【ルワンダ】VRが拓く農業の未来

(2022.12.19)

VRを用いた研修の様子

ワールド・ビジョン・ルワンダ(WVルワンダ)でテクニカル・プログラム・マネージャーを務めるアイマブル・センギユンバは、VR(バーチャルリアリティ、仮想現実)技術が農業や畜産技術の研修に革命をもたらしていると述べています。

開発支援のひとつとして、支援地域に暮らす家族やコミュニティに研修に参加してほしい場合に、トレーナーがいなかったり、相互にコミュニケーションを取りながら学ぶ方法がない場合はどのようにすればよいでしょうか?新型コロナウイルス感染症の影響で集まって研修ができない場合、どうしたらよいでしょうか?

ルワンダでは、首都キガリにあるXRGlobal社、A2G社とチームを組み、700台のVR体験用ヘッドセットを購入し、トレーニングを受ける人がVRヘッドセットを使って 「遊んで学べる」 デジタルコンテンツを制作しました。VRヘッドセットとスマートフォンを組み合わせることで、研修を受ける人々は会場に集まらなくても自分で研修を受けられるようになりました。

VRを用いることで、住んでいる場所に関わらず、質の高いトレーニングを受けることができます

考えてみてください。ルワンダで最も貧しい貧困世帯にある6万人以上の人々に、彼らが極度の貧困から抜け出す方法を見つけられるよう、WVが提供する「極度の貧困から抜け出すためのプログラム」に参加してもらうとします。彼らはまず、WVが提供する「エンパワード・ワールド・ビュー」 プログラム (視野を広げ、思い描く自分に自らがなることを支える訓練)」を受けて貧困の連鎖を断ち切り、よりよい暮らしを築くイメージを持てるようになります。続いて、生計向上に関する技術を改善するための研修が行われます。その学びを修了してはじめて、初期投資のための資金を受け取ることができ、その資金を元手に様々な手段を通して、家族は収益を得ることができるようになるのです。

従来の方法では、このようないくつかの研修プログラムに泊りがけで参加する必要がありました。彼らは所定の期間、研修に参加し続け、教えられたことを覚え、図面や図表を実際のビジネスや農業の現場に落とし込むために努力する必要がありました。

しかし、VRヘッドセットとVRコンテンツを使用することで、地方に暮らしている人々も十分な技術と知識を持つトレーナーから直接指導を受けることができ、イラストや図を見たり、コンテンツを繰り返して復習するなど、より効果的に研修を受けることができます。VRプログラムの中で講師がバリューチェーン開発について説明するのを聞きながら、他の農家のグループがどのように農業技術を応用してきたかを、VRの中で家を出ることなく見ることができます。

彼らは農場を 「歩いて」 見て回ることができます。VRで使用される研修コンテンツは、元はPDFまたはパワーポイント形式の、WVの研修資料でした。これらの資料は、360°の高解像度カメラや3Dモデリングなどを用いてVRコンテンツとして再構築されました。モバイルプラットフォームに配信され、オンラインでもオフラインでも、利用することができます。

現在、ルワンダ国内の約6万人がVRを利用した研修を受けており、その結果、研修を受けるまでの時間が66%短縮され、途中で脱落せず研修を持続する人の数2倍に増加し、研修全体のコストが削減されました。

VRによる研修は非常に没入感があり、楽しみながら効果的に学べることを示しています。

これまでに、WVルワンダは、 「エンパワード・ワールド・ビュー」プログラム、メイズ(現地の主食のひとつ、トウモロコシの一種)栽培、養豚という3つの研修プログラムのために、VR教材を制作し、使用してきました。4つ目の、園芸に関するプログラムも開発中です。

これまでに、6万人以上の受益者に「エンパワード・ワールド・ビュー」VR研修が提供され、そのうち2,790人は小規模農場で豚を大切に育てる研修を受けました。

真剣なまなざしで養豚に励むエマニュエルさん

従来の集合型研修に比べた、VRを用いた研修のメリットとして以下が挙げられます。

  • 研修内容の標準化:質の高いトレーナーのコンテンツを配信することによって、トレーナーの質によって研修の質が左右されることがありません
  • コンテンツの汎用性:デジタルコンテンツは標準化されており、更新にかかるコストも最小限に抑えることができ、何千人もの参加者の研修に使用できます。VRは研修の対象者が多い、最も貧しい状態からの卒業や安全な生活の構築など、貧困の連鎖を断ち切る研修に適しています
  • 集中力の向上と研修内容の定着:VRヘッドセットを使用すると、学習者の注意は研修に集中し、通常の対面研修よりも集中してプログラムに参加することができます
  • 研修にかかるコストの削減:VRシステムを使用することで、研修会場の賃貸料、参加者の研修会場や実地研修会場への移動のコストを抑え、トレーナーに支払う謝礼や宿泊費用を節約できます。これは皆さまのご支援金で活動している団体にとって大きなメリットになります
  • 技術トレーニングとVR技術の親和性:技術をデモンストレーションで示し、実際に行ってみることを必要とするトレーニングは、VRを用いた学びに適しています。すべてのデモンストレーション、図、例を撮影し、参加者が必要なものを正確に伝えることができています


もちろん、すべての新しい研修方法には課題もあります。ヘッドセットはトレーニングの前日までに充電する必要があり、大規模なグループを対象に行う場合は、ヘッドセットのセットアップに時間がかかることがあります。ヘッドセットの購入とコンテンツの撮影コストを考えると、初期費用は決して安くはありません。また、VRヘッドセットは他の人が使用する前に消毒し、充電する必要があります。VRコンテンツの準備はとても骨が折れる作業で、容易ではありません。また、トレーナーと触れ合う機会は録画内容に限られています。

しかし、VR研修をグループ単位で行われる場合、参加者同士で会話の機会を設け、また、プログラムの卒業にあたって振り返り機会を持つことで、この課題は改善されています。

様々な課題もありますが、VR研修が画期的な方法であることは間違いなく、WVルワンダはVRを使って単なる養豚のトレーニング以上のプログラムを提供しようと計画しています。生計向上、水衛生、保健・栄養に関する、以下の内容も検討されています。

  • 新しいマインドセットの持ち方、ライフスキルの向上
  • 植え付け、除草、収穫、収穫後の取り扱い方法など、農作業に関する知識
  • 畜産に関する知識
  • 農業を用いたビジネスの原則と実践
  • 子どもの栄養と衛生に関する啓発


ご支援金はチャイルドやその家族に直接手渡すものではなく、子どもを取り巻く環境を改善する長期的な支援活動に使います。子どもたちと地域の人々が「未来を切り拓く力」をつけられるように支えます。VR農業を含む生計向上、保健・栄養改善、子どもの保護、教育、水衛生など、様々な活動を展開しています。

ワールド・ビジョン・ジャパンは、クリスマスまでに3000人のチャイルド・スポンサーを募集しています。ぜひ、ご支援にご協力ください。

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