【アドボカシーの現場から】Vol.06 政策対話

投稿日|2026年9月10日
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アドボカシーの現場から ~声なき人の声となる~

「アドボカシーの現場から」は、ワールド・ビジョン・ジャパンの活動の三本柱のひとつであるアドボカシーの働きを、担当スタッフの声でお伝えするコラムです。

国際会議や政府との対話を通じて、子どもや声なき人びとの声を政策に反映する。見えにくいけれど、子どもたちの未来を変える力をもつアドボカシーの現場を、ワールド・ビジョン・ジャパンの柴田スタッフがお伝えします。

連載 6 回目は、アドボカシーの重要な活動のひとつ「政策対話」についてお届けします。

政策対話って何? ―「伝える」だけではないアドボカシー―

「アドボカシー」という言葉を聞くと、皆さんはどのような活動を思い浮かべるでしょうか。 

政府への政策提言でしょうか。 

国会議員への働きかけでしょうか。 

それとも、署名やキャンペーンでしょうか。 

どれもアドボカシーの大切な活動です。 

ワールド・ビジョンでは、アドボカシーを、一人ひとりが問題について知り、その原因について声をあげ、解決のためにできることを訴えていくこと、そして、この働きにより、政策を変え、不公正な社会を変えていくことと考えています。 

そのために欠かせないもののひとつが、今回ご紹介する「政策対話」です。 

「提言」と「対話」は、何が違うの?

「政策提言」という言葉は比較的イメージしやすいかもしれません。
例えば、紛争下にある子どもたちが教育を受けられないという課題があります。私たち NGOは、活動する地域から届く情報や声やデータをもとに、政府などに必要な支援や仕組みを具体的に提案します。これが「政策提言」です。

ワールド・ビジョンから日本政府国連代表部への政策提言

一方、「政策対話」のポイントは、その名の通り「対話」にあります。
要望を一方的に伝えて終わるのではなく、政府や国際機関など政策や制度をつくる人たちと、それぞれが持つ情報や考えを出し合いながら、課題とその解決策について話し合っていくのです。

もちろん、いつも意見が一致するわけではありません。
むしろ、立場が違うからこそ対話する意味があります。

なぜ NGO が政策対話に参加するの?

ここで、こんな疑問を持つ方もいるかもしれません。
「政策を考えるのは政府の仕事なのでは?」
たしかに、最終的に政策をつくり、実行するのは政府です。
しかし、政府だけでは社会のすべての人の状況を把握することはできません。特に、貧困や紛争、災害、暴力などの影響を受けている人や脆弱な立場に置かれている子どもたちの声は、政策を決める場所まで届きにくいことがあります。

NGO は日々の活動を通して、そうした人々の生活や声に接しています。だからこそ、現場と政策をつなぐ役割があります。
ただし、NGO が当事者に「代わって」話せばよいというわけではありません。大切なのは当事者自身の声です。子どもたちの声に耳を傾け、それが政策をつくる人たちに届くようにすること。そして、可能な場合には子どもや若者自身が意見を伝えられる場をつくることも私たちの大切な役割です。

Panel discussion at a conference: four women seated at a long wooden table with nameplates (S. Napur, Dola, H. Barclay) and microphones, a projection screen behind them showing text related to child activism in Bangladesh; the speaker on the far right and the others listen and converse.
ジュネーブの国連で発言するバングラデシュのユースリーダー

日本にも世界にも「政策対話」の場があります

政策対話は、決して特別なものではありません。
例えば日本では、NGO と外務省が ODA(政府開発援助)について定期的に話し合う「NGO・外務省定期協議会」や、NGO と財務省が国際開発金融機関や地球規模課題について意見交換を行う「財務省・NGO 定期協議会」があります。

国連や世界銀行などで行われる国際会議や、G7 や G20 といった国家間の対話の場にも、市民社会が参加し、現場の課題や政策について意見を伝え政策に反映するように議論を行う機会があります。ワールド・ビジョン・ジャパンも、こうした国内外のさまざまな場で政策対話に参加しています。

NGO と G7 シェルパとの対話で発言する筆者(左から 2 人目)

対話を重ね、声を政策につなぐ

もうひとつ大切なことは、政策対話は一回の会議だけを指すものではない、ということです。
アドボカシーの仕事をしていると、時々もどかしく感じることがあります。
一度の会議で政策が大きく変わることはほとんどありません。何度説明しても、提案が政策に盛り込まれないこともあります。数年かけて話し合って、ようやく小さな一歩が実現することもあります。

開発援助や緊急人道支援のように、「子どもたちの通う学校ができました」「食料を届けました」と目に見える成果をすぐにお伝えすることが難しい活動でもあります。
でも、政策がひとつ変われば、その影響はひとつの村やひとつの地域を越えて、多くの子どもたちに届く可能性があります。

声を聴く。声を届ける。対話する。そして、社会の仕組みを変えていく。

政策対話は、そのための大切な橋渡しです。


子どもたちの声を政策につなぎ、未来につながる一歩を生み出すために、私たちは対話を続けています。

アドボカシー・シニア・アドバイザー 柴田 哲子

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※アドボカシー=貧困や紛争の原因について声をあげ、問題解決のために政策や社会の仕組みに働きかける活動

柴田 哲子(しばた のりこ)

東京外国語大学ロシヤ語学科卒業、東京大学大学院総合文化研究科修士(国際貢献)。
海外経済協力基金・国際協力銀行にて二国間援助に従事したのち、国際NGOの事務所長としてアフガニスタンに赴任し帰還民支援に携わる。現場での経験を通じ、課題解決のためには事業支援に加え政策を変えるアドボカシーが必要との思いを強める。2011年にワールド・ビジョン・ジャパン入団。2013年より子どもの権利に関するアドボカシーに従事。
SDGs市民社会ネットワーク進行役・開発ユニット幹事、教育協力NGOネットワーク副代表、こども家庭庁「子どもに対する暴力撲滅円卓会議、ワーキング・グループ」委員等、複数のNGOネットワークや政府の委員を務める。

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