途上国における開発援助事業の作り方
~インパクトある活動を行うためのプロセスとは~

途上国における「開発援助プロジェクト」の管理手法は、民間企業の「プロジェクト管理」手法と同じと言えます。課題を抽出し、目指すべきゴールを定め、予算を立て、スケジュールを組み、進捗を管理し、プロジェクト完了後には振り返りを行うというPDCAサイクルは、馴染み深い方も多いのではないでしょうか。インパクトのある事業を行っているかどうかは、社会貢献事業へ貴重な資金を投入するか検討する際には最も関心の高い事柄です。ここでは、過去30年以上の活動実績があるワールド・ビジョン・ジャパンがどのようにプロジェクトを管理しているのか4つのステップで紹介します。

1.課題の抽出と決定

まず、取り組むべき課題を決定します。ワールド・ビジョンでは、国連が協力を要請している2030年の国際的な開発目標であるSDGsや、各国の開発援助政策、日本政府の開発戦略方針に加え、団体の戦略に基づき注力すべき分野や地域を定めています。これら全体的な戦略と、支援地のニーズに鑑み、取り組む課題を決定します。
事業開始前には、事業地の現状を正確に把握するため、様々な調査を行います。公的機関が公表しているデータを参考にしつつ、ワールド・ビジョン独自で現地の住民へのインタビューやアンケート、ディスカッションなどを行い、現地の課題を客観的に把握します。ここでの調査結果は、後に事業の成果を把握するうえでも欠かせません。

2.事業内容と規模を決定し、ゴールまでの計画を立てる

次に、事業内容や目標を決定します。具体的には、事業を行う地域・対象人口・活動内容・活動期間と目指す成果など目標を設定し、目標達成のための計画を立てます。その後、具体的な活動内容を決め、各オフィスでの承認を経て、実際の活動を開始します。ワールド・ビジョンでは、地域の人に寄り添い住民がキャパシティを向上し、活動が終了した後にも住民に活動が引き継がれることを目標にしています。そのため、多くの場合、事業は3年~10年の期間をかけて行うことが多いです。計画時に、10年のプロジェクトであれば、約3年を1フェーズとしフェーズごとの計画も立てます。

3.活動を実施する

具体的な内容が決まり、関係者の合意が取れると実際の活動を開始します。活動開始当初は、住民や地元政府の理解を得るために関係構築を行います。また、計画時に定めた各事業分野ごとの目標達成に向け、住民の意識を変えるための啓発活動を行う場合も多くあります。例えば、保健衛生の分野では、手洗いやうがい・トイレを設置することで予防可能な病気を防ぐことができること、教育分野では、子どもたちを学校に継続的に送り出し、識字・計算能力を身に着けることで将来の選択肢を広げるために重要であることなどを伝えます。
住民が理解を深め、事業が軌道に乗るとスタッフがこれらの研修を行うのではなく、住民自身が手洗いうがいの重要性を地域の人々へ伝えるなど、活動の重要なパートナーとして共に事業を行います。トイレや道路、建物などを建設する際も、できるだけ地元で調達できる資材を用いて、住民と一緒に建設作業を行います。協働することで、建物や井戸など建設終了後も住民同士が主体的に関わり修理や管理を行うことを目指しています。

4.評価と報告

計画や目標に対し、成果・進捗を把握し見直しを行うため、半年・1年毎に振り返りを行います。日本事務所のスタッフは、現地事務所からの報告を基に進捗を確認するために、必要に応じて現地を訪問します。ワールド・ビジョンの評価担当のスペシャリストと協力して、当初と比べどれだけ目標を達成しているのか把握します。評価では、外部コンサルタントへ調査を依頼したり、大学などの研究機関と協力したりする場合もあります。この状況把握・評価を行ったうえで、ご支援者の皆さまへ年に一度報告書をお送りしています。活動のインパクトが伝わりやすいよう、現地の活動の様子、それらに参加した人々の声をお届けするのはもちろんのこと、調査・評価などで得られた客観的なデータを用いて、より具体的な成果と事業のインパクトを感じられる報告を心掛けています。


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各分野の専門家が協力しています

WVの支援国では、子どもの保護・公衆衛生・難民支援・評価分析など各分野のスペシャリストや、保健士・栄養士・医師・助産師など、有資格のスタッフが協力して、事業の形成やモニタリング、評価を行います。修士号や博士号を取得し、国際機関やNGOなどで経験があるスタッフが多く、各分野で得た知見を活かし、よりインパクトのある事業形成・実施を目指しています。


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