南スーダン内戦化から1年 ―現地で続く、最も弱い人々への支援

2014.12.15

1年経った今も、内戦は終わっていません

南スーダン国内の避難民キャンプ。侵入者を防ぐため、有刺鉄線で囲まれている
南スーダン国内の避難民キャンプ。侵入者を防ぐため、有刺鉄線で囲まれている

世界で一番若い独立国南スーダン共和国は、昨年12月15日、首都ジュバで始まった軍部内部での衝突から、各地に戦闘が飛び火し、事実上の内戦状態に陥りました。特に、油田を持つ3州(ユニティ州、ジョングレイ州、アッパーナイル州)は国の経済を支える要所でもあるため、政府軍と反政府軍の激戦が繰り返され、多くの人が命を落としました。

1年が経過した現在も、和平交渉の決着はつかず、これまでに3回停戦合意が調印されたものの、いずれも失敗に終わっています。

子どもたちを取り巻く現状

避難民キャンプの様子。安全できれいな水への確保が喫緊の課題
避難民キャンプの様子。安全できれいな水への確保が喫緊の課題

この事態に、南スーダン人口の3分の1以上に当たる380万人が食糧などの人道支援を必要とする状況にあります。また、約200万人が住む家を追われ、このうち約48万人が隣国(エチオピア、ケニア、ウガンダ、スーダン)に逃れています。

南スーダン国内では、国内避難民の増加に避難所などの整備が追いついていません。避難所は衛生環境が悪く、雨期に入った5月以降は全国的にコレラの感染が広がり、多くの幼い命が失われました。避難生活を余儀なくされている人の大半は18歳以下の子どもたち。家族やコミュニティの保護機能が失われたために女性や子どもに対する性暴力被害が多く報告されており、教育の機会もはく奪されたままです。

戦闘の激しかった、アッパーナイル州の州都マラカルの様子
戦闘の激しかった、アッパーナイル州の州都マラカルの様子

WVが行った聞き取り調査によると、避難している子どもたちの多くが、国の将来に恐れを抱いています。今避難している場所が再び戦火に巻き込まれるのではないかという不安と恐怖の中、おびえながら避難生活しています。あらゆる危険から子どもたちを守るためには、一刻も早く現在の紛争を停止し、国の再建に取り組むことが不可欠です。

※南スーダンの子どもたちの現状がレポートになりました。
詳細はこちらから(英文)

WVJの支援①:安全な水にアクセスできるように

設置された水道で清潔な水を汲む子どもたち
設置された水道で清潔な水を汲む子どもたち

ワールド・ビジョン・ジャパンは、2012年から南スーダンで水・衛生事業などを実施してきました。内戦化後も、ジャパン・プラットフォームの助成や皆さまからの募金により、①~③の事業を実施しました。

内戦化直後、信頼関係を築いていた地元政府やコミュニティからの支援要請を受け、人々が最もはじめに必要とする水・衛生緊急支援物資事業を実施。戦闘が最も激しかったアッパーナイル州の州都マラカルからの避難民と受け入れ先の地域住民、約3万人に対し、浄水フィルター、浄水剤、バケツなどを配布しました。事業開始当時は、激しい戦闘が事業の進捗を妨げましたが、一瞬の収束の間に物資を届けることができ、コレラ等の蔓延を抑えることができました。(2014年2~6月)

WVJの支援②:子どもたちを守るために

様々なリスクについて授業を受ける子どもたち
様々なリスクについて授業を受ける子どもたち

その後6~9月には、同じく戦闘の激しかったユニティ州から避難した子どもたちの保護事業を実施しました。

銃撃戦や身近な人の死を経験した子どもたちは深刻な精神的ダメージを抱えている場合が多いため、子どもたちが安心して自由に過ごせる場所「チャイルド・フレンドリー・スペース」を3カ所設置。毎日平均600人の子どもたちが利用しました。同時に、子どもたちを取り巻くリスク(様々な暴力、武装勢力からの勧誘、野生動物からの攻撃など)からの保護や、14本の井戸の修復などを実施しました。

WVJの支援③:エチオピアで難民として暮らす人々のために

エチオピアの難民キャンプ。ビニールや草で作られたテントが並ぶ
エチオピアの難民キャンプ。ビニールや草で作られたテントが並ぶ

2014年8月から現在にかけては、エチオピアに避難した南スーダン難民の支援を実施しています。

約20万人に膨れ上がった難民のうち、6~7割が18歳以下の子どもたち。上述のようなリスクにさらされている子どもたち約3,000人に対し、生命を守り、生きるための技能を身に付けることができるよう、学習環境の整備、教師の雇用、学用品の配布などを実施しています。

最も弱い人々へ支援を届けます

エチオピアの難民キャンプにて。厳しい環境にあっても、子どもたちは懸命に生きている
エチオピアの難民キャンプにて。厳しい環境にあっても、子どもたちは懸命に生きている

今年5月、事業準備のため、中村ゆきスタッフがエチオピアの難民キャンプを訪れました。「難民が急増する中で、やらなければならないことが山ほどあり、それが日を追って増えていきました。資金や時間がどれだけあっても足りませんでした」と語る一方、「もっとも内戦の犠牲となり、苦しんでいるのは子どもたち。これからも、子どもの生きる環境が少しでも良くなる支援を届けたいと思っています」と語りました。

ワールド・ビジョンは今後も、南スーダンの人々に寄り添った支援を継続します。

南スーダン緊急支援募金へのご協力をこちらからお願いしています。