【緊急報告】今後3カ月で8,500万人の子どもたちが身体的・性的・精神的暴力に晒される恐れ ~新型コロナウイルス感染症の影響で~

(2020.05.15)

世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョンは、本日、緊急報告書『A Perfect Storm』を発表したことをお知らせします。本報告書は、本年4月8日に公開した緊急報告書『Aftershocks』の続編で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大や外出規制による子どもたちへの影響を、暴力という視点から分析したものです。ワールド・ビジョンが世界中で実施する支援プログラムからの情報や過去の支援経験、各国政府からの家庭内暴力に関するレポートや子ども電話相談件数等に基づき、今後の傾向を予測しています。

緊急報告書『A Perfect Storm』の主な内容

  • COVID-19感染拡大防止のための外出規制や、社会システムやセーフティネットの機能不全によって、身体的・性的・精神的暴力の被害にあう子どもたちが、今後3カ月間で最大8,500万人増加すると推測する。これは、COVID-19の危機が発生しなかった場合の被害者数に対して32%の増加。またこのような暴力は外から見えにくく、把握されにくい状態にある。
  • これから短期間のうちに児童婚や児童労働が増加する恐れがある。今後2年間で少なくとも400万人の女の子たちが結婚すると推測する。
  • 世界の政策決定者に対して、最もぜい弱な立場にある子どもたちへの暴力の増加を阻止するための政策と予算配分を訴える。各国のODA拠出金のうち、子どもの暴力への対策のための拠出は全体の0.6%にとどまる。

※緊急報告書『A Perfect Storm』全文はこちら(英語)外部リンク
ワールド・ビジョン総裁/最高責任者のアンドリュー・モーリーは、国際社会に対して次のように訴えます。
「これまでの支援の経験から、危機下では、最もぜい弱な立場にある子どもたちへの暴力が増えることが分かっています。外出規制により各家庭が孤立し、また各家庭が社会的・経済的に追い詰められることで、家にいる子どもたちの安全が脅かされてしまうことを懸念しています。感染拡大防止策に加えて、子どもたちの権利を守るための対策をとることを、各国のリーダーに訴えます

ワールド・ビジョンのアドボカシー(政策提言)を担当するグローバル・ディレクター、デイナ・ブズセアは続けます。
「残念ながら、すべての子どもたちにとって家庭が安全な場というわけではありません。自分を虐待する家族と一緒に、自宅に閉じ込められていることがあるのです。こうした子どもたちを守ってきた学校やコミュニティ・センター等は閉鎖しているので、被害を受けている子どもたちには居場所がありません。外出規制措置がとられて以降、家庭内暴力や児童虐待の発生件数が急増していると、様々な調査結果が示しています。

例えば、ワールド・ビジョンがバングラデシュで今年4月に実施したCOVID-19 の影響についての調査では、保護者による子どもへの身体的暴力の件数は42%増加、子ども電話相談への相談件数は40%増加、『外出禁止令の発令によって身の安全に不安を持っている』と回答した女の子の人数は50%増加しています」

経済的な困難から逃れるために、児童婚や児童労働の件数も短期間で急増するとワールド・ビジョンでは予測しています。
「国連人口基金(UNFPA)が今年4月に実施した調査によると、今後10年で1億5,000万件の児童婚が予測されていましたが、COVID-19の二次的な影響により、さらに1,300万件増加するという結果が出ています。ワールド・ビジョンの経験においても、こうした災害等が起きると、持参金を得るために未成年の子どもを結婚させる件数が急増することが分かっています。私たちは、今後2年間で少なくとも400万人の女の子たちが早婚という道を進まざるを得ない、とみています。

各国のリーダーが、子どもたちに対する暴力の撲滅のために協調する責任を認識することが、強く求められています。世界の子どもたちのために活動するワールド・ビジョン、そして他のNGOは、今にも増して最もぜい弱な立場の子どもたちのために活動を続けていきますが、NGOだけですべてを行うことはできません。COVID-19の感染防止や経済対策のために日夜尽力している政策決定者の方々に感謝すると同時に、ぜい弱な立場にある子どもたちへの支援も優先してほしいと願います。今行動を起こさなければ、暴力や虐待を受けて傷を負った子どもたちが世界を担う時に、その代償を払うことになります

ワールド・ビジョンのCOVID-19対応

2020年1月にアジア地域での緊急支援を開始し、3月には活動国を拡大してCOVID-19の世界的な感染拡大に対応。従前より実施していた開発プログラム(チャイルド・スポンサーシップ等)の支援地域でCOVID-19対策を行うことに加えて、医療体制がぜい弱な国や難民・避難民が多い等28カ国を「重点支援国」に指定し、対策を強化しています。これら28カ国に住む7,200万人のうち、半数は女性と子どもたちです。ワールド・ビジョンが最もぜい弱な環境にある子どもたちとその家族に支援を届けるため、2020年9月までに、3億5,000万米ドル(約375億円)の活動資金を必要としています。詳しくはこちら

ワールド・ビジョンとは

ワールド・ビジョンは、キリスト教精神に基づいて、貧困や紛争、自然災害等のために困難な状況で生きる子どもたちのために活動する国際NGO。国連経済社会理事会に公認・登録されています。詳しくはこちら

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