木を切ることをやめた村が20年後に森を取り戻した|エチオピアの森林再生「FMNR」現地レポート

投稿日|2026年10月7日
執筆者:望月 亮一郎

エチオピアでは、伐採や過放牧によって失われた森林を、植林に頼らず再生する「FMNR(住民主体の自然再生)」が進められています。
ワールド・ビジョンが支援するHumbo地区では、2006年のプロジェクト開始から約20年。かつて荒れ地だった土地に森林が戻り、水や農業、人々の暮らしにも変化が生まれています。
2026年7月、ワールド・ビジョン・ジャパンの職員が現地を訪れ、森林再生と住民の暮らしの変化を取材しました。

【現地レポート】ワールド・ビジョン・ジャパン 支援事業第1部長 望月亮一郎(エチオピア:2026年7月)

現地のスタッフと筆者
現地のスタッフと筆者(右端)

「森がなくなってしまい、一度はこの場所に住むことをあきらめた」 

Humbo地区のプロジェクト地(左2006年、右2015年)
Humbo地区のプロジェクト地(左 2006年 右 2015年) 

エチオピア南部の森林組合リーダーが、眼前に広がる緑の森を指さしながらそう言った。かつての荒れ地を知る彼が、今では誰よりも熱心に森を守る側に立っている。 

住民組合のリーダーからのヒアリング
森林再生の取り組みや地域の変化について、住民組合のリーダー(中央・緑の帽子)から話を聞く様子

 2026年7月、私はエチオピア南部のウォライタ地域を訪れた。ワールド・ビジョン・ジャパンとして、現地で進む森林再生プロジェクトを直接確認するためだ。
本当にこの場所は20年前に一度は森林が失われた土地なのか、森林は回復できるものなのか。正直、この時点では信じられなかった。 

なぜエチオピアで森林が失われたのか?

かつてこの地域は、深刻な貧困を背景に、村人が薪や農地を得るために木を切り倒し、家畜を野山に放ちつづけた結果、土地の植物が育たない荒れ地と化していた、と話してくれた。土砂崩れが頻発し、川の水は減り、農業の収穫も減少していった。 

FMNRとは?植林せず自然の回復力で森林を再生する仕組み

ワールド・ビジョンが採用した「FMNR(Farmer Managed Natural Regeneration=住民主体の自然再生アプローチ」は、外部から苗木を持ち込んで植林するのではなく、土地にすでに残っている根や切り株を活かして、自然の回復力を引き出す手法だ。 

具体的には、伐採や過放牧を一時的に止め、再生しはじめた若木を保護する。その間、木を切ることで得ていた収入を補うため、家畜の提供や改良種子を提供し、別の生計手段を得られるように支援する。その結果、木を切らない期間が続くことで森は自然と回復していく。 

奥の山々がプロジェクトで再生した森林(Soddoプロジェクト)
奥の山々がプロジェクトで再生した森林(Soddoプロジェクト) 

森林再生によって地域の暮らしはどう変わった?

Humbo地区のプロジェクトは2006年開始から約20年が経過し、かつての荒れ地がうっそうとした森へと変貌していた。一方、2024年に開始したばかりのDuguna Fango地区でも、わずか2年で草や低木が再生しはじめていた。自然の回復力の早さに驚かされる。 

2024年以降、草原が回復している(Duguna Fangoプロジェクト)
2024年以降、草原が回復している(Duguna Fangoプロジェクト) 

森が甦ることで、地域にはさまざまな変化が生まれている。土砂崩れの消滅、川の水量の増加や湧き水の増加、農業収穫量の向上、そして生態系の回復。地域住民が「昔とは別の土地のようだ」と語る言葉が、すべてを物語っていた。 

森林再生とカーボンクレジット――森を守ることが収入につながる仕組み

さらに、この仕組みはカーボンクレジットとしても機能する。
森林が吸収するCO₂を計測・認証し、第三者機関から認証を得ることで、企業等が削減されたCO₂をクレジットとして購入できる仕組みだ。その資金がコミュニティに還元され、学校建設や農業支援に再投資されている。
森を守ることが、地域に循環経済を生んでいる。 

森林再生が変えた住民の意識――「木を守ることで生きていける」

今回の視察を通じて、もっとも印象に残ったのは、森の緑でも川の水でもなく、人々のマインドセットの変化だった。
ある組合メンバーはこう語った。
「本当は、木を伐りたくなかった。でも、食べていくためにはそうするしかなかった。」

森林組合のメンバーからのヒアリング(Duguna Fangoプロジェクト)
森林組合のメンバーからのヒアリング(Duguna Fangoプロジェクト) 


この地域に限らず、農村で生活する途上国の人々の多くは、調理のための薪として、また収入手段として木を伐って生活している。 

プロジェクトはその悪循環を断ち切り、「木を守ることで生きていける」という別の道を示した。今では、夜間の無断伐採を見つければ法的手段で対処するほど、住民が自ら森の番人となっている。
押しつけられた保全ではなく、自分たちの未来として森を守る姿がそこにあった。  

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災害・気候変動と子どもたち

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FMNR

FMNR(住民主体の自然再生アプローチ)について

森を再生し、希望を取り戻す。
住民が主体となり、自然を再生する取り組みを通じて、コミュニティの人々が生きる希望を取り戻します。

エチオピアの子どもたちとワールド・ビジョンのスタッフ

エチオピアでの活動

エチオピアでは、農業を主要産業とする一方、食料不足や水・衛生、子どもの保護など、さまざまな課題があります。ワールド・ビジョンは地域の人々とともに、子どもたちが健やかに成長できる環境づくりに取り組んでいます。エチオピアの現状や支援地域での活動をご紹介します。

この記事を書いた人
望月亮一郎 支援事業第1部 部長 望月 亮一郎
望月亮一郎 支援事業第1部 部長 望月 亮一郎
神戸大学国際協力研究科地域協力政策専攻修了。民間企業を経て、外務省専門調査員在ザンビア日本大使館にて勤務。同国の経済動向の調査および援助協調を担当。その後、JICA専門家としてマラウイ財務省において開発援助プロジェクトのモニタリング能力向上のための技術協力を行う。2011年3月にワールド・ビジョン・ジャパンに入団。東日本大震災緊急復興支援部で緊急支援を担当。2012年7月より支援事業部において、ベトナム、東ティモール、マラウイを担当。2015年10月から2018年9月までワールド・ビジョン・ルワンダ駐在。帰国後はアフリカ地域のプログラムを担当。2023年9月より支援事業第1部 部長として事業の管理に従事。

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