カンボジアの教育問題と現状を知ろう

「カンボジア」と聞くと、何を思い浮かべるでしょうか。
アンコールワットなどの世界遺産を思い浮かべる方も多いかもしれません。今では観光地のイメージのあるカンボジアですが、1990年代まで20年以上に及ぶ内戦が続いていた地でもあります。
この内戦で、教師・医師・学生など知識人と呼ばれるカンボジア人の多くが亡くなりました。これらは今のカンボジアにおける教育の問題に大きく影響しています。
今回はそんなカンボジアの教育に関する課題と私たちにできることを紹介したいと思います。

カンボジアの教育について

まずは内戦を含めたカンボジアの歴史から現在の教育における現状や制度について紹介します。


カンボジアにおける教育の歴史

9~13世紀の間、今のカンボジアがある地域では「アンコール帝国」が黄金期を築いていました。この時代に世界遺産であるアンコールワットが建設されました。19世紀後半にフランスの保護国となり、その後隣国のベトナムとラオスとともに「仏領インドシナ」として統合されました。

第二次世界大後の1953年には「カンボジア王国」としてフランスから独立し、シハヌーク国王によって統治されました。その後、1970年にロン・ノル将軍によるクーデターをきっかけに「クメール共和国」が樹立されます(注2)。

1975年から1979年までの約4年間、ポル・ポト率いる「クメール・ルージュ」の過激な共産化によって大量虐殺が行われた悲しい歴史があります。多くの教員や医師・学生など知識人の命が奪われました。カンボジア政府の調査では4年間の間に約180万人ものカンボジア人が亡くなったとされていますが、正確な数字は分かっていないようです(注3)。

この4年間は、伝統的な社会的組織や制度などが廃止され、学校教育も行われませんでした(注3)。そのためポル・ポト政権崩壊後、教員や教科書、学校が極端に不足しました。1980年以降、教員養成機関が各地に設置されるなど、各国からの援助により新たな教育制度が生まれ、現在のカンボジアに至ります(注5)。



カンボジアの教育の現状

内戦直後に比べて現在では、教師や学校の数は増えてはいますが、教師の質が低いことや学校の設備が整っていないことが課題となっています。そのため今でもカンボジアでは授業が午前と午後に分かれており、二部制となっています。

また、都市部と農村部の貧富の差が広がっているのも現状です。カンボジアで「最も所得の低い」と言われる層は全体の3割ほどですが、その層に国内の過半数の子どもたちが属しているという報告もあります。これらの困窮した家庭の子どもが家事や労働の手伝いをするため、学校に通っていなかったり中退していることが多いです。

また、こうした子どもたちは社会的に弱い立場のため、搾取や暴力の対象になりやすいという問題もあります(注6)。ユニセフの2017年の「世界子ども白書」のデータによると、初等教育の就学率は男女ともに90%以上という結果でした。しかし、入学した子どもが最終学年まで残る割合は半数にも満たないこと、中等教育への就学率も男女ともに5割未満ということからカンボジアでは途中で学校に通うことができなくなる子どもが多いことが分かります(注7)。

カンボジアの教育制度

ここで、現在のカンボジアの教育制度を見てみましょう。カンボジアの教育制度は6・3・3制で、カンボジアの憲法上で義務教育は「最初の9年」と定めらています(注8)。小学・中学までは義務教育のため授業料は無償ですが、制服や学用品などの必要なものは保護者が負担しなければいけません。

小・中・高の授業は月曜から土曜が基本で、午前(7時~11時)と午後(13時~17時)の二部制に分かれています。学校は10月から4月上旬、4月下旬から7月の2学期制です(注8)。授業内容は国語(クメール語)、算数、歴史、理科が中心となっており、音楽や美術、体育などの科目はほとんど行われていないのが現状です。

またカンボジアでは、中学・高校3年生の時期には卒業試験があるのが特徴です。中学校卒業後の進路は大きく就職と一般教育、職業教育の3つに分かれ、高校の卒業試験に合格すると、一般教育の大学や4年制の職業訓練校などへの入学資格が与えられます(注9)。

カンボジアでの教育問題

カンボジアの教育の現状から、カンボジアでは就学率は上がってきているものの、中退率が高いことが分かりました。
なぜカンボジアでは途中で学校をやめてしまったり、通うことができなくなったりする子どもが多いのでしょうか。ここではカンボジアでの教育問題やその原因について考えていきます。



教員の不足・教員の質

Ministry of Education Youth and Sport(カンボジアの教育・青少年・スポーツ省)の2016・2017年度の調査によると、初等教育における1教員あたりの生徒数は約44人となっています。国の規定では初等教育4年生以降は40人以下が適正とされていることから、教員不足が伺えます。

また中等教育では1教員あたりの生徒数が約21人と、一見十分な教員配置に思われますが、地方部では教員の足りない科目も多いと報告されています(注5)。こうした教員不足により、授業が二部制になっているため子ども一人当たりが授業を受ける時間は1日4時間ほどです。

また最近では、教員の質の低さも課題となっています。現在カンボジアで公立校の教員になるためには、教員養成校を卒業する必要があります。教員養成校に入るためには中等教育の卒業試験と養成校の入学試験の2つの試験に合格しなければいけません。世界銀行の調査によると、2つの教員養成校入学者の7、8割が前述した試験の「成績下位のグループ」であるとされています。

さらに養成校修了者のみが初等・中等教育教員に就けるという条件のため、せっかく大学に進学した優秀な学生が教員を目指すことが難しいということも、教育の質低下の原因の一つと考えられます(注5)。一般の大学生が教職に就くためには学士号が受験資格となっているカンボジア国立研究所(NIE)で研修を受ける必要があるうえ、資格は後期中等教育に限られるのです。

貧困による教育格差

カンボジアは2011年から5年連続でGDP成長率が7%を超えるなど、順調な経済成長を遂げていますが、その一方で都市部と農村部での貧困格差が広がっているのが現状です(注11,注12)。

貧困家庭では家事労働のため、子どもが勉強に費やす時間がなくなってしまったり、卒業する直前に中退して働いたりするケースがあります(注13)。また貧困家庭では親が出稼ぎや労働で忙しい場合は、子どもがきちんとケアしてもらえず、学業の遅れなども放置されてしまいがちです。

このようなことから親の教育の重要性の理解が乏しいことや、農村部での貧困による児童労働などが課題と推測できます。

カンボジアでの教育に関するワールド・ビジョンの活動

カンボジアでは家庭の経済的事情で学校に通うことができなかったり、中退してしまう子どもの割合が多いです。また、教師の指導方法に問題があることもあります。これらの課題を解決するためワールド・ビジョンでは支援を行っています。最後にカンボジアでの教育に関する私たちの活動について紹介します。



ワールド・ビジョンの取り組み

ワールド・ビジョンでは教育の質向上のためにカンボジア3カ所の地域で教育支援を行っています。

これらはチャイルド・スポンサーシップという支援プログラムで成り立っています。
ワールド・ビジョンでは、開発途上国の課題解決のための支援の一つとして、チャイルド・スポンサーシップというプログラムをご用意しています。
チャイルド・スポンサーシップとは、支援地域の人々が、子どもの健やかな成長のために必要な環境を整えていくことを支援するプログラムです。

カンボジアにおける教育向上のための支援

まずはボレイ・チュルサール地域pdfアイコンでの活動です。
この地域では2019年に15カ所の読書キャンプを設置しました。この読書キャンプは子どもたちの読む能力を向上させることが目的として作られています。設置後、428人の子どもたちが定期的にこのキャンプに参加しています。中には本を読むことで学校の成績が上がった子どももいます。またそれぞれの地域の学校長・教師・図書館員が学校の図書館の改善計画を策定する会議に参加するなどして多くの子どもたちが恩恵を受けられるようになりました。読み書き・計算能力向上のための課外授業では、中退した子どもも対象に行っています。

次に紹介するのはポニャー・ルウ地域pdfアイコンでの活動です。
この地域では、労働や家事の手伝いのために学校を中退する子どもが多いことが課題でした。
そのため私たちは、10代の若者向けに技能を身に付けるための学習支援を行っています。
コンピュータや言語の研修を受けることで将来必要なスキルを身に付けています。
教室には4台のコンピュータが設置されており、子どもたちはコンピュータの使い方などを学んでいます。

経済的に発展を遂げるカンボジアですが、その背景には教育を受けることができない子どもがいます。将来、子どもたちがカンボジアを支えるためにも質のいい教育を受けることが大切です。
これからもワールド・ビジョンでは、カンボジアのすべての子どもたちが教育を受けられるよう教育の質向上のために支援活動を行っていきます。

チャイルド・スポンサーシップについて、詳細はぜひ下記リンクよりご覧になってください。

※このコンテンツは、2020年3月の情報をもとに作成しています。

参考資料

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