世界の「保健医療格差ランキング」発表

2013.09.05

世界の「保健医療格差ランキング」発表

※ランキングは175カ国を対象にしていますが、スコア数が同点の場合は同じランキングの国が複数となるため、最下位の順位は、176位ではなく、147位となっています。

ワールド・ビジョンは、9月下旬に行われる国連総会を前に、世界の「保健医療格差ランキング」を発表しました。「保健医療格差ランキング」は、健康を守るための保健サービス(疾病の予防や治療を含む)に最善のアクセスを得ている「ヘルスリッチ」と、保健医療施設等の有無、地理的条件、個人で負担しなければならない費用の大きさなどの要因により、保健サービスへのアクセスが限られている「ヘルスプア」の間の格差を明らかにするため、176カ国のデータをもとに作成されたものです。

<結果ハイライト>
・保健医療格差の少ない国トップ10のうち9カ国がヨーロッパ諸国。
・保健医療格差の大きい国ワースト10のうち7カ国はサブ・サハラ地域のアフリカ諸国。
・米国は46位で、"経済力がある国=「ヘルスプア」が少ない国"ではないことも明らかに。
日本は、本ランキングを算出するために用いられた平均余命格差指標で4位、保健医療費個人負担指標で32位、
早すぎない妊娠・出産格差指標で8位、保健医療従事者数格差指標で83位で、全体としては17位

保健医療格差ランキングの意義

クリニックで医師の診察を受ける子ども(モザンビーク)
クリニックで医師の診察を受ける子ども(モザンビーク)

子ども支援を行う国際NGOとして、ワールド・ビジョンは、2015年を達成期限としている8項目のミレニアム開発目標(MDGs)の中でも、特に「MDG4:5歳未満の子どもの死亡率を1990年の3分の1へ下げる」という目標実現のために様々な取り組みを行ってきています。各国政府、国連機関、NGO等、多くの関係者の努力の結果として、1990年には1200万人だった5歳未満児死亡数が、2011年には4割以上減少して690万人となり、大きな成果が上がっていることは確かです。

しかし、MDGsの達成期限まで800日余りとなった今、大きな成果の一方で、なぜ、未だに19,000人の子どもたちが毎日命を落としており、「MDG4」の達成が危ぶまれているのかを冷静に見つめ、最大限の対策を講じる必要があります。

従来、世界各国の保健医療データは国全体の合計や平均値が用いられ、MDGs達成の進捗にも同様のデータが使用されています。しかし、この方法では、国内に存在する格差が隠され、もともと目標達成に手が届きやすかった人々のわずかな状況改善が国全体としての改善とみなされ、もっとも弱い立場にある人々は置き去りにされたままになる、という現状が指摘されています。

ワールド・ビジョンは、世界の保健医療格差がどのような要因でどの程度存在しているのかを明らかにし、格差を解消することなしに「MDG4」で掲げられているの乳幼児死亡率の削減は実現しえないという事実を喚起することを目的に、こののランキングを発表しました。

ランキングからわかること

エチオピアの母子
エチオピアの母子

すべての国に保健医療格差があります。各国内で人々がどの程度の保健サービスにアクセスできるかは、各人が 生まれ、育ち、生活する環境、職業や、年齢に左右されますが、同時に、政府による保健医療支出の多寡や、保健従事者育成のための投資などによっても影響を受け、豊かな国="ヘルスプアが少ない国"、という結果にはなりません。

一方、多くの貧困国は保健医療格差がより大きい傾向があることも事実で、「MDG4」達成のためには、各国の「もっとも弱い立場にある子どもたち」の状況を改善させることが不可欠です。

もっとも弱い立場にある人々のデータほど入手不可能なことが多いことも明らかになりました。今後、保健医療格差解消のための取組を本格化させるためには、各国における子どもの出生登録を確実にすること、草の根レベルで人々がデータ収集に参加する仕組みを強化するとともに、孤児、難民・避難民、障がい児、人身取引や児童労働を強いられている子どもたちなど、地域社会でのデータ収集から漏れてしまいがちな子どもたちの情報を救い上げ、必要な支援を届けることが求められています。

命の木プロジェクト~まず、5才までの命を~

カンボジアのラリン君は、家の近くの保健センターで健診や予防接種を受けることができます
カンボジアのラリン君は、家の近くの保健センターで健診や予防接種を受けることができます

ワールド・ビジョンは、MDG4達成を目指して、2009年から世界的なキャンペーン「Child Health Now-アクション!救えるはずの命のために」を実施しています。この一環として、日本では「命の木プロジェクト」を実施し、"世界の子どもたちに、まず5才までの命を。" と願う市民の声を、国連総会に出席する日本政府に届け、子どもたちの命を守る政策実現のための働きかけを行っています。

2015年のMDGs達成期限まで800余日となった今、また、2015年以降に世界が取り組む目標の枠組みである「ポストMDGs」策定にあたって重要な局面を迎えている今、開催される今年の国連総会。

この国連総会に向け、幼い命を守るためには、保健医療格差の存在から目を背けずに正面から取り組むことが必要であることを、世界各国のワールド・ビジョンが連携して訴えていきます。

2013年の命の木プロジェクトは終了いたしました。ご参加くださった皆さま、ありがとうございました。

参考:ランキング算出のためのデータ
①平均余命格差指標
各国の平均余命を、教育や収入の分布等と合わせて分析し、格差のために生じている平均余命の損失の大きさを順位付け、命が失われている要因に社会的格差が及ぼしている要因を反映。
②保健医療費個人負担指標
国の保健医療費支出に占める個人負担の割合。この割合が高いと、保健医療サービスを受けるための負担が大きくなり、より貧しい人々がサービスを受けられない要因となる。
③早すぎない妊娠・出産格差指標
母子の生存と健康を脅かすリスクが高い早すぎる妊娠・出産の割合を、調査対象の収入分布と合わせて分析して算出。
④保健医療従事者数格差指標
10,000人あたりの保健従事者(医師、看護師、助産師等)数を、調査対象の収入分布と合わせて考慮し算出。

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