子どもたちの学びを支える3つの力
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今年1月に亡くなったハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授は、著書*の中で、学校とは、子どもたちが「成功したという達成感を得ること」と「友人をつくること」の基本的な二つの用事を片付けるために、彼らが「雇う手段」である と書いています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大による学校の閉鎖・休校によって、今年は世界中の子どもたちがこの2つの用事を片付けることにたくさんの困難がありました。ここ最近、日本での感染もまた徐々に増加していますが、在宅勤務をしている部屋の窓から、毎朝子どもたちが連れ立って学校に行く様子が見えます。まだまだ多くの制約がある中でも、学校に行き、友達と一緒に遊んだり、学んだりする環境に戻っているのだな、と通学する様子を見送っています。
*『イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ』(How Will You Measure Your Life?)
新型コロナの影響で、ヨルダンでは再び学校閉鎖…
一方、私たちの支援地域の一つ、ヨルダンの子どもたちの状況は大きく違っています。
政府規制の緩和に伴い、9月中旬以降、再びCOVID-19感染ケースは再び急増し、現在は1日に3000~4000人、多いときで5000人を超える新規感染者が発生しています。11月10-15日の期間は再びロックダウン(都市封鎖)が行われました。学校は新学期に入った9月に2週間程度再開したものの、感染の増加によってすぐに9月17日から閉鎖となり、10月には12月末の学期末まで閉鎖されることが決定されています。
子どもたちは12月末まで、ヨルダン教育省が提供するテレビプログラムやオンラインプラットフォームを通じて学習を続けなければなりませんが、私たちが支援しているシリア難民、ヨルダン人の子どもたちにとって、遠隔で学び続けるのは決して容易なことではありません。
インターネット環境やスマートフォンなどの必要な機器が不十分な家庭もあります。また、多くの子どもたちが、時には数世帯もが同居するようなたくさんの家族と住んでいて、自分のほかにもたくさんの子どもたちがいるために、自分がお母さんやお父さんの携帯電話を使って学べる時間は限られています。
皆さまからの募金とジャパン・プラットフォームのご支援により実施しているシリア難民・ヨルダン人の子どもたちのための教育支援事業では、4月17日以降現在に至るまで、遠隔での補習授業を続けています。事業スタッフが力を合わせて、子どもたちの学びを守るため試行錯誤を重ねながら活動を行っていますが、感染拡大の予測不可能な状況とそれに伴って直面する様々な課題を前に、本当に子どもたちの役に立つ有益な活動が行えているのだろうか、と無力感や歯がゆさを覚えながらの模索が続いています。
「子どもたちは本当に学べているのか?」
「達成感を味わえているだろうか?」
「どうしたら遠隔でもシリア人とヨルダン人双方の子どもたちに交流の機会を提供できるだろう…?」
しかし、このような中にあっても、大きな3つの力に支えられ、活動を続けています。
補習授業の先生たちの熱意と努力
一つ目は子どもたちと直接接する補習授業の先生たちの熱意と努力です。
遠隔の補習授業では、先生が授業動画とワークシートを作成し、WhatsAppというSNSアプリを通じて週に2回配布します。さらに週に1回、Zoomによるオンライン授業を行っています。子どもたちはスマートフォンが使える時間に自主学習として動画を見て、ワークシートに取り組み、週に1回の授業で分からないところを自由に質問したり、他の子どもたちと議論をしたりして学びます。
動画の撮影やオンラインでの授業は、先生たちにとっても初めての経験で、初めはたくさんの苦労がありました。どんな動画や教材であれば、遠隔でも質を伴う学習を子どもたちに届けることができるのか、先生たちと意見交換を重ね、必要な研修や教員同士の学び合いの機会を何度も設けてきました。
算数のサファー・タナシャット先生も遠隔でも学習内容を分かりやすく伝えられるよう、子どもたちの理解度に合わせて、視覚教材などを駆使して工夫を凝らした動画や授業を届けるよう日々奮闘しています。

「遠隔での授業は私にとってもチャレンジでした。遠隔では子どもたちの注意をいかに引き付けられるか、毎回やり方を工夫しなければならないので」
足し算の授業では、サファー先生は小さいボールやそろばんのようなおもちゃなど、身の回りのあらゆるものを活用していました。
Zoomでの授業は、動画の内容をさらに詳しく説明し、子どもたちの質問に答えるだけでなく、子どもたちと先生がコミュニケーションを取る貴重な時間となっています。
「子どもたちはカメラ越しに先生に会えて安心した、と言ってくれました」

ほとんどの先生はパソコンを持っておらず、自前のスマートフォンで授業動画を撮影しています。授業計画も、教室での学習に比べれば、動画やワークシート、オンライン授業でどのように学習テーマを扱うか、綿密に計画する必要があります。数々のチャレンジに直面しながらも子どもたちに質を伴う教育を届けたい、という熱意と不断の努力によって、子どもたちの学びを守る活動が支えられています。授業動画やオンライン授業は回を追うごとにどんどんアップグレードしています。
外部専門家として事業に関わる小松太郎教授
二つ目の大きな支えは、日々悪戦苦闘している私たちに、日々的確な助言とインプットをくださる、外部専門家として事業に関わる上智大学、小松太郎教授です。緊急下の教育の専門家である小松先生には、昨年実施した評価調査よりご協力を頂いています。


COVID-19の影響で、評価調査の結果に基づき作成した今年の事業活動はことごとく変更を迫られていますが、その中にあっても先生に相談し専門家の助言を得ながら活動を進められることは、子どもたちの教育に本当に資する事業をしたいという思いをもって活動にあたる事業スタッフ全員にとって大きな支えとなっています。
事業目標の一つであるシリア難民とヨルダン人の子どもたちの相互理解や交流を促すために、もともと計画していた遠足や文化祭といった活動の実現はCOVID-19感染拡大の影響で難しくなっていますが、専門家の助言を得ながら遠隔にあってもシリア人とヨルダン人双方の子どもたちが社会的結束(Social Cohesion)を築くことに貢献できるような活動を実施したいと考えています。
活動を支えてくださるご支援者の皆さま
そして最後の大きな支えは、様々な形で活動を支えてくださるご支援者の皆さまです。
コロナ禍にあっても日本の子どもたち、難民の子どもたち、世界中の子どもたちの健やかな成長が守られるように、という温かい想いに日々接し、その想いに応えなければ!といつも励まされています。
学校に行けなくとも、子どもたちが「達成感を得る」「友人を作る」という2つの大切な用事に取り組むことができるよう、たくさんの温かい支えを頂きながら、チーム一丸となって知恵をふり絞り、支援を続けていきたいと思います。

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