東日本大震災から13年。南三陸町でWVJの子ども支援を経験した小林さんにインタビュー

(2024.03.11)

小林汐樹さんの13年前といまのお写真
小林汐樹さんの13年前といまのお写真

2011年3月11日に発生した東日本大震災から13年が経ちました。
ワールド・ビジョンでは、震災発生2日後に被災地へスタッフを派遣して以来、子どもたちが将来への希望を抱いて成長できるように主に宮城県南三陸町、気仙沼市、岩手県宮古市で、297,222人を対象に緊急復興支援をお届けしました。

リンク東日本大震災緊急復興支援の詳しい活動を見る

2024年1月、宮城県南三陸町ご出身でいまはアフリカのマラウイで活躍している、小林汐樹(しおな)さんにワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)の公式インスタグラムでのライブ配信「インスタライブ」にゲスト出演いただきました。WVJでは様々なトピックでインスタライブを定期的に配信していますが、2024年1月25日に行ったライブ配信では、東日本大震災でWVJの子ども支援を体験した小林さんにインタビューをしました。

2011年
当時小学2年生だった小林さんとWVJが運営する「子どもの居場所」で遊んでいた松本謡子スタッフとの感動の再会、南三陸町時代からのお友達やそのお父さま、そして小林さんのお母さまもコメントで参加くださり、終始温かい時間となりました。以下、インタビューでうかがった内容を一部抜粋してご紹介します。(録画動画はこちら外部リンクからご視聴いただくことができます)

2022年12月:小林さんからメッセージが届きました

インスタライブの冒頭、WVJの事務局長 木内(きない)真理子から小林さんを紹介しました。今回のインタビューが実現したのは、2022年12月に小林さん(当時大学2年生)が木内あてに送ったメッセージが始まりだったからです。

インスタライブ_左からWVJ事務局長木内、松本スタッフ、小林さん
左からWVJ事務局長木内、松本スタッフ、小林さん

木内:「小林さんから届いたメッセージは、将来人道支援に携わりたいので、ワールド・ビジョンのアフリカ(ルワンダ)の活動地でボランティア活動をしたい」という内容でした。実は、そうしたお問い合わせは珍しくないんです。でも、続けて書かれていた一文を読んで、口から心臓が飛び出るほど驚きました。「私は南三陸町で東日本大震災を経験し、WVJが運営する子どもの居場所、チャイルド・フレンドリー・スペース(CFS)で遊んでもらいました。その恩返しとしてワールド・ビジョンでボランティア活動をしたい」と。

開発支援の業界で30数年仕事をしている中でミラクルのような奇跡が起こることがありますが、今回のメッセージは間違いなくそのベスト3にはいる嬉しい出来事でしたというのも、私(木内)は2011年5月より東日本緊急復興支援部長を担当し、南三陸町にも特別な思い入れを持っていたからです。

通常、ワールド・ビジョンの支援地域では大学生ボランティアの受け入れをしていませんが、WVルワンダの事務局長も小林さんのストーリーに感激。「そういうことなら、ポリシーを曲げてでも受け入れるよ!」と快諾を得られたのです。

*小林さんは文部科学省が展開する、日本の若者の海外留学への気運を醸成する官民協働の留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」に応募、選考を通過して2023年10月よりアフリカのマラウイへ渡航。2023年7月よりWVルワンダの活動地域でボランティアに参加予定。

「今アフリカにいるのは、ワールド・ビジョンとの出会いがきっかけです」

「青い服を着ているのが私です」と小林さん
「青い服を着ているのが私です」と小林さん

松本:改めて小林さんから自己紹介と、現在のアフリカでの活動をお話いただけますか?

小林さん:はい、私がワールド・ビジョンさんと出会ったのは、小学校2年生のときに東日本大震災を経験したことがきっかけでした。私の通っていた小学校が被災して津波で流されてしまったため、登米市にある旧善王寺小学校の校舎を借りて授業を再開し、そこに支援に来てくださったのがワールド・ビジョンさんでした。

今はアフリカでボランティアをしていますが、そのきっかけがまさにワールド・ビジョンさんとの出会いでした。人道支援というものがあることを知って、そこから人を助ける仕事を何かしたいなと思うようになりました。被災者支援として何度か海外に行かせていただく経験をして、特にアフリカで思うように勉強ができない子どもたちのためにボランティアをしたいと思うようになりました。

具体的には、アフリカの子どもたちが平等に学習できる環境をつくりたいとの思いから、今はマラウイという国の幼稚園や小学校に行って先生としてアルファベットの読み書きや算数を一緒に勉強しています。

「震災後、ワールド・ビジョンのスタッフにたくさん遊んでもらいました」

ブランコに乗る子どもたちの背中を押すWVJスタッフ
ブランコに乗る子どもたちの背中を押すWVJスタッフ

松本:東日本大震災のときのWVJの支援活動は、小学校2年生だった汐樹さん(小林さん)にはどのように見えていましたか?

小林さん:ワールド・ビジョンさんの活動は、子どもが子どもらしくいられる環境づくりをされているなと思っていました。どうしても震災時は今日・明日を生きていくために必要なことが優先されてしまい、子どもが楽しく遊べるにはどうしたらいいかというのは後回しになってしまうと思うんです。でも、そんな時に来てくださったのがワールド・ビジョンさんで、学校が終わるとブランコしたり、校庭で鬼ごっこをしたり、サッカーをしたり... 友達と楽しく笑える場所を作ってもらえたな、そこが魅力だなぁと思います

松本:ブランコに乗る汐樹さんの背中を押し続けていた日々、覚えています(笑)。

小林さん:ずっと押してもらっていましたよね! 私、ブランコが一番好きで。子どもって体力がありますよね。今、アフリカの幼稚園に行っていますが、子どもたちがずっと走り続けていられて驚きます。ワールド・ビジョンさん、よくあんなにずっと一緒に遊んでくれたなと、自分が子どもと遊ぶ側になって気づきました

マラウイの子どもたちと遊ぶ小林さん
マラウイの幼稚園で子どもたちと遊ぶ小林さん

視聴者の皆さまから寄せられたコメント

松本:インスタライブをご覧の皆さまからコメントをいただいています。
「みんなのために、頑張りぎず、頑張れ」

汐樹さんのお母さまからコメントの書きこみをいただきました。ご紹介させてください。

「当時とてもとてもお世話になりました。親として安心してお任せすることができました。中学生になったときお会いできる機会があった際も、大学生になった時も皆さんが汐樹を覚えていてくださったことがとてもとても嬉しかったです。無我夢中でお礼もさせてもらった覚えがありません今ここでお礼をさせてください。本当にお世話になりました。ありがとうございました。また娘にこのような機会を与えていただきありがとうございました」

小林さん:ありがとうございます。

松本:本当に胸がいっぱいになるコメントですね...。2011年当時、私はまだ子どもがいなかったのですが、今親という立場になってみて、子どもが安心して安全に過ごせる場所で元気にしている姿を見られるのは本当にほっとできることなのだと理解するようになりました。当時、保護者の皆さまからも「子どもの笑顔を見て元気になりました」とった声もいただいていました。

子どもの親御さんだけでなく、避難所にいらっしゃる方からも「子どもたちが元気でパワーをもらえます」とおっしゃる方もいました。子ども支援には、そのような効果もあるのではないかと思いました。

もう一つ、南三陸町にお住まいの方からメッセージが届いています!
「しおなさん気をつけて活動してください。ワービー(ワールド・ビジョン)の皆さま、2年生5年生の息子がお世話になりました。とーま&ちっくん父より」

小林さん:わぁ、見てくださっていたんですね! 嬉しい。ありがとうございます! がんばります。

能登半島地震の発生を知った時

松本:能登半島地震が起きた時マラウイにいらしたと思いますが、どのように地震のことを知りましたか?

小林さん:1月1日ということで、ちょうど日本にいる母と電話をしていました。日本と7時間の時差があるので、こちらは朝でした。地震が起きたとき、母のほうでテレビをつけていたら地震のニュースが流れてきて、同時に私の携帯にもネットニュースで速報が流れてきました。大きな地震で、津波警報が発令されたこともあり、そのあといつ解除されたのか、まだ発令中なのかも確認していました。マラウイ人の知り合いからも「日本で大きな地震が起きたみたいだけど、家族や友人は無事か?」と声をかけてもらいました。日本の友人とも、地震は大丈夫だったという連絡をとりあっていました。

松本:そのとき、どのようなこと感じましたか?

小林さん:他人事とは思えなかった。東日本大震災を自分が体験したこともあり、とにかく高いところに逃げて身の安全を確保してほしいなと思っていました。行方不明者や亡くなってしまった方のニュースを聞くと、心が締め付けられるような気持ちになりました。

小林さんの今後について

2012年当時と現在の小林さんの写真を紹介する松本スタッフ
2012年当時と現在の小林さんの写真を紹介する松本スタッフ

松本:汐樹さんは現在はアフリカにいらっしゃいますが、いつまで活動される予定ですか?

小林さん:マラウイでは4月まで、そのあとルワンダに移ってボランティアを続け、9月の後半に帰国予定です。

松本:実際にアフリカで活動してみて、新しい気づきや気持ちの変化はありましたか?

小林さん:事前にアフリカのことをたくさん調べたが、実際にアフリカに来て知らないこと、学ぶことがたくさんあると感じました。逆に、アフリカで日本のことも知られていないこともたくさんあるので、アフリカと日本をつなぐためにやること、伝えていきたいことがたくさんあると思いました。

松本:視聴者の方から、「将来どんなお仕事をしたいと考えていますか?」という質問をいただいています。

小林さん:まず大学卒業後は英語の先生になりたいと思っています。母が英語の先生だったこともありますし、英語と子どもが好きなことも理由ですが、加えて、先生の影響力は大きいと思うので、自分のアフリカでの経験を子どもたちに伝えられたらと思っています。

あと、もうひとつ新しく夢ができました。いま能登半島地震の被災地で子どもたちのためにワールド・ビジョンさんが子どもたちの居場所づくりの支援をしていると思うのですが、ぜひ、私もボランティアで参加したいです!

松本:わぁ、素敵ですね! ありがとうございます。ぜひご一緒できたら嬉しいです。汐樹さんのようなお姉さんが来てくれたら子どもたちも喜ぶと思います。

汐樹さん、今日はマラウイからありがとうございました! これからの活躍をお祈りしています。

能登半島地震で被災した子どもたちへ:「皆さんの素敵な笑顔が周りを元気にします」

この動画は、そのインスタライブの開催にあたり、小林さんが能登半島地震で被災された皆さま、子どもたちに向けたメッセージです。ご自身が被災をされたからこそ話せるその言葉はとても力強く、そして希望を感じる内容でした。以下、小林さんのメッセージをご紹介します。

「皆さんは今、心と先が見えなくて苦しいくらいなんて日々を送られていると思います。大丈夫だよって言葉をかけるつもりはまったくなくて、今抱えている苦しい気持ちを隠さなくていいなと思います。 ただ、その気持ちに飲まれないで欲しいと思っていて、その気持ちを抱えながら少しずつでもいいので毎日進んでほしいです。

そうして後で後ろ振り返ってみたら、皆さんは未来に進んでるなと思います。

そして、子どもたちへ。みんなは笑顔を見せて欲しいなと思います。 みんなの笑顔が周りの大人や親を笑顔にします。 被災者だからといってつらい顔をしていなきゃいけないわけでもないと思います。 被災した人も笑ってていいと思うし、そうすることで元気も出ると思います。 体を動かすと元気も出るし気分が明るくなるので、みんなにはいっぱい笑って友達と遊んで欲しいなと思います。

みんなの未来はとっても明るいです。心配せず、今まで通り元気に遊んでいてください」