フィリピンの貧困問題の原因は?子どもの現状と私たちにできる解決策

フィリピン共和国は、7,641もの島から成り立つ東南アジアの島国です。国土は日本の約8割程で、約1億900万人が暮らしています(注1)。

フィリピンの首都マニラや、リゾート地セブ島はご存知の方も多いのではないでしょうか。また、公用語の1つである英語の留学先としても近年注目を集めています(注2)。

新型コロナウイルスの感染拡大まで順調な経済成長を続けていましたが、頻発する自然災害や、貧困の問題は根強く残っています。地域格差が大きいため、貧困率が高い地域では、栄養不良による発育への影響も深刻です。

この記事ではフィリピンにおける貧困問題の現状と日本が行ってきた支援策を解説します。さらに後半では、チャイルド・スポンサーシップを通じた貧困地域での支援や、支援を受けた子どもたちの様子を紹介していきます。

長く続いている貧困問題に対し、私たちができることを考える機会にしていただけたら幸いです。

フィリピンの貧困の現状

フィリピンで暮らす子ども
フィリピンで暮らす子ども

フィリピンの貧困問題を知るために、国際機関などが発表しているデータを紹介していきます。

世界銀行によればフィリピンの貧困率は2019年時点で20.8%です。2000年時点では38.1%と、およそ倍の数値だったことから、年々改善していると言えるでしょう(注3)。

また2010年代後半からの経済成長は顕著でしたが、2020年はコロナ禍の影響を受けて、年9.6%のマイナス成長を記録しました(注4)。

まずフィリピンの人々の生活実態と貧困の背景を解説します。



フィリピンの生活と食事の環境

フィリピンでは2018年時点で国内の240万世帯が飢餓に苦しんでいるとされます。平均的な収入の世帯で、食費が家計の半分を占めるため、1日3回の食事を必死に確保している現状があります(注5)。

確かに経済成長によって、フィリピンの人々の生活や食事の環境は改善してきました。

コロナ禍の影響で2020年は経済成長がマイナスになるという打撃があったものの、2022年は「東南アジアでフィリピンが最も高い成長率を記録する」と、世界銀行は予測(注6)。また、この数十年で5歳未満の子どもの死亡率は半減するなど、着実に改善に向かっているのは間違いないでしょう(注7)。

ただ依然として、貧困に苦しむ人が多いのが実態です。



フィリピンの貧困率

フィリピン政府統計局によると、2018年時点のフィリピンの貧困率は16.6%で、2015年時点の23.3%から約3割減少したとされています。貧困率に該当するのは月収が約2万4千円を下回る世帯です(注8)。(2022年2月22日の1ペソ=2.24円を元に算出)

マニラ首都圏での貧困率はわずか2.3%であるものの、ミンダナオ地方では貧困率が上昇しており61.3%に達するなど地域差が際立っています(注9)。

子どもに目を向けると、2015年には31.4%の子どもが貧困世帯で、貧しい生活を送っています(注10)。

フィリピンの貧困率改善には教育や保健分野への投資が必要とされ、国を挙げての人材育成の環境整備が重要です(注3)。

フィリピンの貧困問題の原因と支援

フィリピンに被害をもたらしたスーパー台風ライで被災した子ども
フィリピンに被害をもたらしたスーパー台風ライで被災した子ども

フィリピンの貧困問題にはさまざまな原因が絡み合っています。

特に影響が大きいと言われているのが、地域格差が拡大している点です。治安問題がある地域では開発が遅れています。

また、フィリピンで頻発する自然災害の影響も貧困世帯の方が大きく、より一層地域格差を拡大する一因になっていると考えられるでしょう。

こうした問題の解決に向けて日本が行っている支援の内容も紹介していきます。



フィリピン国内の地域格差が激しい

フィリピンでは首都マニラと、周辺地域の経済格差が問題です。

マニラや中部ルソン中心の開発が進められたため、地域間の格差が拡大。政治の主流に中部ルソン出身者が多くを占めてきたこと、地方の治安が不安定だったことも開発を阻害してきたと指摘されています(注11)。

とくに南部ミンダナオ島では、武装した共産勢力など過激派組織が治安に深刻な影響を与えており、日本政府はミンダナオ地域を長く「渡航中止勧告」地域に指定してきました(注12)



フィリピンで頻発する自然災害

フィリピンでは自然災害の影響が大きく、台風、地震、火山活動などが頻発しています。

直接の被害に加え、交通機関や電話、インターネットにも影響し、物資の供給が十分におよばなくなることもあります(注13)。

2013年の台風30号は、フィリピン全土で死者・行方不明者が約8000名となる甚大な被害をもたらしました。特に被害が大きかったのは、台風が上陸した東部ビサヤ地方でした。

この地域は、ワールド・ビジョン・ジャパンがチャイルド・スポンサーシップを通じて支援を届けるレイテ地域、サマール地域が位置する場所です。レイテ地域・サマール地域ではそれぞれ2009年から支援活動を行っていました。

このときワールド・ビジョンは、緊急支援募金を通じてフィリピンの71万人以上に水、食べ物などを届けられたのです。

自然災害にぜい弱な地域と、開発が遅れている地域が一致していることも、フィリピンの貧困の地域格差の一因です。



フィリピンの貧困に対する日本の支援

日本とフィリピンは歴史的にも友好関係にあります。またフィリピンにとって日本が最大の輸出国であり、最大の援助供与国です(注14)。

日本は、フィリピンを重要な開発協力対象国と位置づけています。

  • 持続的な経済成長のための基盤強化
  • 安全保障の確保
  • ミンダナオ地域における平和と開発
以上の3点に特に重点を置いています。

日本、フィリピン間の二国間援助額は2019年までに総額で10億ドルとなりました。日本の援助先としては、インド、バングラデシュに次ぐ第3位です(注15)。

フィリピンの貧困問題に取り組むワールド・ビジョン

サマール地域で暮らす子どもたちとワールド・ビジョンのスタッフ
サマール地域で暮らす子どもたちとワールド・ビジョンのスタッフ

ワールド・ビジョン・ジャパンは、フィリピンの貧困地域への支援を行っています。

フィリピンで行っているのはサマール、レイテの2地域。2009年度から継続して、チャイルド・スポンサーシップを通した開発支援プログラムを行っています。

いずれの地域も食事すら困難な貧困世帯が多く、度重なる台風により甚大な被害を受けている地域です。



ワールド・ビジョンとは

ワールド・ビジョンは開発援助、緊急人道支援、アドボカシー(市民社会や政府への働きかけ)を行う世界最大級の国際NGOです。

特に貧困や不公正を克服できるよう、子どもたちとその家族、そして彼らが暮らす地域社会に向けたアプローチを行っています。

ワールド・ビジョン・ジャパンは1987年に設立されました。現在、約100カ国で活動する国際NGO ワールド・ビジョンを構成する支援国事務所のひとつです。

世界の子どもたちが未来に希望を持てるように行う支援活動の大部分の資金は、寄付や募金で成り立っています。

2020年度、ワールド・ビジョン・ジャパンは33カ国で154事業を実施。うちフィリピンでは以下に紹介する2事業を行いました。



フィリピンの貧困層への支援活動

ワールド・ビジョンがフィリピンで2009年から継続している2つの支援事業。

  • サマール地域開発プログラム
  • レイテ地域開発プログラム

実はこの2地域は、橋でつながる近距離にあります。

サマール地域開発プログラム
首都マニラから南東へ約560km離れたサマール地域は、2013年の大型台風など何度も甚大な被害を受けている地域です。もともと貧困世帯が多く、教育を受けられない子どもたちや、子どもたちに対する暴力(虐待、育児放棄、人身取引など)も問題となっています。

貧困が原因で学校に通えない学齢期の子どもは27%。「自分の権利」の存在さえ知らない子どもたちの現状がそこにはあります。

ワールド・ビジョンが行った支援では、168人が子ども会議に参加し、子どもの権利と責任、保護を求める方法を学びました。また、11,474人が識字能力向上のプログラムを受けています。

レイテ地域開発プログラム
第2次世界大戦で日本とアメリカの激戦地となった歴史があるレイテ島。サマール地域と橋でつながったこの地域もまた貧困、自然災害の被災の他、保護者の知識不足による栄養不調の子どもが多いことが深刻な課題です。

住民の多くは農業と漁業に従事してきましたが、急速な都市化、周辺からの人口流入により、農地や漁場が狭くなって生活はさらに厳しくなっています。

ここでワールド・ビジョンは、HIV/エイズ、子どもの権利と保護などへの啓発支援を行ってきました。時には保護者も含めた家族で、体罰をやめた肯定的な教育方法や家族間の結束、子どもの意見を尊重する大切さも学んでいます。

これらの活動により、子どもに教育の機会を与え衛生環境が整い、子どもが安心して暮らせる環境が整うことを期待してやみません。

そして、活動のほとんどは、チャイルド・スポンサーシップの皆様によって支えられているのです。

あなたもできる、フィリピンの貧しい子ども支援

日本からでも、フィリピンで暮らす貧しい子どもたちを救う方法があります。それがチャイルド・スポンサーシップです。

1日当たり150円の継続支援で、貧困に直面しているフィリピンの子どもが健やかに育ち、未来に希望を持てるようになります。

チャイルド・スポンサーシップは、子ども自身に直接物資や学費を届けるのではなく、住む地域全体の改善につなげることで持続的な支援を行っています。


チャイルド・スポンサーシップ

チャイルド・スポンサーシップは、子どもたちが健やかに成長できるように持続的な環境整備が目的です。

教育を受ける権利、食事が保たれ、虐待を受けずに暮らす権利を守れるように、支援地域の人々とともに環境改善に取り組んでいます。

衛生、保健、栄養、教育への対策など取り組みは多岐に渡ります。改善された環境が将来に渡って維持され、発展するには地域住民の人材育成や組織作りなどの土台作りも欠かせません。

各地域のニーズに対応し、地域の人々との信頼関係の上で実施しているチャイルド・スポンサーシップの取り組みは、地域の子どもをあらゆる危険から守り、よりよい未来を拓く支援活動を行っています。



支援を受けた子どもたちの姿

フィリピン、レイテ地域で支援を受けた子どもたちの様子を紹介します。

アンジェリートくんの家族は、2013年の台風でココナッツ栽培のためのヤシの木が倒壊し厳しい生活を続けていました。「台風で両親が大変苦労していました。勉強を頑張って、将来家族を助けられるようになりたい」と語ったアンジェリートくん。

アンジェリートくんは台風で被災した経験から災害対策について学ぶことができた、と語る
アンジェリートくんは台風で被災した経験から災害対策について学ぶことができた、と語る

ワールド・ビジョンの災害対策訓練での学びを活かし、翌年の台風では家族と避難所に逃げ被害を免れました。このように子どもたちが教育を受け、災害から守られて健康に成長できるための支援活動を続けています。

「チャイルド・スポンサー」になり、1日150円、月々4,500円のご支援をいただくと、毎年届くチャイルドの成長報告を通じて、子どもたちの成長を確かめることができます。

チャイルドとお手紙で交流することも可能です。チャイルド・スポンサーは支援の成果を実感し、チャイルドは見守られて育つ喜びを感じることができます。チャイルド・スポンサー限定のfacebookグループを通じて、チャイルド・スポンサー同士で交流することも可能です。

子どもたちの命と未来を守るため、ぜひワールド・ビジョンのチャイルド・スポンサーシップへのご協力をお願いします。

今あなたにできること、一日あたり150円で子どもたちに希望を。

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参考資料

注1 外務省:フィリピン基礎データ外部リンク
注2 JICA:途上国レポート外部リンク
注3 JETRO:世界銀行による調査レポート外部リンク
注4 IMF:Real GDP growth外部リンク
注5 JETRO:飢餓撲滅法案を国会で審議外部リンク
注6 世界銀行:世界経済の見通しpdfアイコン P.95
注7 UNICEF:Situation Analysis of Children in the Philippinespdfアイコン
注8 フィリピン統計局:Proportion of Poor Filipinos was Estimated at 16.6 Percent in 2018外部リンク
注9 JETRO:2018年の貧困率は16.6%外部リンク
注10 フィリピン統計局:Children in the Philippines外部リンク
注11 外務省:フィリピン国別援助計画外部リンク
注12 外務省:フィリピン安全対策基礎データ外部リンク
注13 外務省:海外安全ホームぺージ外部リンク
注14 外務省:最近のフィリピン情勢と日・フィリピン関係外部リンク
注15 外務省:ODA実績外部リンク



※このコンテンツは、2022年2月の情報をもとに作成しています。

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