困】
これらすべての課題に加えて、長年の紛争により疲弊したインフラ、27%と低い識字率、国民の半数が貧困に陥っている現実 、さらには民族間の対立、国境付近での治安の急激な悪化など、様々な課題が、人々の生活を圧迫し続けています。

武力衝突から、国民約77万人が避難する危機へ

ケニアのカクマ難民キャンプで朝食のおかゆを受け取るために並んでいる、南スーダンから逃れてきた子どもたち(2014年1月)
ケニアのカクマ難民キャンプで朝食のおかゆを受け取るために並んでいる、南スーダンから逃れてきた子どもたち(2014年1月)

長く続いた内戦の傷が癒されることのないまま独立を迎え、さらに南北関係の悪化に伴う様々な課題が重くのしかかった南スーダンは、脆弱性が非常に高い国です。それが形となって表れたのが、2013年12月15日に起こった、首都であるジュバでの武力衝突でしょう。衝突は首都だけでなく、主要な州や都市へ広がり、現在までに646,400人以上が国内避難民となり、123,400人が国外へ避難しています 。

着の身着のままで逃げた人々は、安全な場所を求めて国連の基地や、地方の森の中などに逃げ込み、基本的な衣食住すら整わない、最低限の生活を強いられています。ワールド・ビジョンの地域事務所があるアッパーナイル州マラカルでも、非常に激しい戦闘が続き、市場は強奪、破壊され、連絡網は遮断、現地のスタッフも避難するなど、非常に深刻な状況です。

2014年1月23日には政府と反政府勢力との間で停戦合意が結ばれたものの、現在も散発的な戦闘が国内では確認されており 、今後も治安の不安定な状況が継続するとみられています。

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