スリランカの農村で出会った家族 ― トウモロコシの湯気の向こうに見えたもの

投稿日|2026年3月30日
執筆者:堀切 かおり

スリランカの農村で、トウモロコシの湯気が、やわらかく立ちのぼっていました。
その湯気の向こうに、家族の笑顔がありました。

自宅で採れたトウモロコシを茹でて
自宅で採れたトウモロコシを茹でて

私は、途上国の人びとと日本の皆さまをつなぐ仕事をしています。現地を訪れ、子どもたちの声に耳を傾け、その姿を日本へ届けることも私の役割です。
けれどその日、私は「届ける側」でありながら、むしろ自分の方が大切なものを受け取っていると感じていました。

スリランカの農村で出会った家族

今回訪れたのは、スリランカの農村地域。ご自宅が遠方だったため、コミュニティボランテ
ィアの方のお宅をお借りして、あるご家族にお話を伺いました。

リディマリヤッダの風景

そのご家族は、トウモロコシ農家のお父さん、お母さん、おじいちゃん、19 歳のお兄さん、
そして 10 歳の弟さんの五人家族。
弟さんは、生まれつき足に障がいがあり、最近手術を受けたばかりでした。
お父さんとお母さんは、子どもたちのことを話すとき、とても誇らしげな表情を見せてくださいました。

子どもたちの未来を信じる家族

19 歳のお兄さんは、いま大学進学に向けて猛勉強中です。将来はビジネスの世界で働きたいという目標があるといいます。
ご両親は、ご自身たちが十分な教育を受けられたわけではありません。
それでも「子どもたちにはしっかり学び、自分の人生を切り拓いてほしい」と強く願っていました。

「農家の仕事を継がなくてもいい。自分の道を歩んでくれていることがうれしいんだ」
そう語るお父さんのまなざしには、息子が自分とは違う未来を目指していることへの、心からの喜びが溢れていました。

お母さんは、下の弟さんのことを静かに話してくれました。
足が不自由な彼にとって、舗装されていないデコボコ道での通学は困難の連続です。雨の日はさらに厳しさが増します。
それでも彼は「学校が楽しい。勉強が好きだから」と笑顔で通っているのだそうです。
その姿を思い浮かべながら、お母さんは「とても誇りに思っています」と言いました。
わが子の可能性を信じ、支え続ける。
その愛の深さに、私は強く胸を打たれました。

分かち合うやさしさ

家族は、自分たちで育てたトウモロコシをたくさん持ってきてくれました。その場で蒸して、「どうぞ、もっと食べて」と何度も勧めてくれます。
19 歳のお兄さんまでが、「お腹はすいていませんか?」と私の体調を気遣ってくれました。

トウモロコシをもって会いに来てくれた家族

決して裕福とはいえない環境にありながら、そこにあったのは「不足」を嘆く言葉ではなく、
分かち合おうとする姿勢でした。他者を思いやるやさしさが、当たり前のようにそこにあったのです。

遠い国から来た私に心を開き、自分たちの誇りを見せてくれた家族。
日本とは異なる厳しい環境にあっても、子どもを信じ、他者を慈しむ。そこには、とても静かであたたかな強さがありました。

支援がつなぐ人と人

国や環境が違っても、人の中にあるやさしさは変わらない。
そしてそのやさしさは、人と人がつながることで、はじめて実感できるものなのかもしれません。
あの日、湯気の向こうにあったのは、そんな確かな体温でした。

リディマリヤッダのスタッフたち

私たちの取り組む「チャイルド・スポンサーシップ」は、途上国の家族と日本の皆さまをつなぐ支援の形です。
支援は、決して一方通行ではありません。つながることで、互いの中にあるやさしさに触れ、受け取り合うもの。
困難な中にあっても、人を思いやる心を忘れない彼らのやさしさを、日本の皆さまにもぜひ知っていただけたらと願っています。

こうした家族と日本の皆さまをつなぐ支援が、教育や保健、地域のインフラ整備などを通して、子どもたちが安心して成長できる環境を整えていきます。
遠い国の出来事のように思えるかもしれません。
けれど、つながることで見えてくるものがあります。
湯気の向こうにあった、あの家族の笑顔のように。


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チャイルドスポンサーとは

月々4,500円のご支援で、途上国の子どもの健やかな成長のために、子どもを取り巻く環境を改善する長期的な支援を行います。
支援による 環境の改善が、子どもに喜びをもたらし、可能性のある将来につながります。

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この記事を書いた人
マーケティング第2部 法人・特別ドナー課 シニア・オフィサー 堀切 かおり
マーケティング第2部 法人・特別ドナー課 シニア・オフィサー 堀切 かおり
短大卒業後、商社などでの勤務を経て、1998年にワールド・ビジョンに入団。マーケティング部門において、広報および新規支援者募集の分野で長年責任者を務めるなど、組織の成長に貢献。2025年の管理職定年を機に、現在は支援者と現地の人々を直接つなぐ業務に携わり、新たな出会いに心を動かされながら活動を続けている。