世界の最も危険な地域にいる子どもたちの未来を守る~命を守り、取り戻し、未来を築く~

(2022.05.27)



故郷を追われる難民・国内避難民の子どもたち

8,400万人。紛争や迫害により故郷を追われた人々の数です(2021年11月時点)。この数字は、過去最多で、2011年以降増加の一途をたどっています。過去10年でおよそ2倍に増えました。今年2月に発生したウクライナ危機を受けて、さらに増加することが予測されます。

避難を強いられている人々のうち、18歳未満の子どもが、およそ4割を占めています。ほんの一瞬で、それまでの幸せな暮らしを奪われてしまった子どもたち。紛争の地に生まれ、故郷を追われ難民となり、平和な暮らしが何かさえ分からない子どもたちもいます。

毎年6月20日は、「世界難民の日」です。難民の保護と支援に対する関心を高め、世界各地で続けられている難民支援活動への理解を深めるため、2000年12月国連総会で制定されました。



ウクライナ危機

2人に1人の子どもたちが避難を強いられています

2022年2月のウクライナ危機発生後、国境を越え避難した難民は510万人、国内で避難を強いられている国内避難民は770万人に上ります(2022年4月20日時点)。

ウクライナの子どもの総人口750万人のうち、半数を超える450万人が避難を強いられているという国連児童基金(UNICEF)からの報告によれば、子どもたちの2人に1人以上が国内外で避難生活を送っているということが分かります。これは、第2次世界大戦後、最も深刻な速さと規模で子どもたちが故郷を追われているという現状を表しています。

それまでの平穏な暮らしを突然奪われ、家族や友だちと引き離され、心に深い傷を負っている子どもたちが大勢います。中には、緊張状態で長時間かけて移動し疲れ切っている子どもや、満足な食事をとることができず空腹状態にある子どももいます。また、保護者に伴われず一人で国境を越えてきた子どもたちも少なくありません。また、子どもの難民・国内避難民の数が増え続けることによって、人身取引を含む虐待、暴力、搾取のリスクにさらされている子どもの数もまた、増え続けています。


ウクライナの子どもたちを守るために、ワールド・ビジョンが届ける支援

ワールド・ビジョンは、ウクライナ危機発生直後から緊急支援チームを編成し、ウクライナ国内および周辺国にて活動を続けています。避難所や国境の仮設テントなどで、食料や衛生キットを含む生活物資の配布や、子どもたちが安心して安全に過ごせる遊びと学びの場「チャイルド・フレンドリー・スペース」を提供しています。また、ワールド・ビジョンの子どもの保護の専門家が、ルーマニアの避難所で活動するボランティアスタッフを対象に、子どもの保護に関する啓発セッションを行いました。避難している人々が人身取引などのリスクから自分自身を守るためにどのようなサポートができるのか、ボランティアスタッフが理解を深めることで、子どもたちの未来を守ります。

今後も、刻一刻と変わるウクライナの難民・国内避難民の状況に柔軟に対応し、他団体と調整しながら最も必要とされている支援を見極め、届けていきます。

配布のための食料をトラックに積み込むワールド・ビジョンのスタッフ
配布のための食料をトラックに積み込むワールド・ビジョンのスタッフ

シリア・南スーダン~何年も続く紛争で、平和な時代を知らない子どもたち~

シリア危機

2011年3月の危機発生から11年が経過した現在も、シリア人口約1,750万人のうち、570万人以上が難民として国外に避難しています。そしてシリア難民のおよそ半分は18歳未満の子どもたちです。

シリア隣国のレバノンでは、人口約680万人の国土に、シリア難民約84万人※が避難しています。もともと経済状況が悪化していたところに、多くの難民を受け入れており、食料品や家賃等の物価が高騰し、人々の生活の様々な面に、大きな影響を及ぼしています。

難民世帯には就労許可がなく、貯蓄を取り崩したり、日雇い仕事でやりくりしています。しかし、長引く避難生活で貯蓄は底をつき、コロナ禍でのロックダウン(都市封鎖)、行動制限等に伴う景気後退で仕事も減っています。家計を支えるため、廃材集めや路上の物売りなどに子どもを働きに出したり、幼いうちに嫁がせたりという選択を余儀なくされる難民家庭も増えています。

ワールド・ビジョンでは、難民・避難民キャンプでの水・衛生環境の改善や、避難中に失った学びを取り戻すための補習教育の取り組み等を進めています。また、パートナー団体と連携して、生計安定のための生活資金や生活必需品の提供を進めています。

※UNHCR OPERATIONAL DATA PORTAL 2022年3月末

レバノンにあるベッカー高原の難民キャンプの様子
レバノンにあるベッカー高原の難民キャンプの様子

南スーダン紛争

2011年に独立した最も新しい国、南スーダン。その歴史をさかのぼると、1956年にイギリス・エジプトの共同統治からスーダンとして独立した際の、南北の部族対立から内戦が始まっています。その後、半世紀以上も、断続的に紛争が続きました。南スーダンとして独立後も武力衝突は続き、160万人以上が国内で避難し、218万人以上が難民として国外に流出しています。今も情勢は安定せず、子どもも大人も、平和を知らない人がほとんどです。

国内にとどまる人も、戦闘から逃れるために住まいを転々とするため、子どもたちが学校に安定して通うことも容易ではありません。

また、もともと肥沃な土地にもかかわらず、戦闘地域では農作物の作付けや収穫もできず、気候変動の影響で大雨や干ばつも重なり、食糧危機にも直面しています。

難民の多くは近隣のウガンダやスーダン、エチオピアなどに避難しています。避難の道中で家族とはぐれる子どもたちも多く、人身取引などの危険と隣り合わせの日々を送っています。

最も多くの難民を受け入れているウガンダには、難民居住地があります。居住地に暮らす人々は土地と家を割り当てられますが、国際社会の相対的な関心の低下もあって人道支援は不足しがちで、厳しい生活が続いています。

ワールド・ビジョンでは、難民・避難民への食糧支援や、保護者を失った子どもたちを保護しています。また、学びを取り戻すための補習教育の取り組み等が進められています。

南スーダンでの放課後の補習授業の様子
南スーダンでの放課後の補習授業の様子


支援を受けた人々の喜びの声

  • 9歳と3歳の娘とともにウクライナから国外へ避難した母親、アナさん

ハルキウから逃げてきました。紛争が始まってから3日間、地下室で過ごしましたが、爆撃が家の近くまで来たので、急いで逃げました。 爆撃を間近に経験し、避難する子どもたちの恐怖と緊張は極限に達しています。

ワールド・ビジョンの運営するチャイルド・フレンドリー・スペースで、お絵かきしながら休憩することができて、ようやく娘たちに笑顔が戻りました。

  • レバノンで暮らすシリア難民のノアちゃん(10歳)

シリアで暮らしていた6歳のころに近所の家が爆撃されたのを覚えています。レバノンに避難してきましたが、非公認の難民キャンプでの生活はとても苦しくて、学校に通うことは安全な暮らしができる人の特権だと思っていました。

でもワールド・ビジョンの教育プログラムに参加するようになり、私は家族の中ではじめて教育を受けることができました。知らないことを学ぶのはとても楽しいし、将来は算数の先生になりたいと思えるようになりました。

  • 南スーダンのアーベンちゃん(15歳)

9歳のころ、戦闘から逃れるために、長い道のりを数日間、隣の州まで歩いたのを今も覚えています。道中で子どもたちが病気や空腹で死んでいくのを目の当たりにしました。避難先で小学校に通い始めましたが、紛争で目にしたものの影響で授業に集中できず、勉強に遅れをとるようになりました。

そこで、ワールド・ビジョンの補習授業のプログラムに参加すると、少人数制のおかげで、わからないこともきちんと質問できるようになり、学校の授業についていけるようになりました。学ぶ楽しさを知り、将来は医師になるという目標もできました。地域のお母さんが処方を理解せずに、子どもたちに薬を過剰に投与しているのを知ったことがきっかけです。


紛争から避難する子どもたちに迫る脅威。子どもたちを守ってください

ウクライナ、シリア、アフガニスタン、南スーダン...世界中で勃発する武力衝突や長期化する紛争が原因で家を追われている子どもたちが大勢います。子どもたちの今、そして、未来を奪うこの事態に対応し、ワールド・ビジョンは最前線で活動を続けています。

命を守り、回復を支え、未来を築く

子どもたちの命を守るために、ワールド・ビジョンは、避難用のシェルター運営、水・食糧の提供、心理的ケア等、今、必要とされる支援を届けています。また、健やかな成長のために子どもらしさを取り戻し、未来を築けるよう、教育や生計向上等の長期的な取り組みも進めています。

紛争の影響下で、子どもたちに「子ども時代」を取り戻すために、難民支援募金にご協力ください。
また、長期化する避難生活を支えるために、プロジェクト・サポーター(毎月の支援)として、継続的な支援にご参加いただける方を募集しています。刻々と変わる状況に応じて、今、必要な支援を届けるために。子どもたちの命と未来を救ってください。

ワールド・ビジョン・ジャパンでは、ウクライナ危機に対応するために、新たに1000人のサポーターを募集するキャンペーンを実施しています。サポーターとして、紛争下の子どもたちの未来を築く活動を応援してください。



"何もかも"はできなくとも、
"何か"はきっとできる

ワールド・ビジョンの創設者
ボブ・ピアスの言葉です。

今支援を必要としている
世界中の難民・避難民の数は膨大で、
とてもひとりでは抱えきれませんが、
一人ひとりが今できることを始めれば、
きっと笑顔を取り戻すことができる
子どもたちがいます。

私たちは、世界の最も危険な地域で、
懸命に生きる子どもたちの
心の強さを知っています。
子どもたちの心が、そして未来が、
失われることがないよう
支えることができるのは、
私たちです。

プロジェクト・サポーターに参加して、
子どもたちの命と未来を救ってください。

ご寄付は寄付金控除等の対象となります。