日本の難民認定制度|認定率の世界比較と認定以外の難民問題の解決法も

世界では、難民の数が急激に増え続けています。難民は、避難先の国で難民認定を受けることで、難民として正式にさまざまな権利を享受できるようになりますが、難民認定の基準やプロセスはあまり広く知られていないでしょう。

この記事では、日本の難民認定について制度と規模の面から解説し、日本と世界の主要国の難民認定数や認定率を一覧で紹介します。そのうえで、難民問題解決のために、他にどのような方法があるのか、難民認定以外の取り組みについてもお伝えします。

難民認定に関連する法や申請手続き

バングラデシュの難民キャンプで暮らすロヒンギャ難民の子どもたち
バングラデシュの難民キャンプで暮らすロヒンギャ難民の子どもたち

まずは、日本の難民認定について詳しく見ていきましょう。難民認定の手続きはとても細かく定められていますが、ここでは概略として、根拠となる国内法と国際法、申請手続きと申請中の難民の処遇、難民として認定された場合のビザの条件などをご紹介します。

難民認定にかかわる法と制度

日本の難民認定制度は、国連で1951年に採択された「難民の地位に関する条約」、そして同じく1967年に採択された「難民の地位に関する議定書」を根拠に形作られています。一般に、この条約と議定書の2つを合わせて「難民条約」と呼びます。

日本は、1982年にこの難民条約に加入しました。条約の発効に伴い、外国人が難民条約で定義される難民に該当するかどうかを審査する「難民認定制度」が整備されました。国内法としては、「出入国管理及び難民認定法」の第七章の二に、難民認定についての決まりが示されています。


難民認定の申請手続きと申請中の処遇

難民認定は、最寄りの地方出入国在留管理局で、原則本人が申請します。「難民認定申請書」と呼ばれる書式に、自分が難民であることを証明する資料、または自分が難民であることを主張する陳述書などを添付して提出します。提出された資料だけでは判断が難しい場合には、難民調査官と呼ばれる担当者が調査を行います。

在留資格のない外国人が難民申請を行った場合には、一定の条件を満たすことで、日本に仮滞在することが許可されます。仮滞在の期間は原則6カ月で更新可能ですが、仮滞在期間中は住居や行動範囲に制限が課され、就労も認められませ。


難民認定後のビザの条件や待遇

手続きを経て、難民であることが認定されると、「難民認定証明書」が交付されます。

難民の認定を受けた外国人には様々な権利が認められますが、その一つとして、日本での永住許可を受けるための要件の緩和があります。通常、外国人が日本で永住許可を受けるためには、「素行が善良であること」と「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」の2つの要件を満たす必要がありますが、難民認定を受けた外国人の場合、この2つ目の条件を満たしていなくても、永住許可を受けることが可能です(注1)。

そのほか、認定を受けた難民は、日本国民と同じように、国民年金や児童扶養手当、福祉手当などの受給資格が得られます。また、日本国外に出る際には「難民旅行証明書」の交付を受けることができ、証明書の有効期間内であれば何度でも出入国が可能となります。

日本と世界の難民認定率:難民受け入れ大国はどこ?

ウガンダで暮らす南スーダン難民の子どもたち
ウガンダで暮らす南スーダン難民の子どもたち


「日本の難民認定は厳しい」と聞いたことがある人もいるかもしれません。そこで、日本の難民認定数と世界の難民認定数を比べてみましょう。多数の難民を受け入れているのはどのような国々なのでしょうか。

日本の難民認定の現状

2019年に日本で難民申請を行った外国人は合計10,375人で、審査の結果、難民として認定されたのは43人でした。このほか、過去に難民認定を申請した際に難民と認定されなかったも外国人が、2019年に審査請求(不服申し立て)を行って難民と認められた例が1件あったため、2019年に日本で認定された難民は、合計44人となっています。なお、2019年に行われた審査請求は合計5,130件でした(注2)。

日本での難民認定申請者の数は近年増加を続け、2017年には2万人に迫る規模となっていましたが、2018年には急激に減少して1万人強となり、上述のとおり、2019年はそのままほぼ横ばいの数字となりました(注3)。

各国の難民認定の現状

世界各国の難民認定の規模を、認定数、申請数、処理数、認定率という4つの指標で比較してみましょう。ここでの申請数には、新規申請のほか、審査請求などその他の形態も含みます。また、認定率は、2019年の認定数を同年の処理数(認定、不認定など、何らかの判断が下された件数)で割って計算しています。

なお、日本については法務省(注2)、その他の国についてはUNHCR Refugee Population Statistics Database(注3)のデータを使用しています。

2019年認定数 2019年申請数 2019年処理数 2019年認定率
アメリカ 44,614人 315,899人 196,277人 22.73%
イギリス 16,516人 54,072人 41,497人 39.80%
ドイツ 53,973人 165,857人 336,380人 16.05%
フランス 30,051人 191,816人 164,596人 18.26%
カナダ 27,168人 70,129人 53,081人 51.18%
オーストラリア 5,022人 42,232人 29,109人 17.25%
韓国 30人 15,433人 9,625人 0.31%
日本 44人 15,505人 15,422人 0.29%


比較した国々の中では、認定数ではドイツが最多ですが、認定率ではカナダが突出しています。地理的に近い日本と韓国は、ほぼ同じ認定率に落ち着いています。

主要な難民受け入れ国

それでは、世界で一番多くの難民を受け入れている国はどこでしょうか。先ほどの表ではドイツが最多ですが、ドイツは難民受け入れ数で見ると、世界5位です。

2019年末時点での難民を受け入れ大国上位5カ国は、次の表の通りです(注4)。

順位 難民受け入れ数
1 トルコ 360万人
2 コロンビア 180万人
3 パキスタン 140万人
4 ウガンダ 140万人
5 ドイツ 110万人



ドイツより上位に並んでいるのは、先進国とは呼ばれない国ばかりです。実は、世界の難民全体の実に85%を受け入れているのは、開発途上国と呼ばれる国々なのです(注4)。

難民認定以外での難民問題への取り組み

コロンビアで暮らすベネズエラ難民の少女
コロンビアで暮らすベネズエラ難民の少女

難民の受け入れ数に偏りがあることには、地理的な要因も影響しています。出身国からの避難を余儀なくされた時、多くの人々は隣国へ向かい、そこで難民認定を受けます。受け入れ数上位3カ国で言えば、トルコはシリア難民、コロンビアはベネズエラ難民、パキスタンはアフガニスタン難民といった具合に、それぞれ隣国の難民を多数受け入れている状況です。

このように開発途上国が多数の難民を受け入れて生活の基盤を提供している中、先進諸国は、他の形でも難民のための取り組みを行っています。

人道配慮による在留許可

難民認定申請の審査の結果、難民と認定されなかった場合でも、人道的な配慮を理由に在留を認められる場合があります。日本では、この仕組みのもと、2019年に合計37人が在留を認められました。配慮の理由としては、本国の情勢などが挙げられています(注1)。

日本で2019年までに難民認定を受けた外国人は合計794人ですが、人道配慮により在留を認められた外国人は合計2,665人であり、この仕組みによって、難民認定をとおしてよりも多くの外国人を受け入れていることになります(注5)。

第三国定住

多くの先進諸国が、「第三国定住」と呼ばれる制度を使って、さらに多くの難民を受け入れています。これは、難民が最初に庇護を求めた国から、彼らを定住者として受け入れることに同意した第三国へと、難民が移動する制度です。出身国を離れて近隣国の難民キャンプで暮らしている難民を、欧米を中心とする先進国が受け入れる例が一般的です。

第三国定住の対象となるのは、すでに難民として認定されている人々です。多数の難民を受け入れている庇護国から他の国に難民を移すことで、庇護国への負担を軽くし、国際社会が責任を分担し合う仕組みと言えます。

日本は、2010年に、アジアで初めて第三国定住の受け入れを開始しました(注6)。この取り組みをとおして、2019年までに194人の難民を受け入れています(注5)。

国外での難民支援

近年難民の数が増え続けている理由の一つに、避難生活の長期化があります。
一般に、難民問題の恒久的な解決策は、難民が出身国へ帰る「自主帰還」、難民が庇護を求めた国に定住する「庇護国社会への統合」、そして上記で紹介した「第三国定住」の3つとされています(注6)。

難民条約の定義上、難民とは迫害を逃れて避難した人を指しますので、自主帰還がかなうかどうかは出身国の情勢に依存します。避難する原因となった紛争や対立構造が解消されない限り帰還は現実的ではないため、情勢に改善が見られない間、難民たちの避難生活は続きます。また、難民の受け入れ数に地域的な偏りが大きいことからも、すべての難民を最初の庇護国に統合するのも現実的ではありません。このような理由で、難民たちがキャンプなどで長期にわたって避難生活を送ることが常態化しているのです。

帰還、統合、再定住のいずれかの解決が図られるまでの先の見えない生活を、難民たちができるだけ快適に過ごせるように、先進国を中心とする国際社会が、世界中で支援を続けています。


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シリア難民の少女とワールド・ビジョンのスタッフ
シリア難民の少女とワールド・ビジョンのスタッフ

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※このコンテンツは、2020年12月の情報をもとに作成しています。

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参考資料

注1 出入国在留管理庁:難民認定制度外部リンク
注2 法務省:令和元年における難民認定者数等について外部リンク
注3 UNHCR:Refugee Population Statistics Database外部リンク Data Finder
注4 UNHCR:Refugee Data Finder外部リンク Key Indicators
注5 法務省:我が国における難民庇護の状況等外部リンク
注6 UNHCR:第三国定住外部リンク

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