なぜチャイルド・スポンサーシップ?

(2016.06.08)

成果が残る支援の仕組み

成果が残る支援の仕組み

見渡す限りの田んぼの真ん中で、笑顔いっぱいなのはラオスのロイちゃん(8 歳)。支援で受け取った米の種子が美しく育っています。チャイルド・スポンサーシップは、例えるなら、収穫された米を配るのではなく、米を育て、収穫できる力をつけるために支援するプログラム。支援終了後も、成果が残ることを目指し、地域の人々とともに、長い期間をかけて実施しています。

長い支援を支える計画

チャイルド・スポンサーシップの支援期間は、準備期とそれに続く3段階に分かれ、地域の必要と各段階の目的に応じた活動を行います。第1~3期それぞれ5年間を標準としてプロジェクトの実施、評価を行い、そこから得られた経験や知見を次の5年間の計画策定に活かしています。

・準備期:支援ニーズ調査、地域住民・行政関係者との対話
     事業計画策定

・第1期:チャイルドの登録・住民組織づくり
     施設建設・機材供与保健衛生・栄養・教育収入向上等の研修、啓発

・第2期:第1期の成果を受けて、活動の継続・新たな住民組織づくりや育成、
     主体性の醸成、地域レベルのアドボカシー(行政への働きかけ)

・第3期(移行期):持続的発展に向けた体制づくり
        住民組織の運営機能の強化
        地方行政や現地NGO との連携強化

・支援卒業:ワールド・ビジョンが撤退しても支援の成果が残る仕組みが整い、
     地域の人々へ必要な活動が引き継がれます



長い支援を支える計画

いろいろな分野の支援で相乗効果

チャイルド・スポンサーシップは、一つの支援地域で、保健、水衛生、栄養、教育、生計向上、という異なる分野の支援を同時に進めることで相乗効果をあげます。例えば、子どもが学校に行けない理由は、病気、水汲みに時間が割かれている、栄養状態が悪い、保護者の収入が低い等、様々な要因が絡み合っていることが多いため、学校建設のような教育支援だけを行えば問題が解決するとは限らないからです。

いろいろな分野の支援で相乗効果

長い支援から生まれる成果

ベトナム:子どもたちの栄養状態が改善されました!

2004年に支援が始まったベトナムのバンエン地域では、子どもたちの栄養状態に改善が見られます。5歳未満の低体重児の割合は、支援開始時の調査では42.6%でしたが、支援開始から約10年を経た2014年には12.8%まで改善しました。成功の鍵はどこにあるのでしょうか。

子どもたちの栄養状態が改善されました

母親たちが学び合う「栄養クラブ」

バンエン地域では妊産婦、5歳未満の子どもがいる母親と保護者を対象に栄養クラブを結成して活動しています。月1回のミーティングでは保健センターのスタッフによる指導で栄養価の高い食事の作り方を学びます。
調理のデモンストレーションでは、地域で手に入る食材を使い、日々の生活の中でちょっと工夫すれば改善することをお互いに確認し合い、学び合います。
なぜ、家族で栄養ある食事を準備できないかと批判するのではなく、同じ厳しい環境の中での上手な工夫の例、例えば、栄養ある野菜の皮や葉っぱを上手に使うことや、子どもたちにおやつを上手に与えること等を伝え合って、よい例の実践を増やしています。

母親たちが学び合う「栄養クラブ」研修で調理した食事を子どもに食べさせる栄養クラブのお母さんたち

教育 x 生計向上(農業)x 保健支援 = 相乗効果!

栄養クラブの活動が軌道に乗る間に、同時に進められていたのが、就学前教育での給食や身体測定の実施、改良農法の指導による生計向上支援と、保健衛生活動です。異なる分野の活動が互いに相乗効果を生んで、栄養改善につながりました。

教育 x 生計向上(農業)x 保健支援 = 相乗効果!

じっくり育てる住民主体の活動

活動開始から10年で、バンエン地域の栄養クラブの数は4倍以上になりました。
これまで、自分たちで組織を作ったり、運営したりしたことがない人々がその必要性を納得し、行動していくようになるには時間が必要です。
また、電話やメールも使えず、ミーティングの開催等も、直接メンバーの家に出向いて連絡することも珍しくありません。すべてのプロセスに、日本よりもはるかに時間がかかりますが、一歩ずつ進んできた成果が、今、実を結びつつあります。

じっくり育てる住民主体の活動収入向上のために始めた養鶏。現在120羽ほどを管理している

ルワンダ:東京大学と連携した調査が進行中!

ルワンダのグウィザ地域では東京大学大学院、松田浩敬特任准教授のチームにより、チャイルド・スポンサーシップによる栄養改善支援に関する調査が進んでいます。

専門家による知見を得て、より質の高い事業を実施できることを目指しています。

東京大学と連携した調査が進行中調査のために行った身体測定の様子

~本当の栄養改善とは~

東京大学大学院 新領域創成科学研究科 
サステイナビリティ学グローバルリーダー養成大学院プログラム 
松田 浩敬 特任准教授

「本当の栄養改善は、どのようなものを食べているのかはもちろん、なぜそれを食べるのか、気候・風土・歴史・文化的背景や農業生産等を理解しなければ達成できません。そのためには地域住民との協働が必須で、チャイルド・スポンサーシップによる支援は意義ある実践と受け止めています。地域住民の伝統的な知識に、我々、外部者の知識を組み合わせ、長期的に多様な分野の人間が関わることで栄養改善へと結びつけることができるのです。」

松田 浩敬 特任准教授ルワンダの支援地域にて

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