「子どもの権利条約」25周年 記念連載④~生きる権利~

2014.12.11

栄養が足りず「生きる権利」が脅かされている子ども(ソマリランド)
栄養が足りず「生きる権利」が脅かされている子ども(ソマリランド)

子どもの権利条約では、「生きる権利」「守られる権利」「育つ権利」「参加する権利」の4つを、子どもたちが持つ基本的な権利の柱としています。その中でも、「生きる権利」はもっとも基本となる権利です。

子どもの権利条約第24条では、国家の果たす義務として、乳幼児の死亡率削減や、子どもや母親への栄養ある食物の提供など、健康や医療に関する子どもたちの権利に対する責任を規定し、「生きる権利」を守ろうとしています。

「生きる権利」に強く影響しているのが、子どもたちの栄養状態です。

静かな危機

命をとりとめるため、補給食で支援(ソマリランド)
命をとりとめるため、補給食で支援(ソマリランド)

世界では年間630万人の子どもが、5歳の誕生日を迎える前に命を落としていますが、その半数近くに、栄養不良が関係していると言われています。

さらに、世界の5歳未満の子どもの4分の1は慢性的な栄養不良により健やかな発育が妨げられていて、身体面だけでなく、脳や認知能力の発達など、将来にわたる深刻な影響を受けています。

また、妊娠しているお母さんの栄養不良は、お母さん自身の健康、そして、元気な赤ちゃんの誕生に悪影響をもたらします。

日本をはじめとする国際社会が緊急措置を採ったエボラ出血熱による死者は6,388人と発表されていますが(12月11日、世界保健機関(WHO)発表)、実は、毎日8,000人以上の子どもたちが栄養不良を理由に命を落としているのです。

しかし、そのような状況には中々注目が集まらないことから、栄養不良は静かな危機とも呼ばれています。

栄養改善を通して「生きる権利」を守るために

「命が助かったドリサクには、将来、学校の先生になってほしい」とお母さん
「命が助かったドリサクには、将来、学校の先生になってほしい」とお母さん

<支援事業を通して>

ワールド・ビジョンは、子どもたちの栄養改善のため、危機にある命をつなぐ緊急人道支援と、チャイルド・スポンサーシップによる中長期的な開発援助を行っています。

緊急支援の多くはWFP(国連世界食糧計画)と連携して行っています。ソマリランドのバキ地区で暮らす、ドリサクくん(写真中央)の家族は、干ばつによって家畜を全部失くしたために、収入の手段が絶たれ、食料の入手ができなくなりました。一度は深刻な栄養不良に陥ったドリサクくんですが、ワールド・ビジョンの支援で、補給食などを摂取し、標準に近い栄養状態になることができました。

<アドボカシーを通して>
アドボカシーによる政策提言でも、栄養改善に向けた取り組みに力を入れ、2016年以降の世界の開発目標となるポスト2015開発アジェンダの中で、栄養の課題が確実に取り上げられるよう訴えています。

また、2014年11月には、他のNGOと共同で「第二回栄養ラウンドテーブル」という機会を持ち、日本政府・国際機関・民間企業・研究機関・NGOなど、多様な関係者が国際的な栄養改善に向けた取り組みを共有、議論しました。

今後も、子どもたちの「生きる権利」が守られるよう、支援事業やアドボカシーなど様々な働きを通じて、子どもたちの栄養改善に取り組んでいきます。