「難民」というイメージを超えた人々―カクマ難民キャンプ、食糧支援の現場から
今年6月の上旬、私はケニアにあるカクマ難民キャンプを訪れました。国連世界食糧計画(WFP)とワールド・ビジョンが協働で実施している食糧支援事業のモニタリングのためです。
現場では、食糧を受け取るために整然と列を作り待つ受益者の方々の姿と、その待ち時間を少しでも短くしようと奮闘するスタッフの姿、そして配布の運営をともに支える頼もしい難民の方々の姿がありました。
今回のブログでは、その現場の様子をお伝えします。

カクマ難民キャンプとはー30万人以上が暮らす場所
カクマ難民キャンプは、ケニア北西部に位置し、1992年に開設された歴史の長いキャンプです。隣接するカロベイエ難民居住区と合わせると、現在30万人以上の難民が生活しています。その出身国は25カ国以上にのぼり、南スーダン、ソマリア、コンゴ民主共和国など、さまざまな国から逃れてきた人々が暮らしています。
食糧配布の流れ ―多くの人に確実に届けるために
ワールド・ビジョンがカクマ難民キャンプで実施している食糧支援事業は、主に穀物を定期的に難民の方々に届ける「食糧配布事業」です。配布は2ヶ月に1回、6日間にわたって行われます。
私が配布日にキャンプを訪れてまず感じたのは、とにかく暑いということでした、この日の気温は40度、ケニア北部の強い日差しのもと、その日に食糧を受け取る方々は、まず屋根のない広場に集合します。
多くの人に、必要な量の食糧を間違いなく届けるため、配布はいくつもの確認を経て行われます。
① 対象者・カテゴリーの確認
その日に食糧を受け取る方々が集合し、受益者のカテゴリー※などを確認します。
② 生体認証による本人確認
配布場所では、パソコンと指紋や虹彩などの生体認証を使い、登録されている受益者本人であることを確認します。
③ 世帯ごとの配布量を確認
本人確認が終わると、世帯構成と、その日に受け取ることのできる食糧の量を確認します。
④ 食糧の受け取り
すべての確認を終えた後、食糧の配布通路へ進みます。カクマ難民キャンプでは、黄色エンドウ豆、米、ソルガム(モロコシ)、食用油などが配布されています。
工程そのものは、トラブルがなければ20〜30分ほどで完了します。ただ、受益者の人数が非常に多いため、集合から受け取り完了まで平均で3〜4時間かかることもあります。さらに停電やネットワークのダウンが起きると作業が一時停止するなど、予期しないトラブルが生じることもあります。
現場のスタッフは、こうした状況のなかで待ち時間を少しでも短くしようと、工程ごとに目を配り、滞りが生じればすぐに対応しながら配布を進めていました。この日もネットワークがダウンし作業が10分ほど中断しました。こうした予期せぬ事態にも対応しながら、多くの人に確実に食糧を届けるためスタッフは粛々と作業を進めていました。


食糧を必要な人へ確実に届ける仕組み
食糧が本当に必要な人に届くよう、支援の現場では受益者の検証がとても重要です。デジタルと生体認証を使った登録確認は、支援が正しい方に確実に届くための仕組みです。
また、配布場所にはヘルプデスクと意見箱を設置し、受益者の方々からの要望・フィードバック・苦情を受け付けています。これは「受益者へのアカウンタビリティ(説明責任)」を担保するための取り組みです。支援を受ける方々の声を拾い、事業に反映させていく姿勢は、人道支援の質を維持するうえで欠かせないものです。


難民の人々も食糧配布を支える「担い手」に
ワールド・ビジョンの食糧支援事業では、食糧配布の当日、難民の方々自身にもスタッフとしてさまざまな役割を担っていただいています。ヘルプデスクで要望やフィードバックを受け付ける係、WFPの倉庫から食糧を運び込む係、場内の案内係など、配布の運営を支える多くの場面で活躍しています。
「支援に頼らず自立したい」―難民の若者たちの声
配布日に運営スタッフとして働いていた若い男性たちと、少し話をする機会がありました。彼らの言葉が、とても印象に残っています。
「仕事をして自立したいので、職業訓練の機会が欲しい。できればITや動画編集などデジタル関連の技術を学びたい。」
「若い難民が大学に行く機会を、奨学金などで支援してほしい。大学を出て仕事に就けたら、家族を養い自立することができる。支援に頼らずに生活したい。」
難民というと、キャンプの外に出られず、ただ支援を待ち続ける人々というイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし私が実際に話した若者たちは、将来への明確な見通しを持ち、より良い生活を目指して前向きに考えていました。その姿は、「難民」という言葉から一括りにはできない、一人ひとり異なる夢や目標を持つ若者たちでした。
こうした積極性の背景には、地域の動きも関係しています。カクマ難民キャンプのあるトゥルカナ郡では、「シリカ計画」が進められています。これはカクマ難民キャンプとカロベイエ難民居住区をトゥルカナ郡の自治体に組み込み、国連機関やNGOが担ってきた行政サービスを最終的に地方政府へ移管することを目指す取り組みです。難民の方々が自立に向けた就労に積極的に取り組む姿勢は、こうした地域の変化とも重なっています。
こうした役割分担は、単に人手を確保するためではありません。難民の方々が事業の担い手として関わることで、支援の透明性が高まり、受益者コミュニティとの信頼関係を築くことにもつながっています。

現場に立って、初めてわかること
モニタリングとは、事業が計画通りに進んでいるかを確認し、課題を見つけて改善につなげるための活動です。しかし現場を訪れることは、数字や報告書だけでは伝わらないことを肌で感じる機会でもあります。
強い日差しのなか静かに列を守って待つ受益者の方々と、その一人ひとりに確実に食糧が届くよう奮闘するスタッフ。そして「自立したい」「学びたい」「家族を養いたい」と語る若者たちの声。現場で感じたこれらは、食糧を届けることの先にある支援の可能性を、あらためて考えさせてくれるものでした。
カクマ難民キャンプに暮らす方々に、確実に、尊厳をもって食糧が届けられるよう、ワールド・ビジョンはWFPとともに取り組みを続けています。
*受益者のカテゴリーについて
カクマ難民キャンプでは、受益者は脆弱性の度合いに応じて全4カテゴリーに分類されています。本事業が対象とするのはカテゴリー1と2です。カテゴリー1は、高齢者のみの世帯・女性が世帯主の世帯・子どものみの世帯・大家族世帯など、特に支援を必要とする脆弱性の高い世帯です。カテゴリー2は、カテゴリー1と同様の脆弱性を持ちながらも、世帯内に就労者がいる世帯です。
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ワールド・ビジョンは、世界の子どもたちが健やかに成長できるよう、開発援助、緊急人道支援、アドボカシーなどに取り組む国際NGOです。活動内容や大切にしている考え方をご紹介します。
人道・開発事業第1課にて、チャイルド・スポンサーシップによる地域開発プログラムとWFPとの協働により実施している食糧支援事業を担当している。
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