ウクライナ危機から3カ月、学校教育の中断は子どもに長期的な影響をもたらしています

(2022.05.23)

世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョンは、3カ月前のウクライナ危機発生以来、3分の2以上の子どもたちが家を追われ、通常の学校教育が著しく妨げられていることを警告します。

【概要】

  • ウクライナ危機発生から3カ月足らずで、ウクライナ難民が600万人に到達しました *1
  • 学校の閉鎖や教育施設への攻撃により、360万人の子どもたちが影響を受けています *2
  • ウクライナ国内で、基本的な食料と衛生用品のニーズが急速に高まっています
ウクライナにおける3カ月間の政情不安は、数百万人に避難生活を強い、学校の授業をオンライン化させました。このため現地では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる教育の混乱が、さらに拡大しています。教育の中断は子どもたちの成長に長期的な影響を与える可能性があり、早急に対処しなければ、回復には数年かかる可能性があります。特に、低年齢の子どもたちにとっては、基礎的な生活スキルを身につける機会を失う可能性があり、大きな問題です。

3カ月間教育を受けられなかった場合、子どもたちのテストの平均点は最大で11%低下する可能性があります。*3ウクライナの子どもたちは難民となり、暴力を目の当たりにすることで、さらなるストレスと精神的苦痛を抱えているため、状況はさらに深刻です。夏休みに入ると、それまでオンライン授業で得られていたわずかな安心感さえもなくなり、心のケアのニーズが急拡大するのではないかと懸念されています。

さらに、教育システムから排除された期間が長ければ長いほど、子どもたちが再び教育を受けに戻ってくる可能性は低くなり、子どもたちの将来に非常に大きな影響をもたらす可能性があります。

ワールド・ビジョンの東欧地域の責任者を務めるエレノア・モンビオは、次のように語ります。
「この2年間、COVID-19のパンデミックのため、世界中の子どもたちはすでに前例のない教育の混乱に耐えています。難民の子どもたちにとって、この問題は紛争の影響でさらに悪化し、適切に対処されなければ、彼らの成長の遅れや様々な機会の損失、さらには将来の収入減等の長期的なダメージを与える可能性があります」

「また、子どもや若者は、紛争や政治的不安を取り巻く出来事に関する責任が最も小さいにもかかわらず、その影響を最も大きく受けることが多々あります。ウクライナの子どもたちが、現在進行中の紛争のトラウマから完全に立ち直ることができるようになるためには、安定した教育を受けられるようにすることが、絶対的な優先事項とみなされるべきです」

先週、ワールド・ビジョンは、難民の子どもたちとお母さんたちが、非公式ながらも教育と心理社会的支援を受けられる施設「ハッピー・バブル」を、ルーマニアのブカレストに初めて開設しました。これは、難民を受け入れるコミュニティとの持続可能なパートナーシップを基盤としており、ウクライナ難民の子どもや保護者のニーズに沿った総合的なサービスを提供するものです。


*1: UNHCR. "Ukraine Refugee Situation".外部リンク 12 May 2022.
*2: UNOCHA. "Ukraine: Situation Report, 6 May 2022".外部リンク
*3: OECD. "The Economic Impacts of Learning Losses".外部リンク September 2020



ワールド・ビジョンのウクライナ危機に対する支援活動

ワールド・ビジョンは、2022年2月24日のウクライナ危機発生直後、ルーマニアを拠点に活動を開始。現在は、ルーマニア、モルドバ、ジョージア、ウクライナ国内において、緊急物資の配布や子どもの保護等の活動を実施しています。2022年5月7日までに、子ども39,748人を含む95,777人に支援を届けています。詳しくはこちら

ワールド・ビジョンとは

キリスト教精神に基づき、貧困、紛争、災害等により困難な状況で生きる子どもたちのために活動する国際NGO。国連経済社会理事会に公認・登録され、約100カ国で活動しています。詳しくははこちら

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