国際協力に英語のスキルってどのくらい必要?《国際協力の仕事別にご紹介》

国際協力を仕事にするには、どのくらいの語学スキルが必要なのでしょうか。国際協力の現場では、高い専門性を活かして活躍している人が多いのが特徴ですが、同じく重要なスキルとして挙げられるのが語学力です。特に英語はいろいろな国や地域の人々とコミュニケーションを取るためのツールとして、国際協力には欠かせないスキルと言えます。今回は国際協力の仕事における英語のスキルについて、組織や職種別に紹介します。

国際協力の仕事について

ミャンマーの子どもたち


国際協力と聞くと、どんな仕事を思い浮かべるでしょうか。海外協力隊など開発途上国で活動を行っているイメージがあるかもしれませんが、ひとくちに国際協力と言っても、仕事の規模や分野、職種などは多種多様です。まずは国際協力にはどのような仕事があるかを見ていきましょう。

国際協力の仕事とは

国際協力の仕事は開発途上国の支援のみならず、私たちの生活や世界の平和を守ることにつながる仕事です。国際協力に携わる人は、国際連合などの国際的な機関から国内の一般企業で働く人まで幅広くいます。そのため、様々なキャリアから国際協力の仕事に関わることができます。以下では主な5つの仕事をご説明します。

・国際機関
国際機関とは、貧困対策や平和構築、環境問題や感染症対策などのグローバルな課題を解決するためにつくられた機関です。その代表的な組織が国際連合(国連)で、国連を中心に様々な組織や専門的な機関が存在します。国際機関の仕事には専門知識の有無も含めて、多様なスキルや知見を持った人材が必要です。そのため国際協力の仕事では、国際協力以外のキャリアを活かすことができます。

・外務省
国の利益を守る役割の外務省では、平和で豊かな国際社会と経済発展のために仕事を行っています。多くの外交官が世界各国の大使館や総領事館で働いていて、その仕事内容は多岐にわたります。

・JICA(国際協力機構)
JICAはODAの実施機関である政府系機関で、開発途上国の支援を行っています。世界90カ所以上に拠点を持ち、150以上の国や地域を協力対象としています。事業内容も大学や民間企業、地方自治体などと連携した政策実現から、開発途上国での現場仕事までさまざまです。

・国際協力NGO
政府が中心となった国際機関以外にも、国際協力を行うための組織にNGO(Non-Governmental Organizaton /非政府組織)が挙げられます。私たちワールド・ビジョンだけでなく、国境なき医師団やグラミン銀行、セーブ・ザ・チルドレンなど、国際協力NGOはそれぞれの分野に特化して活動を行っています。国内では一般企業と同じように総務、会計、広報、プロジェクトの企画立案や、活動のための資金調達をしています。海外ではプロジェクトの実施のため、現地スタッフのマネジメントや、関係するパートナー(現地政府、コミュニティ、国際機関、日本大使館など)との折衝・調整に関する業務などを行っています(注2)。

・JICA海外協力隊
JICA海外協力隊とはJICAが実施しているボランティア派遣制度です。駅の広告やテレビのコマーシャルなどで見かける方も多いのではないでしょうか。そんなJICA海外協力隊は1965年に発足して以来、約90カ国で4万人以上の隊員を派遣してきた実績と歴史があります。応募対象者は20~69歳で、大学生から就職をし、スキルを身に着けた社会人まで年齢の幅が広いのが特徴です(注3)。また、120以上の職種で募集を行っているため、資格や専門知識の必要なものもありますが、そこまで応募条件が厳しくないものもあり、国際協力の仕事に携わったことのない人でも比較的応募がしやすいです(注4)。

・企業(開発コンサルタント)
国内にも国際協力関係の活動に取り組む企業や、開発コンサルタントという職種があります。近年、国際協力は政府系の機関以外にも企業で取り組まれるようになっています。なかには、社会問題をビジネスで解決するソーシャルビジネスを行う企業もあります。

開発コンサルタントは、開発協力をする際に必要な専門的な知識やスキルを現場に提供する役割を担っています。規模や内容の幅も広いため、開発コンサルタントは、様々な領域をカバーした技術力と専門性が必要になります。国際機関の仕事は企画・立案やプロジェクトの運営がメインですが、実際に現地で調査を行い、具体的に作業を行うこともあります(注5)。

国際協力で必要な英語のスキル

レバノンの少女とワールドビジョンスタッフ


それぞれの国際協力の仕事に必要な英語力はどのぐらいなのでしょうか。上記で紹介した組織や職種別に見ていきましょう。

国際機関

国際機関で働くためには、各機関の欠員募集に応募する(空席広告)、ジュニア・プロフェショナル・オフィサー(JPO)派遣制度を利用する、国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)試験を受けるといった3つの方法があります。ここでは2つめのジュニア・プロフェショナル・オフィサー(JPO)派遣制度で必要とされる英語力について紹介します。

JPO派遣制度は外務省が実施しているもので、35歳以下の日本人に対し、原則2年間、国際勤務での勤務経験を積む機会を提供しています。応募には年齢制限や語学などの条件もあり、それぞれが求める分野での修士号と2年以上の職務経験も必要なため、選考通過は容易でありません。しかしながら、これまで約1700名が派遣され、2001年以降の派遣者の7割以上が派遣後に国際機関に正規採用されていることから、国際機関で経験を積みながら正規職員を目指すことができる制度です(注6)。

JPO派遣制度では語学力、職歴・経験、総合潜在力の3つの観点からそれぞれを採点し、その総合点から合否を決定します。語学力では、英語、フランス語、その他国連公用語の語学のスキルから評価されます。英語は、基本的にTOEFLまたはIELTSの点数をもとに採点され、必要な点数はなく足きりもありません。2017年度のTOFELのスコアで受験した最終合格者の平均点数は104.6点で、IELTSの平均は7.2点でした。もし、英語力や海外経験があったとしても、国際機関で働くための試験では、すべての人の英語能力を客観的に評価するためTOEFLまたはIELTSのスコアの提出は必須とされています。フランス語と国連公用語以外の言語は、各種語学検定証明書や経験をもとにレベルに応じて加点されます。(注7)

政府系機関(外務省、JICA)

・外務省
外務省で働く外交官は、国と国の架け橋のような役割を担う仕事です。そのため英語をはじめ、現地語などでコミュニケーションを取ったり、交渉を行うための高い語学力が必須となります。

外務省専門職職員(外交官)としては英語力が重要視されているため、採用時にTOEFLまたはIELTSのスコアを提出することが推奨されています。必ずしも応募時に高い語学力が必要なわけではなく、その他の能力や意欲なども評価されます。また、英語以外の言語のスキルも評価の対象となっています。外務省では研修を経てから2、3年間の在外語学研修が与えられています。外務省に就職した場合、数年間国内で研修をしたのち、それぞれの言語を習得するため2、3年間海外留学に行き、言語以外にも文化や歴史を学びます。言語習得後、各国の在外公館へ配属されます(注8)。

・JICA
1900人以上の職員から成り立っているJICAでは、新卒採用も行っています。短期大学・大学・大学院を新規に卒業する学生を募集しています。学部・学科を問わず、英語のスキルも必須ではありません。応募資格は異なりますが、中途での採用も行っています。企業・法人での職務経験または国際協力に関連する実務経験と、業務に取り組める英語スキル(原則TOEIC860点相当以上など)が必要です。ただし、実務経験にはJICA海外協力隊やNGOでの活動経験も含まれるため、JICA海外協力隊に参加してさらに国際協力の仕事を志す人の1つの選択肢にもなります(注9)(注10)。

国際協力NGO

では国際協力NGOで働く中では、英語力はどこまで必要とされるのでしょうか。私たちワールド・ビジョンでは部署やポジションによって求められる英語力が異なります。一部、それほど英語が必要とされないポジションもありますが、基本的にパートナーシップ間(ワールド・ビジョン・インターナショナルや、日本以外のワールド・ビジョンのオフィス)のメールのやり取りやミーティングなどでは英語を使います。そのため、ビジネスの現場で使用する最低限の英語力は備えているのが望ましいでしょう。

具体的には、支援事業部ではTOFEL iBT90点以上(TOEICおよそ900点以上)、マーケティングや管理部門はTOEIC700点以上が応募時の目安とされています。特に支援事業部では日常的に英語を使うので、スピーキングやライティングの試験が含まれるTOEFLやIELTSを基準に評価します。

また、英語以外に現地語を少しでも話すことができる点も評価されます。現地語を話すことで支援地域に暮らすコミュニティの方や現地スタッフとも心理的距離が近くなり、業務上にもいい影響があると考えられるためです。その他のNGOの求人でも、英語でのメールのやり取りや文書作成を行うこともあるため、ビジネスとしての英語力を求められることが多いようです。

JICA海外協力隊

JICA海外協力隊では、応募に必要な英語力として中学卒業程度の英語力(英検3級もしくはTOEIC®スコア330点)が設定されています。合格後の訓練で言語を習得する機会が設けられているため、言語習得の素地の有無を確認するための条件になっています。英語以外の言語能力もA~Dのレベルで認定されますが、募集職種によってはAやBなどの高いレベルが求められることもあります。英語におけるAレベルは、TOEIC®730点(S&W 290点)以上、TOEFL®550点(CBT 213点、iBT 79点)以上などに設定されています。また、最低でも日常会話程度の英語力(TOEIC®330点(Bridge 130点)以上)が必要となります(注11)。

企業(開発コンサルタント)

開発コンサルタントにとって、語学力の有無は採用時に大切なポイントです。なぜなら国内での開発コンサルティングを行う企業の多くは中小企業が多く、即戦力が求められるためです。採用の仕方は中途採用の場合も多く、新卒採用を行う会社もありますが理系の学卒や院卒が主になっています。専門知識、実務経験にプラスして英語などの語学力がある人材が、新卒・中途問わず採用される傾向が強いです。求められる英語力は、求人によって異なりますが英語が必須とされている場合が多いです。中にはTOEIC700~800点以上や日常英会話ができるなどある程度、現地でコミュニケーションができる英語スキルは必要だと考えられます。

国際協力に携わるワールド・ビジョンの活動をご紹介

ホンジュラスの子どもたちとワールドビジョンスタッフ



ワールド・ビジョンの仕事内容

国ワールド・ビジョン・ジャパンでは約80名のスタッフが国際協力の現場で働いています。その業務の内容は、途上国で実施する事業の調整・管理を行う事業管理部門である支援事業部、日本国内でファンドレイジングや広報を行うマーケティング部門(マーケティング第1部・第2部)、財務・経理や人事・総務・ITなどの管理部門(サポートサービス部)の3つの業務に分けられます。

これら3つの主な仕事内容と、さまざまな国際協力への携わり方を紹介します。

事業管理
支援地域での事業管理を行っているのが支援事業部です。支援事業部は、担当の支援地域と、緊急人道支援に関する課に分かれており、それぞれの地域における開発援助事業(水衛生、教育、保健、栄養、生計向上)の企画・運営管理・モニタリング・評価を行っています。日本政府(外務省)やJICA(国際協力機構)、国連機関等と連携した開発援助事業にも取り組んでいます。また支援事業部では、アドボカシー担当者が市民社会、政府への働きかけにも力を入れています。

マーケティング(ファンドレイズ)
日本国内でファンドレイジングや広報を行うのがマーケティング部門(マーケティング第1部・第2部)です。ファンドレイズとは、民間の非営利団体が活動のための資金を個人や民間、政府から集めることを意味します。私たちワールド・ビジョン・ジャパンもこのファンドレイズを通してお預かりしたご寄付で日々の活動を行っています。

ワールド・ビジョンという団体をより多くの方に知っていただくための広報・広告活動に加えて重要なのは、すでに寄付をくださっているご支援者の皆さまへの報告と、問い合わせに対する対応です。活動報告のイベントや、支援地訪問ツアーの企画・実施もしています。個人のご支援者に加え、企業の方からのお問い合わせにも対応しています。

スタッフだけでは担い切れない業務をボランティアの皆さまに助けていただいています。お預かりしたご寄付を間違いなく入金処理すること、マーケティング戦略を決めるための分析・企画も重要です。マーケティング部のスタッフは、こうした多岐にわたる業務を担当しています。

管理部門
最後にワールド・ビジョン・ジャパンの組織を支える管理部門、サポートサービス部を紹介します。現在は約10名のスタッフがサポートサービス部で主に組織の財務や総務の役割を担っています。業務内容でいうと、採用や育成・評価、給与の支払や税金・社会保険関係の手続き、法人として必要な総会・理事会の開催、登記や年次の報告、文房具からサーバーなどの大きな機器に至るまで、さまざまな調達などが挙げられます。

支援地への駐在員の派遣に関わる業務はNGOならではのとても大切な仕事です。日本の支援者の方からのあたたかい想いが込もった支援金を適切に管理することも重要な仕事です。財務や経理の仕事はお金の計算や知識だけが必要と思われがちですが、私たちの活動は寄付から成り立っています。そのため、寄付がどのように使用され、子どもたちにどんな影響を与えているのか、会計の透明性と説明責任が求められます。

財務・経理課は、信頼できる質の高い業務を遂行し、どんなときでも寄付者の方に説明責任を果たせるように努めています。

ワールド・ビジョンを通して国際協力を始めてみませんか?

国際協力に関心がある方の中には、高いスキルや知識がなかったり、収入の面で不安を抱いている方も多いかもしれません。たしかに国際協力の中には高い専門知識を必要とする仕事も多くあります。けれども、国際協力に携わるうえで重要なのは、世界をより良くして、世界で起こる問題を解決したいという「想い」です。一人ひとりがその「想い」から何か小さなことでもアクションを起こすことが国際協力への一歩になります。ここではそんな一歩として、2つの国際協力への関わり方をご紹介します。

・インターンやボランティアスタッフとして参加する
ワールド・ビジョン・ジャパンではスタッフの募集以外に、インターンやボランティアの受け入れを行っています。インターンやボランティアはワールド・ビジョン・ジャパンの日本オフィスで仕事を行います。ワールド・ビジョン・ジャパンのインターンは週1日から始めることができ、学業との両立もできます。インターンの仕事は、翻訳や書類作成、イベントの企画・運営、コンテンツ作成、SNS運用、WEB分析、進行中の案件に関わったりと様々な業務を経験することができます。インターンをすることで改めて自分の興味・関心、将来のキャリアを考えるきっかけになります。

また、ボランティアとして関わることが可能です。私たちの活動は、現在約420名のボランティアスタッフの方に支えられています。ボランティアの方には主に事務の仕事や開発途上国の子どもたちからの手紙の翻訳(ご自身がチャイルド・スポンサーシップの方のみ)をしていただいています(※)。

このようにワールド・ビジョン・ジャパンのオフィスは子どもたちの困難な状況を変えたいと思う方々の熱い気持ちで溢れています。「社会貢献や国際協力に関心があり、子どもたちや世界のために何かしたい」という思いを持った方をお待ちしております。
社内のスタッフやインターンが日々ブログを書いています。ワールド・ビジョン・ジャパンの社内やスタッフの雰囲気を知ることができますので、ぜひご覧ください。

※ワールド・ビジョン・ジャパンは2020年8月現在、新型コロナウイルスの感染拡大防止への対応として、ボランティアの募集、およびボランティア活動を休止をしています。

・チャイルド・スポンサーシップで子どもたちを支援する
ワールド・ビジョン・ジャパンに寄せられる資金の5割は、チャイルド・スポンサーシップという継続寄付によるものです。「チャイルド・スポンサーシップ」は寄付をするだけではなく、開発途上国の子どもとつながりを感じることができるのが特徴です。

例えば、「チャイルド・スポンサー」になると、年に1度、子どもの成長をうかがえる写真や支援を行っている活動の報告書が送られてきます。また、あなたから手紙を送ったり、実際に会いに行くことも可能です。年に一度、団体の活動状況と寄付金の使い道を記載した年次報告書も届きます。2019年度は、48,426人の方がチャイルド・スポンサーとして継続的に寄付をお寄せくださいました。

特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパンは2002年5月1日、国税庁により「認定NPO法人」として認定され、その後のNPO法の改正を受け、2014年8月1日に東京都により改めて認定されています。皆さまからの支援金が寄付金控除等の対象になります。

チャイルド・スポンサーシップを通じて世界のために国際協力へ参加してみませんか。
リンク1日150円からできる支援。チャイルド・スポンサーシップとは

チャイルド・スポンサーシップは下記から申し込みください。

チャイスポ申込み2


※このコンテンツは、2020年8月の情報をもとに作成しています。

参考資料

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