母子の栄養改善のために、栄養に関する国家戦略の策定を

(2017.1.27)

ワールド・ビジョン・ジャパンでは、日本政府に対し、栄養改善のための国家戦略の策定と資金拠出の拡大を求めて政策提言活動を行っています。なぜそうした活動が必要なのでしょうか?

栄養改善はなぜ必要か

世界では、年間590万人もの5歳未満児が命を落とし、その約半数に栄養不良が関係しています。
栄養不良には栄養の偏りによる健康問題も含まれており、途上国だけの課題ではありません。
また社会的・経済的影響も大きく、アジアとアフリカでは栄養不良がもたらす負荷により毎年GDPの11%が失われています。

栄養改善は命の問題であると同時に、広く社会の問題でもあるのです。

世界の栄養目標と現状

ワールド・ビジョン・ジャパンが内外の大学と連携して行った栄養調査について、国際母子栄養改善議員連盟で報告する今西スタッフ(右から2人目)(2016年11月18日)
ワールド・ビジョン・ジャパンが内外の大学と連携して行った栄養調査について、国際母子栄養改善議員連盟で報告する今西スタッフ(右から2人目)(2016年11月18日)
世界には栄養改善へ向けた明確な目標があり、2030年までの栄養不良の解消が謳われています。

しかし実際には栄養不良の問題は拡大の一途をたどっており、必要な資金も不足しているため、このままでは栄養改善の目標を達成できるのは2030年どころか2130年になるだろうとまで言われています。

日本では、2016年のG7伊勢志摩サミットで食料安全保障と栄養の課題が取り上げられ、日本政府も関連する戦略やイニシアティブを発表していますが、国としての包括的な栄養戦略は存在していません。栄養分野を包括する国家戦略を策定し、栄養改善のための資金拠出を増やすことにより、様々な取り組みを連携させて実施の効果を高め、投資効果を上げることが可能になるのです。

栄養に関する国家戦略の策定へ向けて

第5回国際母子栄養改善議員連盟にて「国際栄養課題に関する国家戦略(案)」が議員連盟副会長の逢沢一郎衆議院議員(左)より柴山内閣総理大臣補佐官(右)に提出された(2016年11月18日)
「国際栄養課題に関する国家戦略(案)」が議員連盟副会長の逢沢一郎衆議院議員(左)より柴山内閣総理大臣補佐官(右)に提出された(2016年11月18日 第5回国際母子栄養改善議員連盟にて
ワールド・ビジョンは栄養改善の大切さを広く訴えるとともに、包括的な国家戦略の策定を促すため、幅広い関係者との協働を進めています。

2015年7月には他の団体と協働して国際母子栄養改善議員連盟の設立に携わり、国会議員とともに国家戦略の策定と、栄養改善に対する資金拠出の重要性を訴えました。2016年には議員連盟における、国際機関・省庁・企業・NGO・学識者が参加するタスクフォースを通じて栄養改善国家戦略案を作成しました。

この戦略案は、2016年11月の第5回国際母子栄養改善議員連盟会合にて、「国際栄養課題に関する国家戦略(案)」として政府へ提出されました。

「国際栄養課題に関する国家戦略(案)」の概要pdfアイコン
「国際栄養課題に関する国家戦略(案)」の全文pdfアイコン


今後、国家戦略の策定を実現させ効果的な政策の実施へとつなげていくには、栄養改善に対する内外の関心と理解が鍵となります。

たとえば2013年から夏季オリンピック開催地で実施されている国際会議「成長のための栄養(Nutrition for Growth)」を2020年の東京オリンピックでも開催することができれば、栄養改善へ向けた国内外の気運を高める大きな機会となるでしょう。

栄養改善を実現するには、政府、国際機関、市民社会、企業、学識者、そして地域社会が連携して取り組む必要があります。
ワールド・ビジョン・ジャパンは、今後も様々な立場の方々と協働し、世界の母子の栄養改善に向けてたゆみない取り組みを続けていきます。