ESDとは?教育の取り組みを知ろう

「ESD」という単語を耳にしたことはあるでしょうか。 現在、世界ではさまざまな問題が存在しています。最近では、環境問題などが話題になっています。このまま2050年になると私たちは、地球3個分の扶養力が必要になるという研究結果もあります(注1)。これらの将来起こりうる問題を防ぐには、今から行動する必要があります。

そして、その鍵として、注目されているのが「教育」です。

教育は持続可能な社会の実現のために必要不可欠なものです。 この記事では世界で取り組まれている「持続可能な開発のための教育(ESD)」について紹介します。

ESDとは

ESDとは「Education for Sustainable Development」の頭文字を取った単語です。
日本語では「持続可能な開発のための教育」と訳されます(注2)。(この記事では、「持続可能な開発のための教育」を略してESDと表記します。)

まずはESDとはどういったものなのか、ESDの歴史やESDを通して目指すものについて紹介していきます。
ESDには、以下の3つの意味があります。

1.人類が将来の世代にわたり、恵み豊かな生活を確保できるよう
2.現代社会における様々な問題を各人が自らの問題として主体的に捉え、身近なところから取り組むことで
3.問題の解決につながる新たな価値観や行動などの変容をもたらす。
(注3)
ESDとは、持続可能な社会を実現していくことを目指して行う学習や教育活動のことを指します。持続可能な社会の実現のためには、全ての人が「暮らし方」や「社会の仕組み」を持続可能なものに換えていく必要があります(注4)。
簡単に表すと、ESDは持続可能な社会づくりの担い手をはぐくむ教育のことを言います(注2)。

ESDの変遷

ではESDとは、どのような経緯で作られたのでしょう。
持続可能な開発(SD)の概念が生まれた時代から現在に至るまでの流れを説明していきます。

1987 「持続可能な開発(SD)」の概念が提唱
1992 「アジェンダ21」→持続可能な開発のための行動計画
2002 「ESDの10年」→教育と国際協力の取り組みを推進するためのキャンペーン
2013 「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するグローバル・アクション・プログラム」が採択
2015~現在 「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するグローバル・アクション・プログラム」を実施

「環境と開発に関する世界委員会」が1987年に公表した報告書で「持続可能な開発(SD)」の概念が提唱されました。「持続可能な開発(SD)」とは、「将来の世代の欲求を満たしつつ,現在の世代の欲求も満足させるような開発」という意味です(注5)。

その後、オゾン層の破壊や、地球温暖化などの環境問題が深刻化しました。1992年に世界全体でそれらの問題を解決するための会議が開かれました。 そこで「アジェンダ21」が制定されました。「アジェンダ21」には、持続可能な開発を行うための行動計画が示されています。その中の第36章「教育、人々の認識、訓練の推進」で持続可能な開発のための教育の重要性が示されています(注6)。

その後、ユネスコが中心となり、持続可能な開発のための教育について検討が進められました。

このような世界の流れから、2002年のヨハネスブルグサミットで日本のNGOと政府が共同提案をし、国連で決議されたのが「ESDの10年」です。(「持続可能な開発のための教育の10年」推進会議)

2013年の第37回ユネスコ総会においては,2015年以降のESDの枠組みである「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するグローバル・アクション・プログラム」が採択され、現在に至ります。

ESDの目標

持続可能な社会を実現するためESDは重要なものです。 次にESDは、どのような教育を目指しているのかを紹介していきます。

問題に向きあうために重要な6つの価値観を養うことが目標とされています。

・ESDで培いたい6つの価値観

多様性 さまざまな視点をもって考える
公平性 国や年齢に関わらず、誰もが平等に幸せになる権利がある
相互性 人同士はもちろん、生き物や自然から私たちの生活は成り立っている
連携性 皆で協力すれば、大きなことを成し遂げられる
有限性 食べ物や電気などは無限ではないことを理解し、将来のためを考える
責任性 責任をもって、自分にできることは自分から進んで行動する
(注7)

また、ESDは単に知識を学ぶだけではなく、実践を通して学ぶ点が特徴です。まずは、問題を知り、自ら原因を考えて向き合うことがESDの一歩になります。

ESDとSDGs

アフリカの子どもたち
アフリカの子どもたち

世界では、環境・貧困・人権・平和・開発といった地球規模の問題が存在します。

それらの問題を17の目標に分けたものがSDGsです。そんなSDGsは、ESDと関係があります。どのような影響があるのかを説明します。

SDGsとは

SDGsとは、2016年から2030年までの持続可能な開発目標のことを指します。持続可能な世界を実現するための17のゴールと169のターゲットから構成されています。 開発途上国だけでなく、先進国自身が取り組む普遍的なもので、国内でも積極的に取り組まれています。(注8)

ESDとSDGsの違い

SDGsの17の目標のうち、目標4「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する(注9)」という教育に関するゴールが設定されています。

さらに、目標4の中には、ESDの重要性が以下のように言及されています。

4.7「2030年までに持続可能な開発と持続可能なライフスタイル、人権、ジェンダー平等、平和と非暴力の文化、グローバル市民、および文化的多様性と文化が持続可能な開発にもたらす貢献の理解などの教育を通じて、すべての学習者が持続可能な開発を推進するための知識とスキルを獲得するようにする(注9)」

17の目標は、環境や人権、文化などのカテゴリーに分けられますが、「教育」はそのすべてに影響があります。そのため、「教育」は持続可能な開発を実現するための重要な鍵です。

ESDで世界を変えるための17の具体的目標
ESDで世界を変えるための17の具体的目標

(注10)

ESDの取り組み

ESDの取り組みは、世界中で行われています。
どのような活動が行われているか日本と世界の活動に分けて紹介します。

日本の取り組み

まずは、日本国内でのESDの活動例を紹介します。 日本では、ESD活動支援センターが全国に配置されています。ESD活動支援センターは、ESD活動の支援を行うため文部科学省と環境省によって開設されました。地域でESD推進に関心のある団体などと協同・連携して支援を行っています。(注11)

具体的にESD活動を行う団体を紹介します。愛媛県にあるNPO団体「えひめグローバルネットワーク」では、地元の放置自転車をアフリカモザンビークへ送る活動を続けています。この活動は、地域の交通状況や大量消費・廃棄を見つめなおし、世界の問題にも関心を持つきっかけになっています(注4)。

ESD教育は、身近な問題を知り、行動することで培われます。加えて、世界の問題を知るきっかけにもなります。

世界の取り組み

次に、海外での活動例を挙げていきます。
オーストラリアのメルボルンの非営利組織Lentil as Anything(LaA)(注12)を紹介します。

LaAでは「食品のロスをなくして、お金の流れと人との関係のあり方を変えていく」をスローガンに掲げて、レストランやスーパーを運営しています。メニューや商品に値段がついていないのが、LaAの特徴です。なぜなら、経済的余裕のある人は自分が妥当だと思う金額を寄付する形で商品を購入する仕組みになっているからです。逆に経済的余裕のない人はボランティアスタッフとして活動に関わることになっています。

ボランティアの多くは移民・難民でメルボルンに移り住み、言葉の壁などの様々な問題を抱えています。ボランティア活動により、英語でのコミュニケーションが困難な移民や難民の就職するためのトレーニングになります。取り扱う食材は、賞味期限間近・変形・傷があるもののため、食品ロスを防ぐこともできています。(注13)

ESDを実現していくには、まずは身近な問題に目を向けて、小さなことから始めることが大切ですね。また、それらを持続可能な形で続けていくためには、様々な視点から考えること、周りと協力することで工夫することが必要なことが分かります。

ESDに関するワールド・ビジョンの活動

ワールド・ビジョンでは世界の問題を解決するために、日々活動を行っています。
ワールド・ビジョンのESDに関する活動とあなたが取り組むことができることを紹介します。

ワールド・ビジョンの取り組み

ワールド・ビジョンではSDGs17の目標のうち、9つの分野の問題を解決するため、さまざまなプロジェクトや活動を行ってきました。

ワールド・ビジョン・ジャパンは、チャイルド・スポンサーシップや緊急人道支援の実施による、健やかな子どもたちの成長を支援する活動を通してSDGs達成への貢献を目指すとともに、日本の市民社会組織として、日本政府に声を届けるアドボカシーにも積極的に取り組んでいます。日本に住む子どもたちに世界の現状を知ってほしいと願い開催している子ども向けイベント「サマースクール」も実施しています。

世界の問題を知ろう

世界の問題は他人事ではありません。将来の世代が、地球で豊かな生活を続けるためには、一人ひとりが問題を認識し、身近なところから持続可能な暮らしを意識することが重要です。

「持続可能な開発のための教育(ESD)」には、年齢は関係ありません。まずは、あなたの身近なところから持続可能な暮らしを意識してみてください。しかし「自分にできることが分からない」「どんな問題があるのか分からない」と思うかもしれません。
そんな方は、まずは世界にはどのような問題があるのかを知ることから始めましょう。

ワールド・ビジョンは、世界の様々な問題や取り組みをまとめています。持続可能な社会のためにあなたができることを考える第一歩目のヒントになるように、私たちの資料を活用していただけます。詳しくは、「伝える・広める」をご覧ください。

またワールド・ビジョンではご支援・ご協力もお待ちしています。

参考資料

※1 TOYOINK:持続可能な社会とは外部リンク

※2 文部科学省:持続可能な開発のための教育外部リンク

※3 文部科学省:持続可能な開発のための教育(ESD)に関するグローバル・アクション・プログラム外部リンク

※4 ESD 持続可能な開発のための推進会議:ESD-J外部リンク

※5 外務省:持続可能な開発外部リンク

※6 内閣官房:ESDに関わる主要な動き外部リンク

※7 環境省:ESDで問題に向き合うための考え方外部リンク

※8 外務省:SDGsとは外部リンク

※9 Global Compact:SDGs 目標4外部リンク

※10 教育出版:ESDで世界を変えるための17の具体的目標外部リンク

※11 ESD活動支援センター:ESD活動支援センターとは外部リンク

※12 Lentil As Anything:Lentil As Anything外部リンク

※13 ESD活動支援センター:Lentil As Anything外部リンク

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