子どもの権利条約《日本批准25周年》課題と私たちにできることとは?

2019年は「子どもの権利条約」が国連で採択されて30年、そして日本政府が批准*して25年という節目の年です。

すべての子どもたちは、大人と同じように権利を持っています。子どもの権利を守ることは大人の責任と義務でもあり、世界各国は、子どもの権利を守るため自らの行動について目標を掲げともに進んできました。

その一つが、「子どもの権利条約」です。

今回は「子どもの権利条約」の成り立ちや目的を、わかりやすく解説しながら、日本においての影響と課題をご紹介していきます。


*批准:条約をみとめて実行します、という国の最終の確認、同意の手続きのこと

子どもの権利条約とは?

子どもたちが笑顔の画像
笑顔いっぱいの子どもたち

「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」とは、すべての子どもが持っている権利を保障するためのものです。

1989年に国連総会で採択された国際条約(国と国のあいだの約束事)で、2019年現在で、196の国と地域が締約しています。国連が中心となって作成した人権関係の条約としては、歴史上もっとも多くの参加を得ています。
子どもの権利条約は全部で54条ありますが、大きく4つに分けることができます。

1. 生きる権利
2. 育つ権利
3. 守られる権利
4. 参加する権利

例えば、条約には以下のようなことが書かれています。 子どもの権利条約(ワールド・ビジョン・ジャパン訳)から抜粋してご紹介します。


第1条 子どもは18歳になっていない人のこと
子どもは18歳になっていないすべての人のことです。 でも、その人が住んでいる国の法律でそれよりも若い人を大人としているなら、その年齢までの人が子どもです。

第3条 子どもにとって、もっともよいことを考えよう
子どもに関係あることをするときは、子どもにとって一番いいようにと考えます。 また国は親やそれに代わる人が、子どもを守って育てるために一番いいようにと考えます。

第9条 親と引き離はなされたりしないんだ
親が望んでいないのに子どもが親から引き離されたりしません。 でも、離れて暮くらしたほうが子どもによいときは法律にしたがってそのようにします。

第24条 子どもはいつも健康でいられるように、病気やけがをしたときに治療を受けられるんだ
国は、子どもがいつも健康でいられるように保健サービスを受け、病気やけがをしたときは治療を受けられるようにします。

第28条 教育を受けることができるんだ
国は子どもが教育を受ける権利を認めて、すべての子どもがただで小学校へ行くことができるようにします。 それよりも上の学校へ行きたいときは、すべての人がその機会を与えられます。

第32条 むりやり働かされること、心やからだの成長によくない仕事からは守られるんだ
国は子どもがむりやり働かされたり、仕事のために教育を受けられなくなったりすること、心やからだの成長によくない仕事などから、子どもを守ります。

日本と「子どもの権利条約」

ワールド・ビジョンのサマースクールに参加する日本の子どもたち
ワールド・ビジョンのサマースクールに参加する日本の子どもたち

「子どもの権利条約」に批准したことで、日本にも、少しずつよい影響が生まれています。各自治体のレベルで、子どもの権利を尊重しようという意識が表れてきています。

日本での批准はいつから?

日本では、1994年に子どもの権利条約に批准しました。158番目の批准国です。

条約を批准した国は、批准してから定期的に(初回は2年以内、それ以降は5年ごとに)、それまでの取り組みについて、国連に報告をしなくてはなりません。

初めての報告では、国連側から、以下のような勧告が出されています。

  • 警察の構成員、治安部隊及びその他の法執行官、司法職員、弁護士、裁判官、全ての教育段階の教師及び学校管理者、ソーシャルワーカー、中央または地方の行政官、児童養護施設職員、心理学者を含む保健・医療職員を含め、全ての職業集団に対し、児童の権利に関する体系的な訓練及び再訓練のプログラムが組織されるべきである。権利の完全な主体としての児童の地位を強化するため、委員会は、条約が全ての教育機関のカリキュラムに取り入れられるよう勧告する。
  • 嫡出でない子に対して存在する差別を是正するために立法措置が導入されるべきである。委員会は、また、韓国・朝鮮及びアイヌの児童を含む少数者の児童の差別的取扱いが、何時、何処で起ころうと、十分に調査され排除されるように勧告する。更に、委員会は、男児及び女児の婚姻最低年齢を同一にするよう勧告する。
  • 障害児の施設への入所に代わる措置をとり、障害児に対する差別を減らすための啓発キャンペーンを考慮し、障害児の社会参加を奨励することを勧告する。



「日本弁護士連合会:子どもの権利条約 子どもの権利委員会の最終見解」からの引用・抜粋批准後の日本の取組は?

日本政府が「子どもの権利条約」に批准したあと、日本の各自治体で、「子どもの権利条約」の考え方を取り入れる動きが出始めています。

「子どもの権利条約」を参考にしながら、市は独自に「条例」をつくることで、それぞれの地域に合ったかたちで、浸透させようとしています。

事例を2つご紹介します。

川崎市では、「川崎市子どもの権利に関する条例」を2000年に可決、2001年に施行しました。独自の条例を制定した背景として、川崎市は次のように説明しています。


確かに、条約を結ぶのは国の役割ですが,子どもたちが実際に生活している場は地域社会であり、自治体は,現実に生活している子どもたちと毎日向き合っ て仕事をしています。
子どもの生活の場に即して、子どもの目線に立って、保障されるべき権利をかみくだきながら現実生活の中でいかし実現していく作業こそが自治体に求められており、しかも、自治体でしかできない役割ではないのか、そういう観点から,条例の内容はもとより、 条例づくりのプロセスを大事に考え、地域社会の主権者である市民・子どもたちとともに条例化の作業を進めていくことをめざしました。

引用:「川崎市子どもの権利に関する条例−各条文の理解のために- 」


また青森市では、市の総合計画の一部として、2012年に「青森市子どもの権利条例」を制定しています。


市では、子ども支援と子育て支援のための総合的な計画である「青森市子ども総合計画後期計画~子どもプラン~」を平成23年10月に策定しましたが、この計画の基本理念である「子どもの最善の利益」を保障するための具体的な施策の1つとして、「子どもが自ら成長、発達できる環境づくりを推進」するため、子ども自身の参加により「子どもの権利条例」を制定し、子どもの権利尊重についての明言化を図ることとしました。

引用:「青森市子どもの権利条例」制定までの取組/青森市

市が、地域の未来を見据えた長期的プランをつくるとき、「子どもの権利条約」の考え方が参考にされているという例です。子どもの権利を尊重する意識が、日本にも広がりつつあると言えるでしょう。

【日本批准25周年】現在の課題は?

子どもが勉強している画像

「子どもの権利条約」に批准して、2019年で25周年を迎える日本。

国連・子どもの権利委員会は、2019年2月、日本政府が2017年に提出した最新の報告書に対し、審査結果をまとめました。とくに以下の点については、緊急に対応すべき課題として指摘しました。

 1. 差別の禁止
 2. 児童の意見の尊重
 3. 体罰
 4. 家庭環境を奪われた児童
 5. 生殖に関する健康及び精神的健康
 6. 並びに少年司法

引用:国際連合 CRC/C/JPN/CO/4-5 (仮訳) 配布:一般 2019年3月5日 原文:英語 児童の権利委員会 日本の第4回・第5回政府報告に関する総括所見*

差別など一部の内容は、初回の勧告から引き続き指摘されていることであり、日本として改善がまだまだ進められていないことがわかります。また、全体としてSDGsに沿った取り組みを行うようにも要請がありました。

「子どもの権利条約」を守るためにワールド・ビジョンが取り組んでいること

ワールドビジョンと子どもの画像
ワールド・ビジョンのスタッフと子どもたち

ワールド・ビジョンでは、子どもの権利が守られる世界の実現を目指し、支援活動を実施しています。特に、当事者である子どもたち自身が、自ら問題解決のために声をあげることができるように、働きかけています。

エクアドルのリスベットちゃん(12歳)はワールド・ビジョンのチャイルド・スポンサーシップを通じて、子どもの権利を学び、自分の意見を言うことができるようになりました。

「以前は子どもたちが発言することは許されていませんでした。ほとんどの大人たちは、私たちに騒ぐなと言い、外に追い出していました。私はワールド・ビジョンが開催したいくつかの講習会に出席し、子どもたちにも話し合いに参加し、意見を言う権利があることを学びました。
(中略)
私は、もう昔のような恥ずかしがり屋の女の子ではありません。今は、地域の子ども代表として意見を言うことができるし、私たちの声は聞かれると確信しています」

ワールド・ビジョンは、もっとも弱い立場にある子どもたちの権利が守られるように、今後も多くの方々と協力しながら活動を続けていきます。

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