「伊勢志摩サミット」へ向けて ~G7 エルマウ・サミットを振返って~

(2015.7.13)

G7サミットについて

来年は、日本がG7サミットの議長国となります。先日開催地が決定し、2016年5月26日、27日に、三重県志摩市賢島にて「伊勢志摩サミット」が開催されることが発表されました。また、伊勢志摩サミットに合わせて開かれる閣僚会議についても、外務大臣会合を広島市で、財務大臣会合を仙台市で開催すると発表されています。

G7(※)では、G7各国(アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、日本)が、毎年順番に議長国を務めるため、それぞれの国には7年に1回、議長の役割が回ってきます。議長を務める1年間(1月~12月)のサミットの会期中に、外務大臣会合や財務大臣会合などの閣僚会議や、市民社会によるサミットなどが開催され、会期を通じてG7諸国がリーダーシップを発揮して対応すべき地球規模課題に関する議論が行われます。G7に新興国を加えたG20の開催以降、G7に対する注目度は低下傾向にはありましたが、G20が加盟国の多さにより合意形成がなかなか出来ず、当初期待されていたような成果をもたらすことが出来ていないことなどから、G7に対する期待は徐々に盛り返しつつある状況です。

(※)1998~2013まではロシアを加えたG8として開催されています。

ワールド・ビジョンから参加したメンバー。ワールド・ビジョン・ジャパンからは柴田スタッフ(前列左から2番目)が参加
4月にドイツで開催された市民社会によるサミットに参加したワールド・ビジョンのメンバー。日本からは柴田スタッフ(左端)が参加

ドイツ エルマウ・サミット -Civil G7 Dialogueへスタッフを派遣

保健に関するワーキング・グループのメンバーと柴田スタッフ(前列左から2人目)
保健に関するワーキング・グループのメンバーと柴田スタッフ(前列左から2人目)
今年2015年のG7サミットは、6月7日、8日ドイツのエルマウで開催されました。それに先立ち、4月20日にドイツ・ベルリンで "Civil G7 Dialogue(G7市民社会対話)" が開催されました。この対話は、ドイツ政府からドイツ市民社会に対しての、「国際NGOとG7アジェンダについて議論を行う包括的な場を設けて欲しい」との申し入れに基づき実現したもので、ドイツの市民社会を中心にG7諸国から計183名が参加しました。

日本からは、JANIC(国際協力NGOセンター)の定松事務局長、ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)も加盟するNGOネットワーク「動く→動かす」から玉木氏、WVJから柴田スタッフの3名が参加しました。また、ワールド・ビジョン(WV)からは、主催国であるWVドイツのほか、WV英国からも参加しました。

"Civil G7 Dialogue"は終日プログラムで開催され、「Welcome and Introduction」「G7サミット:市民社会の期待と批判、見通し」「メルケル首相との対話」「Way forward」の4つのパネル討論と、テーマ別セッション(6テーマ:グローバル経済と財政構造、気候とエネルギー、海洋、保健、女性の経済的エンパワメント、農業と栄養)が行われました。

WVは、今年のG7に対しては、保健、特に子どもの保健に関する課題に高い関心を有していました。そのため、昨年の11月頃に立ち上げられたドイツ市民社会によるG7戦略チームの保健ワーキング・グループと連携して活動をしてきました。Civil G7 Dialogueでも、保健のテーマ別セッションに出席し、ミレニアム開発目標(MDGs)の残された課題である子どもの保健について、G7のリーダーシップの下、しっかり対応されるべきであることを訴えました。

保健テーマ別セッションには、ドイツ保健省と経済協力省からもそれぞれ参加していたほか、テーマ別セッションの中では最多となる約50名のNGO関係者が参加しており、ドイツの市民社会においても保健が最も関心が高いテーマであることが伺われました。

G7エルマウ・サミットへに対するWVの見解

定期健診に訪れた赤ちゃんとお母さん
定期健診に訪れた赤ちゃんとお母さん(カンボジア)

今年のG7での首脳宣言(コミュニケ)では、これまで続けてきた上記のような働き掛けもあり、「予防可能な子どもの死亡をなくすこと及び妊産婦の健康改善にコミットすること」などについて言及されています。

G7が対応すべき課題として、多数ある保健課題の中で、WVが様々な機会に訴えてきた子どもの保健について宣言されていること自体は歓迎すべきことです。しかしながら子どもの予防可能な死をなくすための対応策として予防接種のみしか言及されていないことは不十分であり、総合的な方策について検討・対応することが必要です。また、子どもの死亡要因の半数を占める栄養改善に向けた課題についても、5億人の飢餓や栄養不良に対応することについて宣言されていることは評価されますが、その支援が最も脆弱な子どもたちに届くか否かという点が最も重要な点となっています。これらを踏まえ、WVでは、今回の首脳宣言について、現れている症状にバンドエイドを貼っているだけと評しました(WVによるスコアカード形式の声明はこちらpdfアイコン)。

今後は、これらの宣言が宣言のみにとどまらず、実行されるか否かについて注目していくことが重要です。

来年開催される「伊勢志摩サミット」が子どもの命を守る成果をもたらすように、WVJはドイツからの学びも糧に、他の団体と協働して、政策決定者への働きかけを強めていきます。