【アドボカシーの現場から】Vol.03 世界経済の行方と、子どもたちの未来 〜2025年世銀・IMF年次総会参加報告と世界銀行との対話〜
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アドボカシーの現場から ~声なき人の声となる~
「アドボカシーの現場から」は、ワールド・ビジョン・ジャパンの活動の三本柱のひとつであるアドボカシーの働きを、担当スタッフの声でお伝えするコラムです。
国際会議や政府との対話を通じて、子どもや声なき人びとの声を政策に反映する。見えにくいけれど、子どもたちの未来を変える力をもつアドボカシーの現場を、ワールド・ビジョン・ジャパンの柴田スタッフがお伝えします。
連載 3 回目は、2025 年 10 月にワシントン D.C.で開催された世界銀行・IMF 年次総会に参加した柴田スタッフが、現地の様子とそこから繋がった日本での対話についてお届けします。
世界経済の行方と、子どもたちの未来 〜2025年世銀・IMF年次総会参加報告と世界銀行との対話〜
2025 年 10 月 13 日から 18 日にかけて、アメリカ・ワシントン D.C.で世界銀行・IMF 年次総会が開催されました。世界各国の財務大臣や中央銀行総裁が集まるこの会議は、世界経済や経済協力の方向性を左右する重要な舞台です。
私は、ワールド・ビジョン・ジャパンとして、また「JFF ネットワーク(日本政府に対し、ODA、開発資金、気候資金、債務、租税協力、グローバルガバナンス改革などの分野で積極的な役割を果たすよう働きかけを行なう日本の NGO ネットワーク)」を代表して参加しました。


「12 億人の仕事」をどう生み出すか——ワシントンでの議論
今年の総会の最大テーマは「仕事」。今後 10 年で労働市場に参入する若者は 12 億人にのぼる一方、創出される雇用は 4 億人分に留まるとの厳しい試算が示されました。合同開発委員会(各国の財務・開発担当大臣で構成され、開発問題について世銀・IMF に助言する閣僚級フォーラム)では、世銀グループがインフラ整備・規制環境の改善・地域連結と貿易振興・民間資本の動員に向けた取り組みを進めることを確認。
また、質の高い教育・職業訓練の拡充や、女性・少女を含むすべての人の経済参加への障壁を取り除く取り組みの推進も支持されました。一方、市民社会からは鋭い問いも投げかけられました。雇用の「量」だけでなく「質」——ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)が実現されているかどうか——への評価枠組みが不十分との指摘や、開発資金調達が民間資本動員に依拠しすぎることで、最も支援を必要とする脆弱な国々や公共性の高い分野が取り残されかねないとの懸念が示されました。


チーム・ワールド・ビジョンの活動——子どもを開発の中心に
ワールド・ビジョンは今回の総会で、途上国向け資金で大きな割合を占める世界銀行のアジェンダの中心に子どもの権利が位置づけられるよう、多面的な働きかけを行いました。世界銀行の資金が、最も脆弱な子どもたちに届くよう、仕事・保健・農業・脆弱国支援などの各分野で具体的な政策提言を行いました。
また、世銀や Faith based organization(FBO:信仰に基づく組織)とともにサイドイベントを共催し、紛争・脆弱地域において FBO が果たす役割について議論を行い、国際的に発信しました。


報告会と世銀副総裁との対話——国内外をつなぐ
2026 年 2 月 9 日、JFF ネットワーク主催のセミナー「世界経済・『仕事』・開発資金・債務と 市 民 社 会 〜 世 銀 ・ IMF バ ン コ ク 総 会 に 向 け て 〜 」に登壇し、世銀・IMF 総会での議論や市民社会の反応を、高見博 世界銀行駐日特別代表や NGO 関係者とともに報告しました。
次回 2026年 10 月の世界銀行・IMF 総会は、タイのバンコクで開催される予定です。次回総会に向けて、参加者とともに日本の市民社会としてどのような働きかけをすべきなのか議論を行いました。国際的な政策議論を国内につなぎ、アドボカシーの輪を広げることも私たちの重要な役割です。

また、2 月 19 日には、ワシントンでの総会で生まれた繋がりから、世界銀行の西尾昭彦副総裁と JFF ネットワークとの面談が世界銀行東京事務所で実現しました。
西尾副総裁は、世界で最も貧しい国々を支援する世界銀行のグループ機関「国際開発協会(IDA)」の責任者です。西尾副総裁は、開発資金環境が急速に悪化する中で、IDA の持つ強みや特色を命綱として最大限活用することの重要性を強調されました。
また、多様な分野の最前線で活動する日本の NGO からの質問や問題提起を踏まえ、世銀のガバナンス改革、紛争などの危機に直面する脆弱な国々への支援戦略、気候変動対策、子どもや教育分野への支援、NGO の参画など、多岐にわたるトピックについて、率直な意見交換を行うことができました。そのうえで、4 月の世銀・IMF 春季会合、10 月の世銀・IMF 年次総会に向けて、今後も日本の市民社会との対話や連携を継続していくことを確認しました。


「拠出第 2 位国」の市民社会として
日本は世界銀行への拠出額でアメリカに次ぐ第 2 位(投票権割合 6.91%)1、IMF でも第 2 位(6.14%)2を占めます。一方で、日本の政府債務残高は GDP 比 235%と世界第 2 位の高さにあります3。
「お金を出す立場」であると同時に、自国も大きな財政課題を抱えているという現実は、日本の市民社会に独自の責任を与えています。世銀・IMF が最も脆弱な人々、とりわけ子どもたちのために適切に機能するよう、私たちは声を上げ続ける必要があります。
ワールド・ビジョン・ジャパンは、引き続き現場から見える課題を国際社会の議論に反映させるべく、アドボカシーを続けてまいります。皆さまのご支援が、子どもたちの声を世界に届ける力になっています。引き続き、子どもたちの豊かな未来のためにご理解とご支援をお願いいたします。
アドボカシー・シニア・アドバイザー 柴田 哲子
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※アドボカシー=貧困や紛争の原因について声をあげ、問題解決のために政策や社会の仕組みに働きかける活動

柴田 哲子(しばた のりこ)
東京外国語大学ロシヤ語学科卒業、東京大学大学院総合文化研究科修士(国際貢献)。
海外経済協力基金・国際協力銀行にて二国間援助に従事したのち、国際NGOの事務所長としてアフガニスタンに赴任し帰還民支援に携わる。現場での経験を通じ、課題解決のためには事業支援に加え政策を変えるアドボカシーが必要との思いを強める。2011年にワールド・ビジョン・ジャパン入団。2013年より子どもの権利に関するアドボカシーに従事。
SDGs市民社会ネットワーク進行役・開発ユニット幹事、教育協力NGOネットワーク副代表、こども家庭庁「子どもに対する暴力撲滅円卓会議、ワーキング・グループ」委員等、複数のNGOネットワークや政府の委員を務める。
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