市民社会から見る「SDGsアクションプラン2019」

(2019.02.04)

採択から3年を経たSDGs

2015年9月の国連総会で採択された持続可能な開発目標:SDGs(Sustainable Development Goals)の実現に向けて、世界中で各国政府、ビジネス、メディア、教育・研究機関、NGOを含む市民社会などがそれぞれの役割を果たすべく活動しています。

ワールド・ビジョン・ジャパンは、チャイルド・スポンサーシップや緊急人道支援の実施による、健やかな子どもたちの成長を支援する活動を通してSDGs達成への貢献を目指すとともに、日本の市民社会組織として、日本政府に声を届けるアドボカシーにも積極的に取り組んでいます。

SDGs logo

日本におけるSDGsの進展

日本では、2016年5月に内閣総理大臣を本部長とする外部リンク持続可能な開発目標(SDGs)推進本部が設置され、外部リンクpdfアイコン持続可能な開発目標実施指針が策定されました。この指針を実現するにあたって、広い分野における取組を各関係者が連携して進められるよう、行政、市民社会組織(NGO、NPO)、有識者、ビジネス、国際機関、各種団体等の関係者が集まり意見交換をする外部リンクpdfアイコンSDGs推進円卓会議が開催されています。市民社会としては外部リンク一般社団法人SDGs市民社会ネットワークが立ち上げられ、この円卓会議に参加していますが、ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)も、SDGs市民社会ネットワークに参画し、開発ユニット幹事を務めるなど、他のNGO、NPOと協働し、政府への提言活動を行っています。

SDGsアクションプラン

2018年には、実施指針をより具体的な行動として実践するために「外部リンクpdfアイコンSDGsアクションプラン2018」が政府主導で作成されました。目標達成に向けた具体的行動を促す前進と評価される一方で、その策定プロセスに関係者の声が十分に反映される機会がなかったという振り返りがなされました。これを受け、SDGs市民社会ネットワークは、次年度のアクションプラン策定に間に合うタイミングで市民の声を届けることを目指し「外部リンクpdfアイコンSDGsボトムアップ・アクションプラン」を2018年11月にSDGs推進円卓会議へ提出。市民社会を含め様々な関係者が協働しながら進めることが求められるSDGs推進にあたって積極的な働きかけを行いました。

SDGs ボトムアップアクションプラン画像
2018年11月、市民社会(SDGs市民社会ネットワーク)より政府に提出されたSDGsボトムアップ・アクションプラン

特別講演会に登壇

2019年1月25日、2018年12月に公開された「外部リンクpdfアイコンSDGsアクションプラン2019」の策定プロセスと全体像について理解を深める外部リンク特別講演会「SDGsアクションプラン2019をレビューする-その策定プロセスと全体像-」が以下の通り開催され、WVJ アドボカシー・シニア・アドバイザーの柴田スタッフが登壇しました。

SDGsの根本にある「誰一人取り残さない」という原点に立ち戻る必要性を強調する柴田スタッフ
パネルディスカッションでは、政府、市民社会、メディア、ビジネスという異なる立場からの意見が活発に交わされました

日時:2019年1月25日(金)18:00-20:30

場所:ジェトロ本部 5階展示場

主催:日本貿易振興会(ジェトロ)・アジア経済研究所、みんなのSDGs、SDGs市民社会ネットワーク、国際開発学会社会連携委員会

登壇者:鈴木 秀生(外務省 地球規模課題審議官 大使)

    稲場 雅紀(SDGs市民社会ネットワーク業務執行理事)

    柴田 哲子(WVJアドボカシー・シニア・アドバイザー/SDGs市民社会ネットワーク 開発ユニット幹事)

    北郷 美由紀(朝日新聞 SDGs担当専門記者)

    河口 真理子(大和総研 調査本部 研究主幹)

    甲木 浩太郎(外務省 国際協力局 地球規模課題総括課長)
佐藤 寛   (ジェトロ・アジア経済研究所 新領域研究センター 上席主任調査研究員)



柴田スタッフは、「市民社会から見るSDGs アクションプラン2019」というテーマで講演し、日本の市民社会がSDGs策定に向けた数年間にわたる「ポスト2015開発アジェンダ」の時期から関わってきたこと、SDGs採択後も、国際社会と日本国内の両方で積極的に関わり続けていることを紹介。この立場から、このたび公開された「外部リンクpdfアイコンSDGsアクションプラン2019」について、SDGsの原点ともいえる「Leave No One Behind」(誰一人取り残さない)という根本的な考え方に立ち返る必要性を強調しました。


具体的な一例として、外部リンクpdfアイコンSDGsの前文には「あらゆる形態と側面の貧困を撲滅する」と掲げられている中、各国におけるSDGs進捗状況を経年評価している外部リンク国際報告書「SDGs指標とダッシュボード(SDG Index and Dashboards)」2018年版では日本のSDGs1の相対的貧困の指標が「達成までほど遠い」と評価されています。にもかかわらず、「外部リンクpdfアイコンSDGsアクションプラン2019」における政策の柱の中に「貧困・格差」の記述がなく、施策の一つとして子どもの貧困対策についてのみ言及されていることを挙げ、「Leave No One Behind」(誰一人取り残さない)を目指すSDGsの本来のビジョンに照らした妥当性について疑問を呈しました。一方で、幅広い関係者が意見を届けることができる円卓会議の設置は評価歓迎されるべきものとして、今後、さらなる活用と活性化への期待を表明しました。

国連ハイレベル政治フォーラムに向けて

毎年7月にニューヨークで開催される国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)では、SDGsのレビューが行われます。今年は、ワールド・ビジョンがキャンペーンを通じて特に注力している分野でもある子どもへの暴力撤廃(SDG16.2)が含まれるゴール16のレビューが予定されています。

加えて今年は、SDGs採択後初となる首脳級のSDGsレビューを行うHLPFが9月に予定されているほか、日本国内でもSDGs実施指針の見直しが予定されているなど、SDGs実施にあたり大変重要な年となっています。

ワールド・ビジョン・ジャパンは今後も、SDGs市民社会ネットワークや国際的なNGOのネットワークを通じて、また日本政府との対話を通じて、子どもの健やかな成長を目指しSDGs達成に向けて積極的なアドボカシーを展開していきます。

2018年7月に行われたHLPFにて、子どもに対する暴力撤廃をテーマに他団体と協働でサイドイベントを実施。右から3番目はWVJ柴田スタッフ。