(2022.09.16)
気候変動の影響により、今後10年間で、新たに1.3億人が貧困に陥る恐れがあると、世界銀行は推計しています。気候変動は貧困とどのように関係しているのでしょうか?私たちには何ができるでしょうか?
10の事実をご紹介します。一緒に考えてみましょう。
前編では1~5まで、後編では6~10をご紹介します。
気候変動による負の影響は、低所得国や、貧困の中で暮らす人々により深刻にのしかかります。その理由は、日々の暮らしを天然資源に頼っているためです。加えて、彼らは気候変動による影響に適応する能力が限られています。
世界全体に目を向けると、貧困の中に暮らす人々の4人中3人は、森林・湖・海などの天然資源に日々の収入を頼る地域で生活しています。そのため、気候変動がもたらす山火事・干ばつ・台風や、その他の自然災害の影響を受けやすいのです。
世界銀行は、世界の最貧困国74カ国が排出する温暖化ガスの総量は、全世界で排出される温暖化ガスの10分の1にすぎないと報告しています。しかし、これらの国々は、気候変動の影響を深刻に受けています。実際に、過去10年で1980年代と比べて、8倍の回数の自然災害に見舞われました。
【ワールド・ビジョン(WV)が皆さまのご寄付で行っていること】
かつて、ネルソン・マンデラ氏はこのように述べました。「貧困を克服することは慈善事業ではなく、正義の行いなのです」。
世界によって形作られ、容認されてきた不平等について腰を据えて取り組むことこそ、WVが行う継続的な開発支援「チャイルド・スポンサーシップ」の真髄です。
1つのコミュニティの1人の子どもをチャイルド・スポンサーとしてご支援くださることで、2.5人の子どもと地域全体の変革を支えてくださっているのです。そして、支援を届ける子どもたちとともに、気候変動や、貧困にある子どもたちが直面する様々な課題を深刻化させる格差の問題など、大きな課題の解決に取り組んでいます。
WVは、声なき声、特に子どもたちの声に耳を傾け、その声を合わせ、共感を集め、国・地域・国際社会、様々なレベルで届けます。そして、世界で最もぜい弱な立場に置かれた子どもたちの状況を左右する、公正ではない政策・習慣や構造を変えていきます。
国連世界食糧計画(WFP)によると、世界中で飢餓に苦しむ人々の8割は自然災害や、異常気象の影響を受けやすい地域で生活しています。干ばつや洪水は頻度も深刻さも増しており、世界中の穀物生産に大きな影響を与えています。食糧を得ることがより困難になり、価格が高騰しています。
そして、ここでも、最も深刻な影響を受けるのは低所得国です。いくつかの低所得国において、農業はGDP(国内総生産) の4分の1を占めます。貧困に苦しむ成人の65%以上が農業で生計を立てています。収穫が少なくなると、家族は空腹に陥ります。
そしてWFPによると、食糧と資源をめぐる競争が地域の紛争を増やし、そのことがさらに飢餓を悪化させているのです。
【WVが皆さまのご寄付で行っていること】
気候変動に適応できる農業の方法を訓練すること、生計を立てる手段を構築することを支えることはもちろん、WVのスタッフとボランティアスタッフは国・地域・国際社会に対してぜい弱な立場にある世界中の子どもたち・地域が、必要な食糧と、栄養を確保できるようにアドボカシー(政策提言)活動を行っています。
2021年には、29カ国の、790万人の人々がWVを通して食糧支援を受けました。
そして、過去10年で、WVが支援した、深刻な栄養不良に陥った子どもたちのうち89%が栄養不良を完全に克服することができました。
水を確保することは、すでに貧困状態にある国にとって大きな課題です。気候変動に伴い発生頻度が増加している干ばつをはじめとした水資源の損失や、降雨パターンの変化・降雨量の減少によって、特に亜熱帯地域のような既に水不足に直面している地域では、水を確保することがより難しくなっています。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、水不足は深刻になると予想しており、その影響を受ける人は現在の17億人から、2025年までに約50億人にまで増加することが危惧されています。水不足は世界中の貧困の中にある多くの人々に影響を与えています。
その一方で、豪雨と洪水は増加傾向にあり、干ばつや水不足と同時にこの課題も、大きな影響を与えています。インフラ施設がぜい弱な地域では、洪水や海面上昇は破壊的な影響をもたらしうるのです。
【WVが皆さまのご寄付で行っていること】
WVは支援活動を展開するすべての地域で、2030年までに、安心して使えるきれいな水を提供すること、衛生環境を整えることを目指しています。チャイルド・スポンサーや募金にご協力くださる皆さまのご支援によって、10秒に1人にきれいな水を届けることができています。2021年には、300万人に安心して使えるきれいな水を提供することができました。
ノースカロライナ大学の調査によると、ワールド・ビジョンがガーナで掘削した井戸の80%で、掘削から20年近くがたった今でもきれいな水を汲むことができています。これは、業界の平均値と比べて33%高い割合にあたります。
世界保健機関(WHO)によると、気候変動は様々な病気など健康を害する要因に直接的な影響を与えています。例として、食糧不足による栄養不良、異常気象による死亡・けが、安心して使えるきれいな水を確保できないことによる下痢症などが挙げられます。気温や降水量の変動によって、死にもつながるマラリア・デング熱など虫が媒介する病気が発生する範囲が広がる可能性もあります。
適切な保健サービスを受けることが難しい国では、気候変動による病気やけがが増えることは、健康へ深刻な影響を及ぼす可能性のある喫緊の課題です。
【WVが皆さまのご寄付で行っていること】
チャイルド・スポンサーシップの支援によって、子どもたち・家族・コミュニティの人々の健康を改善することができます。お母さんと赤ちゃんを支援することで、赤ちゃんが健康に生まれることができます。子どもたちは予防接種、蚊帳の配布、健康診断によって予防可能な病気から自らを守ることができます。両親は栄養について学ぶことができ、そして、子どもたちが健やかに育つために必要な食糧を受け取ることができます。
WVは2021年に40万人を超えるコミュニティでの保健サービスの最前線を担う村落保健員に研修の機会を提供しました。知識を身に付けることで、今後何年にもわたって、コミュニティの人々の健康を自分たちで守ることができるようになります。
農業で生計を立てているコミュニティにとって、気候変動は壊滅的な影響を与えます。長引く干ばつや、洪水などの異常気象などが挙げられます。洪水が発生すると、作付けした作物や日常で必要な物が流されてしまいます。そして、その地を離れるしかなくなってしまいます。子どもたちには何も選ぶことができません。
国際労働機関(ILO)によると、気候変動の影響で、世界中で18歳未満の子どもの1億6000万人が児童労働を強いられています。気候変動は、児童労働だけではなく児童婚にも影響しており、食いぶちを減らすために親たちは仕方なく子どもを結婚させるのです。2030年までに、1億1000万人の女の子たちが幼くして結婚を強いられていると危惧されています。例えば、ケニアでは、長引く干ばつは、多くのコミュニティにとって主な収入を失うことを意味します。
ワールド・ビジョン・ケニアの災害対応の責任者であるゲルション・マワカジは、干ばつがコミュニティに与える影響に心を引き裂かれる想いだと述べています。
「21世紀の今、すべてのお母さんと子どもたちが、尊厳のある人生を生き、十分な食糧を手にすることができるべきなのです」
彼は続けます。
「気候変動によって家族たちが困難にさらされていることを目撃することは、とても心が痛みます」
【WVが皆さまのご寄付で行っていること】
チャイルド・スポンサーシップを通じて、家族は生計を向上させ、いざという時に対応できるようになります。貯蓄グループに参加したり、少額の資金を借りたり、新しい仕事に就くための能力を身に付けたり、そして、お金や自身のビジネスをどのように管理するかなどを支援によって学ぶことができます。
60秒に1つの家族が、貧困を克服するための支援を受けています。2021年には、約150万人の人々がチャイルド・スポンサーシップの支援を通じて地域の貯蓄グループに参加し、災害などに備えることができました。