ウクライナ危機から4年 学校と暖房のない日常 ーデジタルも活用した子どもと保護者のための心の支援

投稿日|2026年2月9日

特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン

まもなく4年を迎えるウクライナ危機。気温が日中でもマイナス16度、夜間はマイナス20度まで下がり、停電が長引く中、子どもたちにとってこの冬は、最も過酷で危険な冬となっています。

世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョンとその現地パートナーは、戦争勃発以来、100万人以上の子どもを含む230万人以上の人々に食料、非食料品、現金支援、保護、教育、生計支援、メンタルヘルス支援を提供してきました。いま、ウクライナの子どもたちと家族を守るため、支援を拡大しています。長引く戦時下で子育てをする保護者に向け、デジタル技術を活用した新たな心理社会的支援の試みも始めています。

最悪の冬、極寒の中の子どもたち

凍える寒さに耐えているウクライナ子どもたち
凍える寒さに耐えているウクライナ子どもたち

エネルギーインフラが破壊され、住宅、学校、病院では、電気、暖房、水が使えない状態が続いています。日中の気温が氷点下16℃、夜間の気温が氷点下20℃まで下がる中、一部地域では最大36時間に及ぶ長期停電が発生し、子どもたちは1日16〜17時間も電気のない生活を強いられています。凍えるような寒さに耐えている子どもたちは、健康、教育、そして精神的健康が深刻な危険にさらされています。

ワールド・ビジョンのウクライナ危機対応ディレクターのアルマン・グリゴリアンは、「子どもたちにとって、戦争が始まって以来最悪の冬だ」とし、「長時間の暗闇と寒さは子どもたちの健康を害し、ストレスと不安を増大させ、精神的な健康にも悪影響を及ぼしている」と述べています。

「電気が一日中止まってしまうこともあります。本を読んだり、宿題をしたりするのも大変です。寒さがずっとおさまりません。家の中でも、手袋や帽子、上着を着て過ごしています」ーグロリアちゃん、12歳、キーウ

「しょっちゅう停電します。暖房がなくて、暖まる方法もありません。携帯電話やスマートフォンは、すぐにバッテリーが切れてしまいます。でも、情報を知ったり、助けを呼んだりするのに必要です。学校の授業はオンラインで、電気やWi-Fiが使えないと、勉強するのはむずかしいです」ーマークくん、8歳、キーウ

ワールド・ビジョンは、各家庭が光熱費や生活必需品をまかなえるよう、現金給付による支援を行い、前線地域では、現地パートナーと連携し、マットレス、寝袋、高保温ブランケット、モバイルバッテリー、保温ボトル、乾燥燃料付きの携帯用ストーブなどを含む越冬支援キットを配布しています。

安心できる場所をつくる―心理社会的支援の取り組みと子どもたちの声

WHOの最新報告によると、過去1年間に不安、うつ、あるいは深刻なストレスの症状を経験したと答えた人は、ウクライナ人の70%以上にのぼります。子どもたちもまた、大きな不安とストレスの中を生き抜かなくてはなりません。専門家は、幼少期のトラウマが、脳や神経系の発達に根本的な影響を与えるとしています。

ワールド・ビジョンは、現地のパートナーと協力して、ウクライナ全土で子どもを中心においた地域密着型のメンタルヘルス・心理社会的支援(MHPSS)を提供しています。特に、「チャイルド・フレンドリー・スペース」と呼ばれる子どもにとって安全な空間は、重要な救済策となっています。

ウクライナ東部のドニプロにある「チャイルド・フレンドリー・スペース」。子どもたちは遊びや学習、心理的サポート、セラピー活動などを通じて、安心感と子どもらしい日常を取り戻していく。

ウクライナ東部のドニプロにある「チャイルド・フレンドリー・スペース」に通う9歳のダイアナちゃんは、離れ離れになった父親にめったに会うことができません。ここに通い、つらい思いを話せるようになったことで、将来は心理士になって人を助けたいと話します。

2025年10月の時点で、ウクライナ全土にワールド・ビジョンが支援する11の「チャイルド・フレンドリー・スペース」があり、今年支援した2,049人を含む、 9万人以上の子どもたちに安全な環境を提供しています。

首都キーウにあるワールド・ビジョンが支援する「チャイルド・フレンドリー・スペース」
首都キーウにあるワールド・ビジョンが支援する「チャイルド・フレンドリー・スペース」

保護者のためのデジタル支援 ‟危機における子育てチャットボット”

ワールド・ビジョンのウクライナ緊急対応チームは、国際的な研究機関や国連機関が共同して開発した「Parenting for Lifelong Health」と連携し、「Parenting in Crisis 危機における子育てチャットボット」というデジタルツールを立ち上げました。このツールは、戦火が長引く中でウクライナの保護者に対し、子どもの保護、心理社会的支援、前向きな子育てに関すして、研究に基づいた信頼できる情報を提供するものです。

チャットボットを活用する保護者
チャットボットを活用する保護者

調査によると、ウクライナでは、世帯の84%が子どもに心理社会的な苦痛が見られると回答しており、5歳未満の子どもの約3人に1人が、不安や心の傷の目に見える兆候を示しています。

「危機における子育てチャットボット」は、こうした課題に対応するため、メッセージアプリを通じて、実践的で文化的背景に配慮した情報を保護者に提供します。テキスト、音声、イラスト、短い動画を活用し、ストレスの対処法、前向きな子育て、子どもの保護に関する具体的な方法を実践的に紹介しています。遠隔地や通信状況の限られた地域でも利用が可能です。

職を失い、避難を余儀なくされ、収入が減少し、常に治安への不安も抱える中で、保護者自身も、子どもを十分に支えきれなくなっています。本取り組みは、そうした状況に置かれた保護者を少しでも支えることを目的に、現在ウクライナで500人の保護者を対象に試験運用されています。今後は影響を受ける州全体で数千の家族に届くように規模拡大される予定です。

ワールド・ビジョンは、これからも継続的なウクライナにおけるニーズに対応するため、ウクライナの子どもたちとその家族の声に耳を傾けながら、緊急支援と長期的な復興プログラムの両方を提供し続けます。

アートセッションに参加するダーシャちゃん(3歳)
アートセッションに参加するダーシャちゃん(3歳)

避難を強いられている子どもたちに心身の保護を届けるために

ワールド・ビジョン・ジャパンでは、難民支援募金へのご協力をお願いしています。詳しくはこちら

ワールド・ビジョン・ジャパンとは

キリスト教精神に基づき、貧困や紛争、自然災害等のために困難な状況で生きる子どもたちのために活動する国際NGO。国連経済社会理事会に公認・登録された、約100カ国で活動するワールド・ビジョンの日本事務所です。