ネパール駐在という働き方―現場と暮らしのあいだで過ごした3年間
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ネパール極西での防災事業に携わりながら過ごした3年間。僻地への移動、同僚との日常、家族との暮らし――。現場と生活のあいだで経験した、ネパール駐在という働き方のリアルを綴ります。
*本事業の地域レジリエンス強化の取り組みについては、こちらの記事をご覧ください。
現場へ向かう道のり
外務省の「日本NGO連携無償資金協力」による助成ならびに皆さまのご支援を受け、 ネパールで3カ年にわたり取り組んできた防災事業が、まもなく一つの区切りを迎える。
縁もゆかりもなかったこの国での生活が、気づけばずいぶん長くなった。
せっかくの節目なので、このプロジェクトとともに過ごした日々を、少しだけ書き留めてみたい。
2年前、約4年のブランクを経て、再び現場のある仕事に戻ることが決まった。胸が高鳴ったのは事実だ。
同時に、「またあの現場通いが始まるのか」と、少し身構えた自分もいた。
現場は、机の上では見えないことを教えてくれる。
首都カトマンズから、空路、陸路で1、2日かけて向かう事業地。車道を離れてからは、コミュニティまで1~3時間のトレッキング。
距離があるからこそ見えてくる地域の豊かさや、課題の複雑さがある。

ただ、僻地。とにかく遠い。
遠い昔のブログにも、ネパールの事業地への道のりの大変さを書いた記憶があるが、今回も変わらない。
現場へ向かう道のりは、今でも毎回、少し覚悟がいる。
事業地は、チベット高原からネパール西部を南下し、インドでガンジス川へと合流するカルナリ川流域にある。
コミュニティに入るには、必ず吊り橋を渡らなければならない。
高所恐怖症の私にとっては、これはちょっとした試練だ。
けれど、バイクも山羊も水牛も、何事もない顔で渡っていく。
「そのうち慣れますよ」と言われ続けてきたが、残念ながら今も慣れてはいない。
それでも渡る。
怖さが消えるからではなく、その先に人がいるからだ。
移動は楽ではないし、環境も快適とは言いがたい。
それでも、やめたいと思ったことはほとんどない。
大変さよりも、数字では測れない手応えや、確かなやり甲斐のほうが、私を強く引き寄せていたのだと思う。


「持ち寄り」がつなぐ時間
そんな日々の中で、私が好きな時間の一つが、職場でのお昼だ。
ネパール人の同僚たちには、「持ち寄る」文化がある。
皆、気負わず、カレーの色移りが気にならないガラスやステンレスの容器に、家にあるものを入れて持ってくる。
私も息子の弁当の残りを詰めて、テーブルの真ん中に置く。それだけで立派なポットラックランチになる。
料理上手な同僚がいて豪華な日もあるし、バナナ一本を人数で分ける日もある。
でも、どちらも同じくらい楽しい。
仕事の話もするし、家族の話も、世界のニュースも飛び交う。
文化の違いを越えて関係が少しずつ深まっていく、この時間が私はとても好きだ。

駐在生活のなかで育まれた日常
そして、この長い駐在生活をいちばん自然に受け入れていたのは、息子かもしれない。
4歳でネパール生活を始め、今では13歳。
自転車で学校まで5分の道のりを走りながら、チヤ屋のおばちゃんやパン屋のおじさんと挨拶を交わす。
寒い朝には道端の焚火で暖をとらせてもらい、「遅刻するぞ」と近所の人に声をかけられることもある。
彼の日常の中には、特別なことではなく、ごく自然に小さなコミュニティがある。
家では、学校の出来事や友だちの話が話題になる。
その流れで、ネパールや日本のニュース、遠い国の出来事についても自然と話す。
身近な暮らしと世界の動きが、同じ時間の中に並んでいる。
それは、私が子どもだった頃とは、少し違う風景のように感じている。
現場では「地域のレジリエンス」を考え続けてきた。
振り返ってみると、こうした私自身の暮らしの中にも、同じような力が育っていたのかもしれない。
ネパールの地と人々に育ててもらっているのは、息子だけではない。
この生活そのものが、私を少しずつ変えてきた。

事業は一区切りを迎える。
けれど、現場で積み重ねてきた関係や経験が消えるわけではない。
現場と暮らしのあいだで過ごした時間。
それは劇的な出来事の連続というより、静かな日々の積み重ねだった。
もしこの文章が、「現場で働く」ということを、ほんの少しでも具体的に想像する手がかりになれば、うれしい。
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