【カンボジア】3年間の母子保健事業が終了! 成果報告の動画が届きました

(2020.06.24)

カンボジアのタケオ州で3年間(2017年3月~2020年2月)実施した、「タケオ州における母子健康改善事業」が終了を迎えました。

外務省による「日本NGO連携無償資金協力」と、皆さまからの募金によって実施されたこの事業。3年間の成果を動画でご報告します。

タケオ州では、2013年よりワールド・ビジョンがチャイルド・スポンサーシップによる地域開発プログラム(ボレイ・チュルサールADP)を実施しており、これまでに保健衛生、収入向上、教育分野での支援活動を行ってきました。同じ地域で母子保健サービスの改善を目指す新事業を行うことによる相乗効果が期待されています。

事業について、さらに詳しくはこちら


村での体重測定の様子

お母さんと子どもたちの命を守るために

Positive Deviance Hearth (PD Hearth)とは、地域一丸となって取り組む低体重児の栄養改善、行動変容のための世界的に認知された手法です。

この手法は、経済的に貧しくとも栄養状態の良い子どもを育てる保護者の「優れた行動」を見つけ、その行動を、栄養不良児を抱えた他の家庭にも普及させるために用いられます。


支援事業による研修に参加した女性と子ども


プロジェクト・チーム・リーダー Mrs. Chamreun Vithより:

この栄養改善法は、母親、保護者、地域内の関係者とともに、子どもに食事を与えるときの習慣や行動を良い方向に変えるためのものです。

栄養バランスのよい食事を準備し、成長に応じた必要な栄養素を 子どもたちにきちんと与えるべきことを教えます。

Mrs. Chamreun Vith (プロジェクト・チーム・リーダー)

保護者 Mrs. Choun Samai より:

以前、孫娘の体調は優れず、栄養不良と言われました。そんなとき、この「PD Hearth」という活動に招かれ、栄養豊富なおかゆの作り方を教えてもらいました。

それ以来、孫娘のために毎日野菜を分たくさん使って食事を準備しています。
今では彼女の体重は増え、健康に成長し、毎日学校に通っています。
もう体調を崩して、病院に行くことはなくなりました。

Mrs. Choun Samai (保護者)

プロジェクト・マネージャー 松岡 拓也より:

日本政府や日本の皆さまによるご支援のおかげで、タケオ州のコー・アンデートおよびキリボン保健行政区において、母子の病気羅患率や死亡率削減を目指し、カンボジア政府とともに事業を実施しました。

「タケオ州における母子健康改善事業」は、2歳未満児9,480人妊産婦6,538人を対象に、保健サービスへのアクセス、利用および質の向上、また子どもの栄養不良率の削減のために活動しました。

研修、コーチング、啓発キャンペーン、振り返り等、様々な手法による活動が290の村で行われました。

保健サービス提供者が母親や新生児に安心・安全で良質なサービスを提供するための技術や知識を持つようになり、保健センターは利用者にとって使いやすい場所に整えられました。

松岡 拓也 (プロジェクト・マネージャー)
腕の太さで栄養状態をチェック
定期的な体重測定で成長を確認
予防接種を受ける重要性も啓発

保健センター職員 Mrs. Him Phouより:

「この事業が始まって以来、コミュニティの人々は栄養に関してよく理解するようになり、保健サービスを受けるために保健センターまで来るようになりました。

事業開始前は、親が子どもの予防接種を拒んだり、家庭で伝統的産婆の介助で出産したりしていました。

今では子どもたちは予防接種を受け、妊婦は専門の助産師の介助のもと出産するようになりました」

Mrs. Him Phou (保健センター職員)

村落保健支援グループ* Sreyneath Ounより:

「この事業に関わってから、私の住む村で母子の健康状態が改善してきていることが見てとれます。

特に、女性とその家族が産前・産後のケアや子どもの健康診断により気をつけるようになりました」

*他国ではCommunity Health Workerとも呼ばれる地域ボランティアです。村内で選出された2名の代表者が、村内の妊産婦、栄養不良児、その他保健サービスを必要としている住民の状況を把握し、家庭訪問や保健センターと連絡を取り合い、支援します。

Mrs. Sreyneath Oun (村落保健支援グループ)

3年間の支援の結果、タケオ州に住む多くの母親の意識と行動が変わりました。
産前健診を4回以上受診した母親の割合は75%から83%に向上し、産後健診を最低2回受けた母親の割合も83%から97%へと上昇しました。

さらに、三種混合とはしかの予防接種を受けた2歳未満児の割合は88%から97%へ、ビタミンA* を投与された2歳未満児の割合は67%から90%へと大きく改善しました

水浄化システム2基、貯水タンク24基、手洗い場付きトイレ7基
が保健センターに建設され、安全な水や衛生設備へのアクセスが改善しました。

*ビタミンA欠乏症により、夜盲症になりやすくなるだけでなく、皮膚や粘膜(消化管や呼吸器等)が乾燥し、下痢や呼吸器感染症も生じやすくなります。さらに免疫機能も低下し、麻疹やマラリアなどが重症化しやすくなります。

事業で設置された水浄化システム
事業で設置された雨水貯水タンク
きれいな水で手を洗えるようになりました

コミュニティ保健栄養基金で守られた小さないのち

経済的状況にかかわらず、全ての人々がいつでも保健サービスを受けることができるように、290の村に「コミュニティ保健栄養基金」がつくられました。ここれまでに、12,111の家庭33,181ドルを寄付し、村人は保健センターを受診するための交通費が必要な際に、基金から即座に借りられるようになりました。

郡女性児童委員 Mrs. Samoeun Sinより:

コミュニティ保健栄養基金は妊産婦と子どもの死亡率や栄養不良率の削減に貢献しています。

まず、コミュニティ保健栄養基金のおかげで、妊産婦は必要な時にお金を借りて、迅速に治療を受け、医師が指定した日に確実に定期健診を受けられるようになりました。

この活動は子どもにも恩恵をもたらします。
深刻な栄養不良児が見つかった場合、コミュニティ保健栄養基金を利用し、子どもを保健センターに搬送し、適切な治療を施し、彼らが健康的な生活を取り戻すための支援ができます。


Mrs. Samoeun Sin(郡女性児童委員)

受益者の1人 Mrs. Lin Nithより:

私の息子は生後20日のときから心臓弁膜症を患っています。私たち家族には、経済的な余裕は全くありません。でも、息子を病院に連れて行かなければ、命が危ない状況でした。意を決して、400キロ離れた街にある小児病院*に息子を連れていくことにしました。

医師から、手術のために1か月は入院しなければならないと言われました。夫には「故郷に残り、息子のために収入を増やしてほしい」と伝え、私は遠く離れた町で、息子の世話をしながら過ごしました。夫に電話で送金を頼みましたが、残念ながら十分な収入はありませんでした。いよいよ瀬戸際に立たされたとき、村のコミュニティ保健栄養基金から50ドルを借りることができました 。

手術から3日後、私は息子と面会することができました。医師から、手術はうまくいき、もう心配する必要はありませんと言われました。こんなにすばらしい知らせを聞けて、天にも昇るような喜びを感じました。経済的に困り果てたときにコミュニティ保健栄養基金に助けられ、とても感謝しています。

私はPD Hearthにも参加し、息子のために栄養豊富な食事の作り方を学びました。手術前、彼の体重は8kgしかありませんでしたが、今では10㎏にまで増えました。息子がここまで元気に成長することができて、喜びでいっぱいです。
息子の健康は何にも代えがたいです。


Mrs. Lin Nithと息子と祖母

*この小児病院は Kantha Bopha Children's Hospital です。スイス人の医師(2018年逝去)が1992年にプノンペンとシェムリアップに開設した私立病院で、スイス政府やカンボジア政府、その他多くの寄付や基金により運営されている病院です。子どもに無料で保健医療サービスを提供しており、そのサービスの質の良さから、カンボジア全国から人々が集まります。

だれでも、いつでも保健サービスを受けられるように

郡女性児童委員 Mrs. Pa Sopheapより:

ワールド・ビジョンによる3年間の支援を受け、以前と比べ、明らかに地域内での協力が進みました。

郡、コミューン 、保健センター、保健行政区、州保健局等の関係者が効果的に連携するようになりました。

各関係者が情報を共有し合い、地域のための活動計画を立てやすくなりました。


Mrs. Pa Sopheap (郡女性児童委員)


タケオ州保健局職員 Mrs. Ros Setheavyより:

ワールド・ビジョンによる事業は終わりますが、州保健局や保健行政区は、事業の成果が持続していくよう力を合わせて働いていきます。

私たちは病院や保健センター職員の能力向上に引き続き取り組んでいきます。
サービスの質を絶えず向上していくよう職員を励ましていきます。

そして、職員が自らの役割や責任を十分理解し、正しい知識と技術に基づく医療サービスを提供し、利用者の抱える一つひとつの問題を解決していけるよう、努力を続けていきます。

タケオ州保健局を代表し、日本政府と日本国民の皆さまに健康と成功を祈ります。皆さまのご支援のおかげで、キリボンおよびコー・アンデート保健行政区内において、母子保健の状況を改善することができました。
ありがとうございました。


Mrs. Ros Setheavy (タケオ州保健局職員)


村での病気予防の啓発
体重測定で健康管理
定期的に保健センターに来る母子



温かいご支援で支えてくださった皆さまに感謝します。ありがとうございます。

関連ページ