日本で行う子ども支援活動(国内支援)
貧困・災害・権利侵害から子どもを守る国内支援活動。
日本では9人に1人の子どもが貧困状態にあります。
子どもに対する暴力や居場所の不足も問題となっています。
子どもたちの豊かな成長のため、ワールド・ビジョン・ジャパンは日本国内で子ども支援を行っています。

日本では、9人に1人の子どもが相対的貧困の状態にあると言われています。
相対的貧困とは、その国や地域の生活水準の中で、多数派と比べて経済的に厳しい状態にあることを指します。家計が苦しく、十分な食事がとれないだけでなく、習い事や進学を諦めたり、日常生活の中で多くの我慢を強いられるのが、その実状です。
貧困に加え、災害、暴力や虐待、安心して過ごせる居場所の不足など、日本の子どもたちは心身の健康に影響を及ぼすさまざまなリスクにさらされています。2024年には子どもの自殺者数が過去最多となり、子どもを取り巻く環境の改善は日本社会にとって深刻な課題となっています。
子どもたちは、どのような環境にあっても、一人ひとりが人生の主人公であり、権利の主体です。厳しい状況の中でその力が一時的に弱まることがあっても、再び回復できるよう寄り添い、支えること。それが私たちの目指す支援のあり方です。
ワールド・ビジョン・ジャパンは、国内の子どもたちが豊かに成長できる社会を目指し、2022年から「国内子ども支援事業」を開始しました。現在、助成金事業、中野子ども支援、全国入学お祝い金、国内災害への備え、子どもの権利啓発の5つの活動に取り組んでいます。
日本国内で取り組む5つの子ども支援活動
私たちが目指しているのは、「国内のすべての子どもが、豊かないのちを生きられる社会づくりに貢献すること」です。
その実現に向け、次の2つの視点を大切にしています。
- 課題に応じて対象を絞る「ターゲット限定」の取り組み
- すべての子どもに開かれた「ターゲット非限定」の取り組み
さらに、子どもを直接支える「直接支援」と、子どもを取り巻く環境や社会を変える「中間・間接支援」この両方を組み合わせながら、事業を展開しています。
2026年度は、以下の5つの活動に取り組んでいます。
活動1:助成金事業
活動2:中野子ども支援事業
活動3:全国入学お祝い金事業
活動4:災害時の子ども支援能力強化支援
活動5:子どもの権利の啓発と実現の支援

助成金事業
Grants

「国内のすべての子どもが、豊かないのちを生きられる社会づくりに貢献すること」という目的を実現するためには、ワールド・ビジョン・ジャパンを含む全国の地域団体が、それぞれの強みや特長を生かして力を発揮することが欠かせません。
そのためワールド・ビジョン・ジャパンでは、助成金事業を通じて、子ども支援に関する専門性や特長を持つ地域団体の活動を後押ししています。
日本において、子どもの健やかな成長を脅かす深刻な課題のひとつが、DV・虐待です。
DVや虐待などの被害を受けた人が一時的に避難できる場所(シェルター)には、各都道府県に設置された公的シェルターと、全国各地でNPO等が運営する民間シェルターがあります。民間シェルターは、高い専門性と柔軟性を生かし、公的シェルターだけでは対応が難しい複雑なニーズにもきめ細かく対応していますが、活動基盤の弱さが課題となっています。
民間シェルター等を支える助成制度とは
DV・虐待被害者等の今を守り、未来を支える――多岐にわたる支援活動を行っていることが、民間シェルター等の大きな特長です。
多くの民間シェルター等では、緊急避難への対応などにより事前の計画が立てにくく、施設の賃料や人件費といった固定費が活動の大きな負担となっています。
そのため、ワールド・ビジョン・ジャパンの助成金は、柔軟性を重視し、他の助成金では対象となりにくい固定費にも活用できる制度としています。
また、民間シェルター等の多くは、緊急避難にとどまらず、回復や自立に向けた支援プログラムにも取り組んでいます。
このため本助成金では、宿泊型支援に限らず、食・学習・居住など生活を支える活動をはじめ、啓発、相談、同行支援、情報提供、自立・回復支援、外国籍女性や若年女性への支援、子どもや親子の心のケア、ステップハウス、支援者養成の研修、これらに関わる人件費や施設の固定費まで、幅広く対象としています。
学び合いを通じた伴走支援
ワールド・ビジョン・ジャパンでは、助成先の民間シェルター等と密接に連携する「伴走支援」を大切にしています。
事業期間中は、現地訪問やオンラインによる定期的なモニタリングを通じて活動の進捗や課題を確認し、各団体の強みや特長、地域性を踏まえながら、助成金のより良い活用や活動改善に向けた提案や情報提供を行います。
国際NGOであるワールド・ビジョン・ジャパンと、地域に根ざした民間シェルター等が、それぞれの視点や経験を持ち寄り、学び合いながら協働することで、支援の質を高め、子ども一人ひとりの権利がより確かに守られる体制づくりを進めています。
助成による成果・支援の広がり
ワールド・ビジョン・ジャパンは、2025年度までに全国9都道府県・15団体の民間シェルター等に助成を行ってきました。2026年度には、全国を対象とした募集に加え、企業連携による地域限定型の募集も実施し、6道府県・8団体に助成を開始しました。
助成金は、子どもや保護者が安心して過ごせる居場所の確保や、支援活動の継続・拡充に活用されています。
助成先の団体から実際に届けられた声の一部を紹介します。
- 「本助成金を活用し新たにシェルターを借り、運用開始した直後に、多子世帯の受け入れにつながった。この物件がなければお断りするしかなかった」
- 「(深夜・早朝の送迎支援について)これまではボランティアで行っていたが、本助成金で交通費を出せるようになり、スタッフの負担を軽減し安定的に実施することができるようになった」
- 「家賃や水道光熱費に充てられる助成金は少ないのでとてもありがたい」
- 「本助成金があったおかげで会計専門知識のある人材を雇うことができた」
ワールド・ビジョン・ジャパンは、助成金事業を通じて、子どもを支援する全国の地域団体の活躍を支え、子どもの権利がより確かに守られる社会づくりに貢献します。

中野子ども支援事業
Child Support Activities in Nakano

ワールド・ビジョン・ジャパンは、海外での支援活動において、子どもを中心に、家庭や地域全体を支えることを大切にしています。
子どもが豊かに成長するためには、一人ひとりが本来持っている力を発揮できる環境が必要であり、子どもを取り巻く家庭や地域の環境そのものを改善していくことが欠かせないと考えているからです。
日本では、社会構造の変化により、地域のコミュニティーや人とのつながりが希薄になりつつあります。少子化が進む中で、子どもたちは社会の少数派となり、子どもの声や権利が後回しにされがちな状況も見られます。
こうした中、海外での支援活動で培ってきた経験を生かし、国内でも子どもを中心とした地域づくりを身近なところから始めたい――その思いから、事務所のある東京都中野区を拠点に、「中野子ども支援事業」に取り組むことにしました。
「中野子ども支援事業」では、地域の子どもたちが安心して過ごせる居場所「みんなのへや」を中心に、地元・中野区に根ざし、子どもたちの成長を地域とともに見守る「こどもまんなか」の地域づくりを進めています。
地域の子どもの居場所づくり
ワールド・ビジョン・ジャパンは、2023年8月から東京都中野区で、放課後や長期休み中の子どもの居場所「みんなのへや」を運営しています。
家庭や学校以外の子どもの居場所は全国的に不足しており、中野区も例外ではありません。学童保育では待機児童の発生や、高学年になると利用が難しくなるといった課題があります。居場所の不足は、子どもの成長に欠かせない遊びや体験の機会を奪うだけでなく、保護者の経済的・精神的負担にもつながっています。
「みんなのへや」は、子ども一人ひとりが安心して過ごせる場所を目指しています。子どもたちは、一人で過ごしたり、友達と遊んだり、宿題をしたりと、それぞれが自由に時間を過ごします。何をするか、また何をしないかは子ども自身が選び、スタッフは安全に配慮しながら寄り添って見守っています。
通常は放課後に開催し、長期休み中は日中から実施しています。ランチクッキングや、7月の夕涼み会、12月のクリスマス会など季節のイベントを通じて、さまざまな体験ができるプログラムを行っています。企画や運営には子どもたちの声を反映し、保護者や地域の方々の協力も得ながら、みんなでつくる地域の居場所として「みんなのへや」は少しずつ成長しています。

食支援の提供
「食」は、子どもたちの健やかで豊かな成長に欠かせないものです。「みんなのへや」では、子どもたちが一緒に楽しく食事をする時間を大切にしています。放課後の開催時には、多くの子どもが夕食を食べてから帰り、友達やスタッフとテーブルを囲むひとときには、自然と笑顔があふれます。長期休み中のランチクッキングでは、子どもたちが自分で食材を選べるよう、メニューや調理方法を工夫しています。
また、「みんなのへや」では、希望する家庭に向けて持ち帰り用の夕食も提供しています。年々高まる食事支援のニーズを受け、2025年度には中野区の子ども食堂運営助成金を活用し、こども食堂としての機能を強化しました。
現在は、地域で実施されているフードパントリーへの物品提供を年に一度行っていますが、今後は、より多くの子どもや保護者に食の支援を届けられるよう、ワールド・ビジョン・ジャパンとしてのフードパントリーの実施を目指しています。
地域と協働した「こどもまんなかの社会」づくり
2023年4月に発足したこども家庭庁は、「こどもまんなか」をスローガンに、すべての子ども・若者が身体的・精神的・社会的に将来にわたって幸せに暮らせる「こどもまんなか社会」の実現を目指しています。こうした理念のもと、地域においても、子ども一人ひとりの育ちや体験を大切にする取り組みが求められています。
ワールド・ビジョン・ジャパンでも、「みんなのへや」を拠点に、地域の他団体と積極的に連携しながら活動の幅を広げています。これまでに、他のNPOと協力して地域イベントに参加し、世界の絵本に触れる企画を実施したほか、別の子ども食堂の協力により、夏休みにお祭りの屋台のような焼きそばやフランクフルトを楽しむ機会を設けました。こうした取り組みは、子どもたちの遊びや学び、食の体験を豊かにし、子どもたちや保護者からも好評を得ています。
また、地域の企業からは、「みんなのへや」へのボランティア参加やフルーツの提供など、さまざまな形での支援・協力をいただいています。今後も、「みんなのへや」を中心に、町会や学校、行政、他の地域団体などと協働しながら、「こどもまんなか」の社会づくりに取り組んでいきます。

全国入学お祝い金事業
Financial Assistance for Enrolment

子どもの約9人に1人が相対的貧困の状態にある日本では、身近なところにも、経済的な困難を抱えて暮らす子どもたちがいます。こうした家庭では、入学時に必要な制服や学用品、通学費などの出費が重なり、進学を喜ぶ一方で、不安を感じることも少なくありません。
ワールド・ビジョン・ジャパンは、このような状況にある子どもたちが希望をもって新たな一歩を踏み出せるよう、「全国入学お祝い金事業」を実施しています。本事業は、子ども一人ひとりへの経済的支援に加え、進学という大切な節目を社会全体で祝福する仕組みづくりでもあります。子どもが自らの可能性を信じ、未来へ向けて成長できる環境を支えることを目指しています。
経済的困難を抱える家庭への「成長の節目」のサポート
経済的な事情により、子どもが経験や選択の幅を制限されてしまうことがあります。そうした状況が重なることで、さまざまな機会が失われていくことは、子どもの貧困がもたらす深刻な問題の一つです。
ワールド・ビジョン・ジャパンの全国入学お祝い金事業は、経済的に困難な状況にある家庭の子どもが、入学時に直面する経済的負担を和らげる取り組みです。この支援を通じて、進学という大切な節目に、子どもたちの経験や選択の幅を広げることを目指しています。
進学を励ます「入学お祝い金」
ワールド・ビジョン・ジャパンの入学お祝い金は、出費が重なりやすい中学・高校進学期に着目した進学支援です。お祝い金は、現金や図書カードに加え、学びや遊びの体験機会などを組み合わせて提供し、子どもの学びと成長を後押しします。
日本全国の生活困窮家庭の子どもが、経済的な事情によって学びの機会を狭めることなく、自分の可能性に目を向けられるよう支援しています。進学の喜びが、未来への希望へとつながることを願った取り組みです。
応援されている実感が、未来への力に
ワールド・ビジョン・ジャパンは、これまでに2023年度は100名、2024年度は200名、2025年度は220名の子どもに入学お祝い金を提供してきました。
これまでに実施したアンケートには、
「頑張っていることを思ってくれる人がいると思うと、つらいことも頑張れそうです」
「ひとり親家庭で、入学を祝ってもらうことがなかったので、今回のお祝いは本当に嬉しかったです」
といった声が寄せられています。
こうした声から、お祝い金や体験の機会が、子どもたちにとって「応援されている」という実感となり、自信や将来への希望につながっていることがわかります。また、保護者にとっても、社会とつながり、支えられていると感じるきっかけとなっています。
中学・高校進学期の子どもたちの現在と未来がより豊かなものとなるよう、社会全体で「お祝い」し、支える仕組みとして、この取り組みを少しずつ広げています。

災害時の子ども支援能力強化支援
Disaster Preparedness

災害は、一瞬にして人々の日常を奪います。突然の「非日常」の中で、子どもたちは、恐怖や喪失の体験、避難や避難先での不自由な生活、学校・部活・習い事の中断など、さまざまな困難に直面します。
命を守り、衣食住の基礎的なニーズを満たすことと同様に、子どもの安全と安心を支え、「日常」を取り戻すことは、心身の回復にとって非常に重要です。しかし、災害時の子ども支援は、時に後回しにされがちです。
このため、ワールド・ビジョン・ジャパンは、子ども支援を中心に、家庭や地域の日常の回復を支える視点から、国内災害支援に取り組んでいます。
平時からの備えとして、全国の子ども支援団体を対象に、災害時の心のケアや居場所づくりに関する研修の実施や、政府への政策提言などを行い、災害時にも子どもを守れる社会づくりを進めています。
また、災害発生後には、子どもの心のケアや居場所づくり、学校などの再開を支援し、「子どもが安心して遊び、学べる日常の環境」をできるだけ早く取り戻すことを目指しています。
災害時に子どもを守るための備え
災害時にも子どもたちを守るためには、子どもと身近に接するおとなの心構えや、日頃からの備えが重要です。
このためワールド・ビジョン・ジャパンは、子ども食堂や子どもの居場所、教会学校、町内会など、日常的に子どもに関わる支援者や地域の方々を対象に、研修を実施しています。
研修では、子どもの心のケア(心理的応急処置:PFA)や、災害時の子どもの居場所づくり(CFS)、子どもと若者のセーフガーディングなどを扱っています。あわせて、災害時の子ども支援に関する政府への提言活動にも取り組んでいます。

災害時の子ども支援
災害発生時には、現地の状況やニーズを丁寧に見極めながら、子ども支援を中心としたプログラムを検討・実施します。
令和6年能登半島地震の発生時には、ワールド・ビジョン・ジャパンのスタッフが現地に赴き初動調査を行い、緊急物資の支援、子どもの遊びの支援、子どもの居場所づくり、子ども支援者を対象とした心のケアの研修、学校などの再開に向けた物資支援を実施しました。
子どもの権利の啓発と実現の支援
Child Rights

すべての子どもは、生まれながらに「子どもの権利」を持っています。これは、1989年に国連総会で採択された「子どもの権利条約」によって保障されています。
同条約には、「差別の禁止」「子どもの最善の利益」「生命・生存および発達に対する権利」「子どもの意見の尊重」という4つの基本原則があり、これらは日本の子どもに関する基本法である「こども基本法」にも反映されています。
ワールド・ビジョン・ジャパンは、学校や行政、地域団体、他のNPOなどと協働し、子どもの権利を伝え、子ども一人ひとりが尊重される社会をつくるための啓発活動に取り組んでいます。
日本社会への子どもの権利の普及
ワールド・ビジョン・ジャパンは、「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」の実行委員団体として、全国200を超える賛同団体・企業とともに活動しています。
同キャンペーンは、日本社会において「子どもの権利」の考え方が広く浸透し、国や自治体、家庭などあらゆるレベルで、子どもの最善の利益が確保される社会を実現することを目指し、2019年にスタートしました。
現在は、ネットワーク構築や政策提言、啓発などの活動に取り組んでいます。
中野区での子どもの権利の啓発
ワールド・ビジョン・ジャパンは、事務所のある東京都中野区で、中野区立中野東図書館との共催により、2022年から「子どもの権利写真展」を開催しています。
毎年、「世界子どもの日」および「中野区子どもの権利の日」である11月20日前後に、中野区立中野東図書館にて、子どもの権利をテーマとした写真パネルの展示や、来館者に子どもの権利を紹介し、考えていただくコーナーを設置するなど、幅広い世代にわかりやすく伝える工夫を行っています。
また、国際NGOであるワールド・ビジョン・ジャパンの特長を生かし、多文化共生について地域の皆さまとともに学ぶ勉強会も開催しています。勉強会では、講師を招き、日本国内における多文化共生の課題や取り組みについて、具体的な事例をもとに学んでいます。
