【寄付だけじゃない】手紙を通じて開発途上国の子どもを支援する意義とは

投稿日|2025年3月26日
更新日|2025年7月30日
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この記事でわかること

ワールド・ビジョン・ジャパンでは、開発途上国の子どもたちを支援する際、寄付に加えて手紙での交流も重要視しています。手紙を通じて、支援者と子どもたちの間に絆が生まれ、子どもたちに希望や励ましを与えることができます。

「開発途上国の子どもたちに対して、ただ寄付するだけではなく交流したい」。そんな思いを持っている方に、寄付と一緒に手紙を届けることで、支援先と直接つながるという支援のかたちを紹介します。

開発途上国の子どもたちと手紙で交流を行うことは、支援を受ける子どもたちだけではなく、支援をする人にとってもさまざまな意義があります。開発途上国の子どもたちのもつ課題と、手紙のやりとりをする意義や方法について解説します。

開発途上国の子どもたちが抱える課題

チャイルド・スポンサーからのメッセージカードを高らかに掲げるブルンジの子どもたち
チャイルド・スポンサーからのメッセージカードを高らかに掲げるブルンジの子どもたち

貧困、教育、紛争、環境、気候変動など、世界は複雑な問題に直面しており、その多くが今もなお解決されないままになっています。これらの問題による被害を最も受けているのは、開発途上国と呼ばれる国で生活している人たちであり、なかでも子どもたちを取り巻く現状は大変深刻な状況です。

開発途上国の子どもたちが抱える問題には、以下のようなものがあります。

  • 栄養状態の低下
  • 劣悪な水衛生環境
  • ぜい弱な生計
  • 児童労働・児童虐待
  • 教育へのアクセス

栄養状態の低下は、子どもたちの命に関わる問題であり、最も支援を必要としている問題の1つです。1日あたり約14,520人以上、1年間では530万人の子どもが5歳になれずに命を落としているのが現状です。

その原因のひとつが衛生環境の悪さです。世界では、約7億8,500万人もの人々が安全な飲み水が手に入らない暮らしをしています。十分な収入を得られないことも大きな原因の1つです。約5人に1人が1日1.9ドル未満で生活しており、彼らの生計向上は貧困を脱するために必要不可欠です。

この貧困問題は、他にもさまざまな問題を引き起こしています。たとえば、家計を助けるために子どもが働かなければならず、世界の子どもの10人に1人が労働を強いられています。さらには低賃金で不当に搾取されたり、暴力を受けたりしてしまうような問題も複合的に発生しています。

子どもたちが働いたとしても家計を補うことで精一杯で、学校に通う余裕のない家庭も多くあります。そもそも学校に行く時間に仕事をしているため、教育の機会すら奪われているのです。約5,900万人の子どもたちが小学校へ通えておらず、中学、高校も合わせると2億5,800万人にものぼります

これらの状況を少しでも改善させるために、世界では多くのNGO団体が開発途上国の子どもに焦点を当てた支援活動を行なっています。そうした活動のひとつとして注目されているのが、ただ寄付で支援をするだけでなく、子どもたちと「手紙」のやりとりをすることで支援を行う方法です。

手紙を通じて交流することの意義

チャイルド・スポンサーからのメッセージカードを手に取るドミニカ共和国の少女
チャイルド・スポンサーからのメッセージカードを手に取るドミニカ共和国の少女

寄付だけでなく「手紙」のやりとりを行うことにどのような意義があるのでしょうか。手紙を通じて交流することで得られる影響を、支援を受ける子どもと、支援を行う寄付者の立場から見てみましょう。

子どもに与える影響

開発途上国には、これまでに支援を受けた経験がある子どももいます。事実、開発途上国では多くの団体が支援を行っており、中には幼い頃から支援を受けることに慣れている子どもたちもいるでしょう。

国際機関やNGO団体が一般的に行う支援は、物資や設備として提供されるものも多く、いわゆる「支援者の顔が見える支援」ではありません。そのため、誰か知らない人から与えられたものという感覚しかなく、与えられることに特別な感情を持っていないケースも少なくありません。

しかし、寄付とともに「手紙」を受け取ることは、子どもたちにとって「会ったことはないけど自分を支援してくれる人が世界のどこかにいる」ということの証明になります。

子どもたちにとって、家族以外に応援してもらうことや、勇気づけるような言葉をもらうことは貴重な体験です。手紙を受け取ることで、子どもたちは「自分を応援してくれている人」が明確にいることを実感します。「自分は一人ではない」と勇気づけられるかもしれません。

さらに、教育的な効果も期待できます。手紙を受け取れば、そこに何が書いてあるか知りたいという気持ちになります。そして、返事を書くためには文字を書きたいという意欲につながるはずです。

識字率や読み書きの能力が低いと言われている開発途上国の子どもたちにとって、手紙を読み、書くという行為は、何事にも変え難い学びのモチベーションになるでしょう。学力の向上は、彼らの将来を明るいものにすることのできる可能性に溢れています。

支援者に与える影響

寄付をする側にとっても、「手紙」は大きな影響を与えます。「寄付をしてみたい」と思ったときに感じることの一つが、本当にその寄付が支援者まで届いているかという不安ではないでしょうか。どの国の、どのような問題を解決するために使われるかについて説明や報告を受けたとしても、実際に確認する機会はあまりありません。

見返りを求めて寄付をしているわけではなくても、自分の寄付が役に立っているという実感を得たいという思いは誰もが持っているものです。確実に相手に届く「手紙」のやりとりを行うことで、寄付が役に立っていると実感することにつながります。

定期的に返事が返ってくることでしっかりと寄付が行き届いていることも確認でき、健やかに成長している様子を知ることもできます。自分は現地に行くことはできなくとも、「手紙」に自分の思いを乗せることで貢献することができるのです。そうした実感が、寄付する側にとっても継続的な支援を行うためのモチベーションになるでしょう。

ワールド・ビジョンの活動

チャイルド・スポンサーからの手紙を読むインドネシアの少女とワールド・ビジョンスタッフ
チャイルド・スポンサーからの手紙を読むインドネシアの少女とワールド・ビジョンスタッフ

ワールド・ビジョン・ジャパンでは、チャイルド・スポンサーシップを通して、アジア・アフリカ・中南米など世界21カ国の子どもたちに支援を届けています。この活動の中でも手紙による交流が行われています。

チャイルド・スポンサーシップとは

チャイルド・スポンサーシップとは、開発途上国の子どもに直接現金を送るだけでなく、子どもと支援者の絆を大切にした地域開発支援として発展してきた取り組みです。

1950年のワールド・ビジョン設立後、1953年からスタートした歴史ある取り組みで、毎月の継続的な寄付によって、子どもを取り巻く環境が改善されます。

たとえば、子どもたちの家族がより安定して収入を得られるように、畜産・農業支援、職業訓練、貯蓄グループ・生産者グループの活動支援に使われたり、安全に水が使えるように井戸や貯水タンクが設置されるほか、トイレの整備などにも寄付は使われます。

さらに、チャイルド・スポンサーシップの最大の特徴は、支援を通して紹介される子ども、”チャイルド”とのつながりが持てることです。

  • 年に1度届く写真つき成長報告書
  • 手紙での交流
  • 定期的に開催される支援地訪問ツアー

このように紹介されるチャイルドとの絆を大切にしているワールド・ビジョンならではの特徴があります。

手紙を送るまでの流れ

チャイルド・スポンサーシップの中でも「手紙」での交流について詳しく解説します。支援を通して紹介される子ども、”チャイルド”に手紙を送り、届くまでまでの流れは以下の通りです。

1. チャイルド・スポンサーシップに申し込む
2. チャイルドの情報や手紙の書き方についての情報が届く
3. チャイルド・スポンサーが手紙を送る
4. ワールド・ビジョン・ジャパン事務所に到着
5. 到着の記録をとり、翻訳(ボランティアが1通ずつ英訳します)
6. 1週間に1度、まとめて現地へ発送
※ 英語や現地語で書いた場合は、翻訳の時間が短縮されます(4~6のステップが省略され7へ)
7. 支援国のワールド・ビジョン現地事務所に到着
8. 1週間に1度程度、支援地域の事務所へ発送
9. 支援地域の事務所に到着
10. 到着の記録をとり、現地語に翻訳後、現地スタッフやボランティアが一人ひとりのチャイルドへ届けます

チャイルドが書いた返事は、逆のプロセスを経てチャイルド・スポンサーへ届けられます。手紙を送ると、通常2〜3カ月でチャイルドの元に届き、4〜5カ月程度で再びチャイルド・スポンサーに返事が届きます。

また、この他にも年に1度グリーティングカード(クリスマスカード・年末年始のご挨拶)がチャイルドから届きます。さらに詳しく知りたい方は、ワールド・ビジョン・ジャパンのHP内の「手紙の書き方」をご覧ください。

これまでの実績

一例を紹介しましょう。ケニアに住むナンシーさんは、チャイルド・スポンサーからの手紙に書かれた一文に励まされます。「ナンシーさん、あなたの写真を私の寝室に飾っています。毎朝あなたの笑顔を見ると、とても幸せな気持ちになるんです」

女の子が学校に行くことに対して好意的ではない地域でしたが、ナンシーさんはチャイルド・スポンサーからの言葉を自身に変え、地元の高校をトップの成績で卒業しました。その後は国で一番の大学、ナイロビ大学の修士号をとり、開発援助の仕事に就いたのです。

2019年時点で、チャイルド・スポンサーシップによる支援実績は以下の通りです(注2)。

チャイルド・スポンサー数:48,426人
チャイルド数:57,575人
チャイルドからスポンサーへの手紙:約40,000通
チャイルド・スポンサー以外の募金者数:15,685人
連携企業・団体数:2,901社・団体

このように、多くの人々からの支援によって、支援するすべての子どもたちが健やかに成長できる世界を目指して活動しています。

チャイルド・スポンサーシップに参加するには

ワールド・ビジョンのチャイルド・スポンサーに参加するには、ホームページにある専用ページから申し込みができます。支援内容についての詳細や個人情報等を入力していただくだけで、簡単に申し込むことができます。

また、ワールド・ビジョンでは、世界のさまざまな問題やそれに対する取り組みをまとめた資料をお配りしています。皆さま一人ひとりが世界の問題や現状を「知るため」のきっかけとして、ご活用いただけます。詳しくは、「伝える・広める」をご覧ください。

ワールド・ビジョンでは皆さまのご支援・ご協力をお待ちしています。
ぜひこの機会に、あなたもチャイルド・スポンサーシップにご参加ください。

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