気候変動と新型コロナによる危機に、農業で未来を切り拓く女性たち ~ケニアからの報告

(2022.02.07)

「気候が変わったので、私たちの生活も変える必要があります」
ケニア東部に位置するガリッサ郡。ここで母親グループのリーダーを務めるユバさんの言葉です。世界各地で問題になっている気候変動の影響を、彼女も、直接受けています。気温の上昇や洪水、干ばつと目まぐるしく変わる状況に、ついていけないと感じることもあると言います。

しかし、ユバさんが住むケニア東部では、気候変動による影響は異常気象の域をはるかに超えています。それはすでに生活全体をひっくり返し、コミュニティのなかで日常化しています。

ユバさんが覚えている限り、彼女の村の人々は牧畜民でした。家畜とともに移動し、数百キロ以上を旅したあと、市場で家畜を売って家族の収入としていました。

東アフリカの乾燥した気候は今に始まったことではありませんが、今年は違いました。干ばつがひどく、多くの動物が死んでしまいました。同時に、新型コロナウイルス感染症のパンデミックのため、市場は閉鎖されました。これらの状況が牧畜民に課す負担は計り知れません。

家畜がいなければ、村の食料源はありません。人々は飢え、子どもたちは栄養不良に苦しんでいました。気候変動とパンデミックの致命的な組み合わせに、村は適応しなければなりませんでした。そして、2021年、彼らはそれを実行しました。

多様な作物を栽培できるようになり、子どもたちも健康になりました

村の人々は、地域社会やそこで暮らす子どものことを一番知っている人々に目を向けました。それは、以前は見過ごされていた地域の女性たちでした。そして彼らは、土壌と地下水脈を回復し生物多様性を高める「Farmer Managed Natural Regeneration (FMNR)」*というモデルを採用しました。

村の女性たちに種を提供して家庭菜園を作り、飢餓解決の先頭に立つ「マサラニ」という、農業に特化した母親グループを立ち上げました。そのグループを率いているのが、ユバさんです。


「農業を実践することで、私の家族は牧草や食糧を求めて移動し続ける必要がなくなりました。必要なものはすべて家でそろいます」とユバさんは言います。

ワールド・ビジョンの農業専門家から、健康と生産性を最大化するため、天然資源を最適に管理する方法を学ぶ地域の女性たち

地域が牧畜から農業へと移行する間、ワールド・ビジョンは定期的に地域を訪れ、コミュニティのニーズや変化に柔軟に対応しました。栄養不良のレベルが再び上昇し始めた際には、子どもたちに栄養補助食を届け、作物が育つまで子どもたちの命綱になりました。

「水のおかげで、私たちは食用の作物を育てることができるだけでなく、一年中、動物の健康を維持する飼料を育てることもできます」とユバさんは言います。「以前は、限られた牧草地をめぐって近隣のコミュニティと争いが絶えなかったのですが、今では調和しながら暮らすことができています」

ユバさんの住む地域に対する支援は、すべて皆さまからの募金によって可能になりました。ワールド・ビジョンは長年にわたり飢餓に対する支援を行い、実績を積み上げてきました。しかし現在、世界の多くの場所でこれらの成果が無に帰する事態となっています。過去2年間の気候変動と新型コロナ等の影響により、4,500万人が飢餓の危機に瀕しているのです。

ユバさんの地域で進めているような農業への介入は、飢餓を食い止めるのに有効です。

子どもたちの栄養状態を確認するワールド・ビジョンのスタッフ

* Farmer Managed Natural Regeneration (FMNR)とは

農家の手で管理される自然再生の方法。低コストで始められ、また貧困や飢餓に苦しむ農家自身が行うことでレジリエンス(回復力)を高められるとされる。伐採された木の切り株から芽を育てるなどして森を育み、管理することで土壌の回復や生物多様性を促進し、農家は作物を収穫・販売できるようになる仕組み。詳しくはこちら(英語)


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