【アドボカシーの現場から】Vol.05 子どもへの暴力をなくすために 〜「こどもに対する暴力をなくす行動計画(改訂版)」と市民社会の役割〜
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アドボカシーの現場から ~声なき人の声となる~
「アドボカシーの現場から」は、ワールド・ビジョン・ジャパンの活動の三本柱のひとつであるアドボカシーの働きを、担当スタッフの声でお伝えするコラムです。
国際会議や政府との対話を通じて、子どもや声なき人びとの声を政策に反映する。見えにくいけれど、子どもたちの未来を変える力をもつアドボカシーの現場を、ワールド・ビジョン・ジャパンの柴田スタッフがお伝えします。
子どもへの暴力をなくすために 〜「こどもに対する暴力をなくす行動計画(改訂版)」と市民社会の役割〜
「アドボカシーの現場から」Vol.02では、子どもへの暴力をなくすための世界と日本の動向についてご紹介しました。その後も、国内外でさまざまな動きが続いています。今回は、その中でも日本国内における重要な進展についてお伝えします。
近年、子どもへの虐待やいじめ、性暴力など、 子どもへの暴力に関する報道に触れる機会が増えたと感じる方も多いのではないでしょうか。その背景には、社会全体で「子どもに対する暴力は許されない」という認識が広がってきたことがあります。そして、こうした変化の背景には、政府やNGO、国際機関に加え、暴力を経験したサバイバーや子どもたち自身が、「暴力は許されない」と声を上げ続けてきた積み重ねがあります。 そしてそのような社会の変化が制度や政策を動かす力になっています。


「行動計画」ができるまで
この「行動計画」は、もともと2021年に「子どもに対する暴力撲滅行動計画」3として策定・公表されたものです。
ワールド・ビジョンは、初めてこの行動計画が策定される以前から、EVAC日本フォーラムの仲間たちとともに、政府に対して包括的な行動計画の必要性を訴えてきました。関係省庁との政策対話、国内でのシンポジウムやセミナー、キャンペーンの実施、さらには国連会議に合わせたニューヨークでのサイドイベントの開催など、子どもへの暴力をなくすために、さまざまな働きかけを続けてきました。


こうした働きかけを通じて、 それまで各省庁ごとに進められていた子どもに対する暴力をなくすための取り組みを、子どもを中心に据えて横断的につなぎ、 関係者が一緒に議論する枠組みが形成されました。

それまでは、日本における子どもへの暴力対策は、たとえば警察庁による性的暴力対策、文部科学省によるいじめ対策、厚生労働省による体罰や虐待対策など、省庁ごとに進められてきました。しかし実際には、一人の子どもが家庭、学校、オンライン空間などで、複数の暴力を同時に経験していることも少なくありません。
だからこそ、一人ひとりの子どもを中心に据え、さまざまな暴力の課題について関係省庁が横断的に議論し、対策を検討することが重要です。また、政府だけでなく、現場で子どもたちと向き合うNGO、国際的な知見を持つ国際機関、さらに近年増加しているオンライン上の暴力に対応する企業など、多様な立場の人びとの声を反映しながら対策を進めることが欠かせません。

ワールド・ビジョンを含む市民社会は、このように多様な立場の人びとの意見を反映する「マルチステークホルダー」の取り組みの必要性を訴え続けてきました。 こうした流れを受けて、子どもに対する暴力撲滅円卓会議やワーキング・グループが設置され、私も立ち上げ当初から構成員の一人として議論に参加してきました。この枠組みを通じて出来たのが2021年の「子どもに対する暴力撲滅行動計画」でした。

「行動計画」の改訂とその成果
その後も、政府、市民社会、国際機関などが連携しながら、各ステークホルダーの取り組みの進捗や国際的な動向を受け、より実態に合った内容となるよう、行動計画の改訂に向けた議論を重ねてきました。
改訂にあたっては、EVAC日本フォーラムの専門家や関係団体の意見を取りまとめ、市民社会の声として提言を行い、提言した内容の一部は、実際に改訂版へ反映されました。


その中でも象徴的な成果の一つが、「行動計画」のタイトル変更です。以前は「子どもに対する暴力撲滅行動計画」という名称でした。しかし、「撲滅」という言葉には暴力的な響きが含まれていることから、子どもへの暴力をなくしていくという計画の理念にふさわしい表現を用いるべきではないか、という意見を市民社会から継続的に伝えてきました。
その後、対話と議論が重ねられ、今回の改訂版では「撲滅」という表現が削除され、「こどもに対する暴力をなくす行動計画」となりました。これは、市民社会の声が政策に反映された一つの成果だと考えています。
行動計画の内容4は、こども家庭庁のホームページで公開されています。日本がどのように子どもへの暴力を防止し、その対策を進めているのかを知ることができますので、ぜひご覧ください。

今回、予定より時間を要したものの、 改訂版の行動計画が無事に策定・公表されたことは、子どもへの暴力をなくす取り組みにおける、 大きな前進です。一方で、市民社会から提案した内容の中には、まだ十分に反映されていない課題もあります。
ワールド・ビジョンはこれからも、子どもたちが暴力のない環境で安心して生きられる社会を目指し、 関係省庁や多様なステークホルダーと協働しながら、より現場に根ざし、実効性のある行動計画となるよう、政策提言と対話を続けていきます。
アドボカシー・シニア・アドバイザー 柴田 哲子
- 注1:こどもに対する暴力をなくす行動計画(改訂版) ↩︎
- 注2:子どもに対する暴力撲滅円卓会議ワーキング・グループ ↩︎
- 注3:子どもに対する暴力撲滅行動計画 ↩︎
- 注4:こどもに対する暴力をなくす行動計画(改訂版) ↩︎
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※アドボカシー=貧困や紛争の原因について声をあげ、問題解決のために政策や社会の仕組みに働きかける活動

柴田 哲子(しばた のりこ)
東京外国語大学ロシヤ語学科卒業、東京大学大学院総合文化研究科修士(国際貢献)。
海外経済協力基金・国際協力銀行にて二国間援助に従事したのち、国際NGOの事務所長としてアフガニスタンに赴任し帰還民支援に携わる。現場での経験を通じ、課題解決のためには事業支援に加え政策を変えるアドボカシーが必要との思いを強める。2011年にワールド・ビジョン・ジャパン入団。2013年より子どもの権利に関するアドボカシーに従事。
SDGs市民社会ネットワーク進行役・開発ユニット幹事、教育協力NGOネットワーク副代表、こども家庭庁「子どもに対する暴力撲滅円卓会議、ワーキング・グループ」委員等、複数のNGOネットワークや政府の委員を務める。
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