バングラデシュで自然災害が多い理由|貧困との関係や支援状況も解説

投稿日|2025年3月27日
更新日|2025年7月30日
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この記事でわかること

バングラデシュは地理的条件と人口密度の高さにより自然災害に非常に脆弱で、サイクロンや洪水、干ばつが頻発しています。災害により家屋や生計手段を失った人々は、貧困から抜け出すのが困難となり「被災と貧困のスパイラル」に陥ることが多く、持続的な支援と防災対策の強化が求められています。

インドの東隣に位置するバングラデシュは、近年高い経済成長を続けている国の1つです。日本の4割ほどの国土に1億6,000万以上の国民が暮らしている人口密度の高い国ですが、バングラデシュは自然災害が多いことでもよく知られています。

この記事では、バングラデシュが災害にぜい弱な理由や頻繁に起こる災害について解説した上で、貧困から抜け出しにくい状況について、特に子どもたちへの影響に焦点を当てながらご説明します。バングラデシュの災害や貧困に対してどのような支援が行われているのかもあわせてご紹介しますので、私たちに何ができるのかを考えるきっかけにしていただければ幸いです。

バングラデシュは世界で最も災害に弱い国の1つ

バングラデシュで暮らす子ども
バングラデシュで暮らす子ども

バングラデシュはサイクロンや洪水、干ばつによる被害がとても多く、世界で最も災害にぜい弱な国の1つであると言われています。ここではそのように言われている理由と、特に頻繁に起こる災害について具体的な被害状況を交えて詳しく解説します。

バングラデシュが自然災害にぜい弱な理由

バングラデシュは国の中央部にガンジス川が流れており、国土の大部分はその支流や分流によって形成されるデルタ地帯です。バングラデシュはこうした河川の最下流に位置し、国外から大量の水が流入してくるため、河川を通じた流入量は国内降水量の約4倍と言われています(注1)。

また、バングラデシュは熱帯モンスーン気候の影響下にあり、雨期にあたる6月から9月の4カ月間には、年間降水量の70%の雨が降ります。バングラデシュ国内で雨が降る時期と、川を介した国外からの水の流入時期はほぼ重なるため、低平地デルタであるバングラデシュでは、必然的に洪水が発生する状況です。さらに、バングラデシュに面しているベンガル湾で毎年のように発生するサイクロンによる被害も頻発します(注1)。

このような地理的条件が、バングラデシュがサイクロンや洪水などの自然災害の被害を受けやすい主要因です。これに加え、北海道と九州を合わせたほどの広さの国土に1億6,000万人以上が暮らしているという人口密度の高さと、災害から直接的に影響を受けやすい農業従事者が多いことが、災害が起きたときの被害をさらに深刻にしていると言われています(注1)。

バングラデシュで繰り返されるサイクロン被害

バングラデシュでは、ほぼ1年おきにサイクロン被害が起きています。ベンガル湾で発生するサイクロンは高潮を伴って沿岸部に壊滅的な被害をもたらすことが多いです。特に、満潮や大潮と重なった場合は高さ5〜9mの波が沿岸に押し寄せますが、国土の大部分が低地であるため沿岸部から5〜8kmも内陸にまで海水が侵入することもあります(注2)。

サイクロンによる人的被害は深刻で、1970年11月に起きたサイクロンでは、最大50万人が犠牲になったとされています。その後も、1985年5月のサイクロンでは1万人、1991年4月のサイクロンでは14万人もの国民が命を落としました。このうち1991年のサイクロンは史上最大規模と言われており、政府発表では前述のとおり死者14万人とされていますが、国際救援機関は20万人を超えたと報告しています(注2)。

バングラデシュで頻発する洪水や干ばつ

バングラデシュは洪水が発生しやすい地理的な条件が揃っており、実際に毎年洪水によって平均で国土の約3割が毎年水に浸かるとされています(注1)。

ただし、平年時の規模の洪水は、農地に肥沃な土壌を運んだり漁場を自然に生み出したりするありがたい存在です。大きな川が氾濫して洪水が発生したときに家屋や作物、家畜を水没させる災害となります。(注2)。

また、バングラデシュでは雨期に降雨が集中するため、特に降雨の少ない北西部などでは乾期に干ばつ被害が発生しやすいです。温暖化によって降雨量にさらに偏りが生じれば、一部地域では干ばつがさらに深刻化すると考えられています(注1)。

バングラデシュの人々が陥る「被災と貧困のスパイラル」

バングラデシュで暮らす人々
バングラデシュで暮らす人々

このように頻繁に洪水やサイクロンによる被害を受けているバングラデシュでは、人々が「被災と貧困のスパイラル」に陥っている状態があります。災害で損失を被ることがどのように貧困につながりスパイラル状に連鎖していくのか、特に子どもたちへの影響に焦点を当てながら見ていきましょう。

バングラデシュの災害と貧困の関係

洪水などの災害によって住居が浸水すると、人々は住む場所や財産を失い、貧困に陥ります。それだけでなく、家を失った人々は貧しさゆえに住む場所を満足に選ぶことができないため、一層危険な場所に移り住むことになります。

当然ながら、移り住んだ危険な場所では災害が起きると再び被害に遭い、家と財産を失う可能性が高いです。このようにバングラデシュでは、災害が起きるたびに人々が財産を失い、ますます危険な地へと追いやられる負の連鎖が生じます。こうして被災をきっかけにどんどん貧困が深刻化していく状況が、バングラデシュで問題となっている「被災と貧困のスパイラル」です(注3)。

災害がバングラデシュの子どもにもたらす影響

国連児童基金(UNICEF)は、災害がバングラデシュの多くの家族を貧困に追いやっていることを指摘し、その過程で子どもたちが教育や保健サービスを受けられなくなっていると報告しています(注4)。

被災した人々が新たな生活の場所として選びがちなダッカなどの主要都市では、子どもたちがさらなる危険にさらされます。特に教育を通して基礎的なスキルを身に着けられていない子どもたちは、危険で低賃金な仕事で搾取されたり、女の子であれば早婚を強いられたりする危険性が高いです(注5 p.7)。

UNICEFバングラデシュ事務所の代表は、災害が子どもたちにもたらす影響の深刻さを表現して、「地方に暮らす家族がふるさとを後に移動するとき、子どもたちの子ども時代は終わります」と述べています(注4)。

バングラデシュの災害や貧困に対する支援

サイクロンによる被害を目の当たりにする子どもたち
サイクロンによる被害を目の当たりにする子どもたち

それでは、頻発する災害により貧困に陥ってしまうバングラデシュの人々に対してどのような支援ができるのでしょうか。ここでは日本政府がバングラデシュの災害に対して行っている支援事業と、ワールド・ビジョン・ジャパンがバングラデシュの貧困地域で行っている支援事業をご紹介します。

バングラデシュの災害に対する日本の支援

2007年11月にバングラデシュに上陸した過去最大級のサイクロン「シドル」では、900万人近くが被災し、3,000人以上が命を落としました。この被害に対して、日本政府は多目的サイクロンシェルターとそれに付帯する深井戸などの整備を支援し、サイクロン被災のリスク軽減を図りました(注6)。

ほかにも、日本政府はNGOへの資金拠出を行い、サイクロン被災者への物資配布や家屋修繕などの緊急支援を可能にしています。2020年5月にバングラデシュをサイクロン「アンファン」が襲ったときには、日本政府は緊急人道支援資金の受け皿として機能するNGOジャパン・プラットフォームに1億円以上の資金を拠出しました(注7)。

こうした災害時の緊急支援に加え、日本政府はバングラデシュの防災能力の強化を図る取り組みも行っています。例えばバングラデシュの防災関連機関職員の能力向上や、被害の防止軽減技術の研究開発など、幅広い取り組みを継続的に展開しています(注8)。

貧困地域を支援するチャイルド・スポンサーシップ

「被災と貧困のスパイラル」に陥っているバングラデシュの人々を助けるためには、災害時の緊急支援や防災能力強化のほかに、貧困に苦しんでいる家族への継続的な支援も欠かせません。

ワールド・ビジョンのチャイルド・スポンサーシップは、世界中の貧困地域において、それぞれの地域に根差した開発援助を行い、子どもたちの健やかな成長を目指すプログラムです。ワールド・ビジョンは、バングラデシュでもチャイルド・スポンサーシップを通した支援を続けてきました。1987年にワールド・ビジョンが日本での活動を開始した後、すぐにバングラデシュ大洪水への緊急支援を実施し、チャイルド・スポンサーシップの事業もバングラデシュからスタートしたという歴史があります。

チャイルド・スポンサーシップを通じて皆さまからお預かりする支援金は、子どもの人生に変革をもたらすことを目指し、長期でさまざまな支援活動に使われます。地域が抱える課題を解決し、子どもたちが希望ある未来を歩めるよう、地域の人々とともに考えて計画・実行していくという支援のあり方が、チャイルド・スポンサーシップの特徴です。

バングラデシュの貧困地域におけるワールド・ビジョンの支援

バングラデシュ北部のカルマカンダ地域では、26年間にわたってチャイルド・スポンサーシップの支援を中心とした活動が実施され、2019年9月に支援から卒業しました。ワールド・ビジョンは雨期には多くの土地が水没するこの地域で、保健栄養、教育、生計向上、防災・まちづくりの4分野で支援活動を行いました。

例えば生計向上支援では、累計3万人以上を対象に職業訓練を実施し、また、家畜や果樹の苗木等を提供しました。これにより、最初は農業のみで不安定だった収入源が多様化し、世帯あたりの収入は飛躍的に増加しました。ほかにも、低体重の子どもの割合は2008年時点で6割を超えていましたが、ワールド・ビジョンの支援を経て2017年には3割未満にまで減少し、2001年には65%であった小学校の就学率も2016年には95%を超えました。

こうした成果を上げるなかで、ワールド・ビジョンが何よりも重視してきたのは、自分たちが生きていく上で大切なことについて人々が学び、それを通して人々が変わることです。

支援終了に際して、現地からはライフ・スキルの研修を通して子どもたちが自分に自信を持てるようになり、勉強にも意欲的になったという声が寄せられました。さらに、子どもフォーラムができたことで児童婚が減ったというコメントもあり、支援によって人々の態度や地域のあり方に好ましい変化が起きたことが示されています。

このように、支援を受けた子どもたちやその地域のおとなたちが変わることができれば、また洪水が起きて被害を受けたとしても、きっと自分たちの足で力強く立ち上がることができるでしょう。

チャイルド・スポンサーシップでバングラデシュの子どもを支援しよう

バングラデシュで暮らす子どもたち
バングラデシュで暮らす子どもたち

チャイルド・スポンサーシップは、月々4,500円、1日あたり150円の継続支援をいただくプログラムです。チャイルド・スポンサーになっていただいた方には、支援地域に住んでいる子ども、”チャイルド”をご紹介します。

チャイルドは皆さまに支えられている存在です。毎年、支援地域がどのように発展しているのか、チャイルドがどのように成長しているのかなどを皆さまにご報告し、チャイルドからも1年に1度、手紙が届きますので、成果を実感していただけます。

子どもたちが災害や貧困によって教育の機会を奪われたり、様々な危険から守られて健やかに安全な環境で育ち、未来に夢を描けるようチャイルド・スポンサーシップへのご協力をお願いいたします。

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