【駐在生活=RPG?】バングラデシュで学んだ国際協力の進め方~人々のストーリーの一部になるということ~

投稿日|2026年3月17日
執筆者:李 義真
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こんにちは、バングラデシュ駐在員の李です!
バングラデシュは、近年の目覚ましい経済成長の裏側で、いまだに安全な水にさえアクセスできない地域が多く残っています。私は国際NGOの駐在員として、そうしたコミュニティで給水支援を含む水・衛生環境の改善事業に携わっています。

バングラデシュでの水・衛生改善事業の報告はこちら

突然ですが、みなさんは昔やっていた遊びやゲームから、今の生活に通じる「何か」を見出した経験はあるでしょうか?
私は年末年始に一時帰国したのですが、その際に家族と訪れたアウトレットで、子どもの頃大好きだった某ゲームのキャラクターを見つけました。
そこで、ふと過去の(ゲームの)思い出がよみがえり、今の自分の生活と重なる「何か」を感じました。
その背景にある事業地での体験と、個人的に思い巡らしている事柄について、少しシェアさせていただきます。

アウトレットで見つけた某ゲームのモンスター(左)と事業地の様子(右)
アウトレットで見つけた某ゲームのモンスター(左)と事業地の様子(右)

と言っても、もちろん「可愛く奇妙なモンスターたち」は、今の駐在生活にはいません(残念…)。
でも、ゲームの中で次から次へと「異世界」を旅し、物語が展開していく部分には、何か通じるものを感じます。
特にその物語の真髄は、旅で出会うキャラクターたちが持つ独自の個性と、それらが織り成すストーリー性です。

そして、私がバングラデシュでの駐在生活を振り返る中で、まさに「自分はこの地域の人たちのストーリーの一部になるために来たのかもしれない」と思わされている今日この頃です。

バングラデシュで見た水の格差:30年間「きれいな水」を求め続けた村

ファテマさん(手前の女性)とコミュニティの人たち
ファテマさん(手前の女性)とコミュニティの人たち

私は事業地で2年半の間、ファテマ・ベグムさん(50歳)という方を見てきました。
彼女は、チョウドリ・パラという村に長く住んでいます。
この村は少し奥地に位置し、起伏のある地理的条件も相まってアクセスが難しく、基本的なサービスが行き届いていません。
ここに住む64世帯は、どこも長年貧困に苦しみ、コミュニティには井戸等の給水設備が一つもありませんでした。

チョウドリ・パラの入り口。傾斜のきつい道が続く。
チョウドリ・パラの入り口
チョウドリ・パラの入り口。傾斜のきつい道が続く。
傾斜のきつい道が続く

そのため、ファテマさんたちは丘を下り、片道約1時間をかけて近くの井戸まで水汲みに行っていました。
雨季には道がドロドロで足場が悪くなり、子どもたちが学校に行けなくなるほどです。
しかし、やっと井戸にたどり着いても、その持ち主が水を譲ってくれず、泣く泣く手ぶらで帰ってくることも珍しくありませんでした。
多くの住民は、近くの水溜まりや川の水を飲み水として使わざるを得ず、その結果、下痢症や赤痢といった病気に苦しみ、治療のためにさらに出費が必要になりました。

水溜まりから水を汲む女性(事業地の別地域)
水溜まりから不衛生な水を汲む女性(事業地の別地域)

「きれいな水がない」ことの影響は、身体的な問題に留まりませんでした。
他の多くの家庭と同様に、ファテマさんの娘は学校に行くのを止め、水汲みに借り出されました。
また身内が亡くなった時は、その人を失った悲しみよりも、葬式を開いて人を招く際に必要な水をどう賄うか、という心配の方が大きくなってしまうほどでした。

そうした生活が30年以上続いていたある日、日本政府の資金を受け、ワールド・ビジョン・ジャパンの活動がこのコミュニティにやってきたのです。

チョウドリ・パラに設置した給水設備(右写真:筆者とファテマさん)

給水支援が変えた64世帯の暮らしと「ビジョン」~ストーリーが繋がった時、物語は変わり始める~

そこから、コミュニティでの調査や話合いを経て、長年待った給水設備が設置され、チョウドリ・パラの64世帯すべてが簡単にきれいな水を使えるようになりました。
それだけでなく、ファテマさんは事業が形成した「給水設備管理委員会」のメンバーとなり、他の住民とともに給水設備を管理・運営する責任が与えられました。
そしてこの役割を通じて、彼女には新しい「夢」ができました。ファテマさん自身がこのように話してくれました。

「今後この委員会をベースに協同組合を作って、地域の貧しい世帯をサポートし、すべての子どもたちが問題なく学校に通えるようになることを夢見ています。」

給水設備を設置した村の子どもたちと筆者

彼女の話を聞いて、より大きな視点から、より鮮明にストーリーが見え始め、この事業が与えた「真のインパクト」を実感しました。
そのインパクトとは、やはり一人一人のストーリーを知り、そこに参加・関与することで(私の場合は、実際に現地で「プレイ」することで)、深く理解できるものなのだと、原点に立ち返るような、再発見するような思いでした。

外国から来た自分が、偶然か必然か、この場所でファテマさんのような人々のストーリーの「一部」になれたこと。そして彼女の生活を変える重要な瞬間を「共有」できたこと。
バングラデシュに来た当初のことも思い出しながら、いま目にすることができている変化と、人々と築いてきた「繋がり」に、言葉にしがたい不思議さ、感動を覚えています。

団体のクリスマス会にて、苦楽をともにしてきた事業スタッフたちと。彼らにも、またそれぞれ異なるストーリーがあります。

国際協力という“RPG”で学んだ、平和を達成するための攻略法

年末年始の一時帰国は、久しぶりに家族や友人に会い、思い出の場所を訪れて、「自分がどこから来たのか」を再認識する時間になりました。
一方で、さまざまなニュースを見て、世界情勢が目まぐるしく変わり続けるなか、「自分が今の場所で、またこれからすべきことは何だろうか」と自問自答もしました。

まだ答えは見つかっていませんが、事業地で経験したように、また冒頭の某ゲームでもそうだったように、自分の知らない人々のストーリーを知り、そこに自分のストーリーを繋げ、同じ瞬間や感情を共有すること。
そんな小さく当たり前に思えることの継続が、実は大きな夢や希望、平和を生み出していく上での「攻略法」の一つなのではないか、と感じます。

今年も世界中でそうした「ストーリーの繋がり」が多く見られることを願いつつ。
私自身も担当事業を通じて、より多くの人々に良いインパクトを届けられるよう、自分にできることを頑張っていきたいです。


事業地のおばあちゃんとお孫さん(と筆者)

3月22日は「世界水の日」です

世界水の日に合わせ、今年も世界中で開催される、GLOBAL 6K FOR WATERの告知を開始しました。
水を汲みに行く子どもたちの平均距離「6Km」を体感するチャリティイベントです。
あなたも「6km」を歩いて、走って、水問題を体験してみませんか?

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この記事を書いた人
バングラデシュ駐在 プログラム・コーディネーター 李 義真
バングラデシュ駐在 プログラム・コーディネーター 李 義真
大阪大学法学部卒、東京大学公共政策大学院CAMPUS Asiaプログラム修了。その後、約半年間の民間企業での勤務を経て、2018年10月にワールド・ビジョン・ジャパンに入団。2021年2月から2023年4月までカンボジア駐在。2023年7月からバングラデシュ駐在。