【伊勢志摩サミット】ワールド・ビジョンが訴える4つのこと

(2016.05.24)

世界のリーダーが決める、子どもたちの未来

5月26~27日、三重県で開催される主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)。日、米、英、仏、独、伊、加の主要7カ国(G7)に加え、欧州理事会議長と欧州委員会委員長が参加し、世界の様々な問題について話し合います。グローバル化が進み問題が複雑化する今日、世界が協調してより良い方向に進むためにも、G7のリーダーたちが新しい方向性を定め、問題解決のために迅速に行動することは大変重要です。

特に、伊勢志摩サミットは、国際社会が2030年までに達成すべきゴールを定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」採択後、初めて開催されるサミットです。今回のサミットの主要議題にはSDGsと重なる部分もあり、参加国がこれらについて強いリーダーシップを発揮することが期待されます。

バングラデシュの子どもたち
学校で遊ぶ子どもたち(バングラデシュ)

「G7伊勢志摩進捗報告書」に対する評価

ところで、毎年開催されるサミットでの合意事項は、その後、進展しているのでしょうか?G7は、サミットの首脳宣言における開発および開発関連コミットメントの進捗を評価する包括的な報告書を、3年ごとに発表しています。今回とりまとめられた伊勢志摩進捗報告書は、2002年のカナナスキス・サミットから2015年のエルマウ・サミットまでになされた、援助と援助効果、経済開発、保健、水と衛生等、10分野におけるコミットメントについて評価しています(外部リンク外務省HPより)。

その内容はSDGsを十分に意識したものとなっており、SDGsを含む「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の進展に貢献することを明確に宣言しています。ワールド・ビジョン・ジャパンは、G7各国のSDGsに対する貢献姿勢を評価します。

一方、保健に関する取り組みには疑問が残ります。伊勢志摩進捗報告書によると、2010年のムスコカサミットにおける「妊産婦、新生児及び乳幼児の健康にかかる二国間資金援助のコミットメントを完全に達成した」にもかかわらず、2015年を達成期限としていたMDGsでは、予防可能な乳幼児死亡率の削減という目標は未達成に終わりました。乳幼児死亡率自体は減少しているものの、国内格差・地域間格差という形で乳幼児死亡は残っており、サハラ以南アフリカや紛争の影響下にある地域などの特に厳しい環境にある子どもたちが、予防可能な要因で命を落とし続けています。

この事実は何を示しているのでしょうか。すなわち、私たちは、SDGsで目指す「2030 年までに、新生児及び5 歳未満児の予防可能な死亡を根絶する(SDGs3.2)」ためには、より戦略的に投資を行っていく必要があるということです。そのためにも、G7各国には、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現に向けた投資と、乳幼児死亡要因の約半数となる栄養改善に対する政治的意思の表明とさらなる資金的投資が求められます。

ザンビアの子ども
ザンビアの子ども

伊勢志摩サミットへの提言

ワールド・ビジョンは、子どもを最優先にした開発援助、緊急人道支援、アドボカシーに取り組むNGOとして、伊勢志摩サミットで交わされる合意の中心に、世界のもっとも脆弱な立場にある子どもたちが据えられるよう、協働団体とともに以下4つのことを訴えます。


1. 保健
日本政府が「保健」を本サミットの主要優先事項に位置づけていることを、歓迎します。その上で、日本政府が進めるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)によって女性や子ども、若者の健康状態が改善されるよう明確な合意に達すること、そして、保健関連のSDGsの実行プランと進捗状況の公開がされるようサポートすること、等をG7各国に求めます。

※「G7サミット保健NGOネットワーク」と協働し作成した提言書はこちら

親子
元気な赤ちゃんを抱くお母さん(フィリピン)

2. 食料安全保障と栄養
エルマウサミットでは、栄養と飢餓について、歓迎すべき野心的な合意がなされました。「持続可能な開発のための2030年アジェンダ」達成に向けて動き出す今年、飢餓や栄養不良に苦しむ子どもたちをなくすため、G7は合意の実現に向けた具体的なプランについて説明することを求めます。

※「Global Poverty Project」「RESULTS」「Save the Children」と協働し作成した提言書はこちら(英語)



3. シリア危機
シリア紛争開始から5年、昨今の休戦に向けた動きには希望の光も見えますが、引き続きリスクと挑戦を伴います。ワールド・ビジョンは、この紛争に関係するすべての団体が和平に向けた努力を続けることを求めます。また、紛争によって荒廃した地域の再生に向けた投資や、難民としてヨーロッパをさまよう子どもたちの保護についても、G7が国連や市民社会、各国政府と協働することを強く望みます。

※「シリアの和平実現のために活動するネットワーク」と協働し作成した提言書はこちら



4. 責任あるサプライチェーン
ワールド・ビジョンは、子ども支援の団体として、約1億6,800万人(世界の子どもの約11%)が児童労働に従事しているという事実について深く憂慮するとともに、G7には、国連のガイドラインに則った各国の行動計画を発表することを求めます。また、サプライチェーンの透明化等を実現するため、実践的な政策を実行することを求めます。

※「CSOネットワーク」「アジア・太平洋人権情報センター」「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」と協働し作成した提言書はこちら

シリアの子ども
難民キャンプに暮らすシリア人の子ども(レバノン)
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