【弁護士監修】遺贈とは?相続や死因贈与との違いと遺贈の方法について解説

投稿日|2025年3月27日
更新日|2025年6月12日
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この記事でわかること

ワールド・ビジョン・ジャパンでは、遺贈寄付を通じて社会貢献ができる方法を紹介しています。遺贈は遺言で財産を特定の団体に譲渡するもので、支援活動に活用されます。寄付者の意思を尊重し、社会的な影響を与える手段です。

「遺贈」や「遺贈寄付」という言葉を耳にする機会が増えてきました。ここ数年で「終活」という考え方が定着し、遺言の準備をする人が増加していることに加え、寄付による社会貢献意識の高まりや、相続人不在により行き場のない財産が生まれていることなどが関係していると考えられます。今後、「遺贈寄付」という選択肢はますます身近なものになっていくでしょう。ワールド・ビジョン・ジャパンにおいても近年、遺贈や相続財産からの寄付のお申し出をいただく機会が増えています。

近年関心が高まっている遺贈寄付について、ご寄付をいただく団体の立場として、4回のシリーズにわたって考えていきたいと思います。第1回目の記事では、日本国内での意識や現状についてご紹介しました。第2回目のこの記事では、遺贈とは何かを説明し、遺贈寄付の特徴や注意点を解説します。

遺贈とは?包括遺贈と特定遺贈それぞれの特長

故人の財産、つまり遺産の処分方法の一つに「遺贈」という制度があります。近年注目されている「遺贈寄付」とは、この制度を使って自治体や特定の社会貢献のためなどに活動をしている団体などに寄付を行うことを言います。まずは「遺贈」の仕組みを詳しく見ていきましょう。

遺贈の意味と目的

遺贈は、遺言によって遺産の一部またはすべてを特定の個人や団体に無償で譲渡することをいいます。相続人か相続人以外の第三者かにかかわらず、遺産を誰に遺すかについて亡くなった人の意思を尊重するための制度といえます。遺贈は、「包括遺贈」「特定遺贈」の2種類に分けられます。遺贈を考える時には、この2種類の違いをきちんと把握して、適切な方を選ぶ必要があります。

包括遺贈の特徴とその注意点

「包括遺贈」は遺贈する財産を特定せず、全財産に占める割合を指定し、受遺者(遺贈を受ける人)に譲渡するものです。例えば、「私の財産の全部を●●に遺贈する」「私の財産の1/3を●●に遺贈する」という遺言内容になります。この場合、受遺者は相続人と同一の権利義務を有し、積極財産(例.土地、家屋、預金)だけでなく消極財産(例.借金、連帯保証債務)も承継することになります。

包括遺贈の受遺者は、家庭裁判所での手続きによって包括遺贈を放棄することもできます。放棄する場合は、包括遺贈を受けたことを知った時点から3カ月以内に手続きを行う必要があり、これを過ぎると包括遺贈を承認したとみなされます。

特定遺贈の特徴とその注意点

「特定遺贈」は、特定の財産を指定して受遺者に譲渡するものです。債務については、特に指定がない限り受遺者には承継されません。

特定遺贈の場合、受遺者は遺贈を放棄したい場合でも家庭裁判所で手続きをする必要はなく、遺言執行者などに意思表示をするだけで事足り、放棄の期限もありません。ただし、遺贈を承認するか否かの回答を相続人などから求められた場合には、指定された期限までに意思表示をしなければ承認したものと見なされます。

包括遺贈特定遺贈
遺贈される財産 全財産に占める割合で指定 特定の財産
債務承継される承継されない 

遺贈、死因贈与、相続の違い

遺贈と似た制度として「死因贈与」というものがあります。また故人が遺言書を残さなかった場合には法律に従って遺産が相続されることになります。それぞれの方法の相違点を把握して、目的に合った手段を選ぶ必要があります。

遺贈と相続の違い

故人が遺言書を残さなかった場合、法定相続人が法定相続分にしたがって遺産を分割することとなります。遺産を相続できる人は法律で決められており、「法定相続人」と呼ばれ、また法定相続人が遺産を相続できる割合(法定相続分)も法律で決められています。亡くなった人(被相続人)の配偶者と血族のうち順位の高い人が法定相続人となります。

遺贈の場合、法定相続人以外の個人や法人・任意団体にも財産を譲渡できることが、相続との一番の違いです。

相続でも遺贈でも、個人が遺産を受け取る場合には相続税が課されます。さらに、どちらの制度でも、被相続人の配偶者または一親等の血族(親か子)以外の人が遺産を受け取る場合には、相続税額の2割にあたる金額が加算されます(注1)。

遺贈と死因贈与の違い

「死因贈与」とは、贈与者(財産を渡す人)と受贈者(受け取る人)の間で、贈与者が死亡した時点で特定の財産を受贈者に贈与するという契約による贈与です。遺贈は遺贈者の一方的な意思を遺言に残すだけでよいのに対し、死因贈与は贈与者と受贈者の両者の間で合意がなされている必要があります。

死因贈与には「負担付き死因贈与」というものがあり、贈与の条件として何らかの義務(例.生前の身の回り世話)を課すことができます。この場合、義務が契約通りに果たされている場合は契約の撤回ができません。遺贈であれば、遺言を書き直すことで内容を変更することができます。

他にも、遺贈の場合は、受遺者が法定相続人であれば不動産所得税や登録免許税が軽減される反面、死因贈与の場合は一律で税額が決まっているため、贈与を受けるのが法定相続人であっても税制上の優遇を受けることができないなどの相違があります。

相続遺贈死因贈与
遺産を
受け取る人 
法定相続人遺言者が指定した受遺者
(相続人以外の第三者も可)
贈与契約に合意した受遺者
(相続人以外の第三者も可)
手続きの方法特別な手続き
なし
遺言に遺贈する旨を
記載する
生前に贈与契約を
結んでおく

遺贈寄付における課税関係

受遺者に対する課税

寄付先が個人である場合には、当該個人に対して相続税が課税されます。他方で寄付先が法人である場合には、当該法人に対して法人税が課税されます(一部、非課税特例があります)。

遺贈における遺贈者の課税関係:

受遺者受遺者の課税関係
個人 相続税課税 
法人法人税課税(公益法人等に一部非課税特例あり。租税特別措置法40条)

贈者・相続人に対する課税

金銭を遺贈した場合には、遺贈者(およびその相続人)には課税されません(ただし、相続人に対する遺贈の場合には、当該相続人には受遺者として相続税が課税されます)。

他方で、不動産・有価証券等の譲渡所得の対象となる財産を法人に遺贈した場合において、含み益(不動産等の時価-不動産等の取得費)があるときは、遺贈者に対してみなし譲渡所得税が課税されますので、実質的には相続人に納税義務が生じます。

不動産等を法人に特定遺贈した場合、特定遺贈の受遺者はみなし譲渡所得税の納税義務を負わず、遺贈者の相続人が納税義務を負いますが、不動産を法人に包括遺贈した場合には、包括受遺者は被相続人の債務を承継するため、包括受遺者も遺贈者の相続人とともにみなし譲渡所得税の納税義務を負うことになります。

また、不動産等を個人に遺贈した場合には、含み益があっても、遺贈者に対するみなし譲渡所得税は発生しません。

遺産の金額が大きい場合には相続税も多額になりますので、第三者に遺贈を行って相続人が相続する遺産の金額を減らすことで、間接的に相続税を減少できることになります。そのため、相続税対策として遺贈を検討される方もいらっしゃいます。

遺贈における遺贈者の課税関係:

受遺者 対象物含み益遺贈者の課税関係遺贈の種類申告・納税義務
法人金銭なし課税なし
不動産・有価証券等なし
ありみなし譲渡所得課税あり
(遺贈者=被相続人の
準確定申告対象)
特定遺贈相続人が継承
(特定受遺者は承継しない)
包括遺贈包括受遺者と相続人が
共同で承継
個人受遺者が個人の場合、対象物に含み益があっても、遺贈者の取得日・取得価額を引き継がせることで、
遺贈者に対するみなし譲渡所得課税はない。

遺贈寄付の方法と注意点

遺留分との関係

遺贈寄付を行う時に気を付けたいのが「遺留分」です。遺留分とは、一定の法定相続人に保障されている最低限の相続分です。例えば、被相続人の配偶者であれば、遺産の1/4について遺留分を保有しています。

もし、故人が全財産を特定の団体に遺贈するという遺言を残していても、遺留分を認められている法定相続人は受遺者である団体に対して、遺留分に相当する金銭を支払うよう請求することができます(遺留分侵害請求)。その場合、受遺者の団体は遺留分侵害請求を行った相続人に対して、遺留分に相当する金額を支払う必要が生じ、団体が受け取る寄付額はその分減少します。

遺贈によって、無用なトラブルを発生させては本末転倒ですので、遺贈を検討される場合には、遺留分権者の遺留分を侵害しないような遺贈にする、遺贈を行うことについて遺留分権者と協議しておく等の対策が重要です。

遺贈の方法

遺贈は遺言によって行う必要があります。

遺言には、「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があります。自筆証書遺言の場合、必要な様式を満たしていないと無効になり、また遺言書の死亡後に家庭裁判所による検認手続を経なければ遺言内容を実現できないなど、デメリットがあるため、基本的にはトラブルの少ない「公正証書遺言」による方法が適切です。

円滑に遺贈寄付を行うには法的知識が必要ですので、遺贈寄付を検討する場合、弁護士や司法書士などの専門家に相談してみるのがよいでしょう。

遺贈寄付をお考えならワールド・ビジョン・ジャパンへ

遺贈寄付をお考えなら、遺贈先としてワールド・ビジョン・ジャパンをぜひご検討ください。ご寄付いただいたご遺産は、世界の子どもたちが夢と希望を持ち、将来を切り拓けるよう、様々な支援事業のために有効活用させていただきます。

また、「子どもたちの教育のための学校を建設したい」、「家族で訪れた思い出の地の子どもたちを助けたい」などのご希望がございましたら、ぜひご相談ください。ご遺贈者一人ひとりの想いを叶えるにふさわしい、カスタムメイドの支援をご提案いたします。遺贈された方やご家族のお名前を、支援地にプレート等の形で残すこともできます。

あなたの大切な財産を世界の子どもたちのために役立たせるために、ぜひワールド・ビジョン・ジャパンにお手伝いをさせてください。遺贈についてのパンフレットもご用意しています。ご相談はすべて無料です。まずは、お気軽にお問合せください。

ワールド・ビジョン・ジャパン 法人・特別ドナー課
TEL:03-5334-5351(平日11:00~15:00)
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次回(2020年10月公開予定)は相続財産の寄付についての記事をお届けします。

※この記事は、2020年8月に作成しています。諸法令は随時改正される場合がありますので、最新の情報をご確認ください。

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