【アドボカシーの現場から】Vol.02 子どもへの暴力撤廃へ!〜世界の動向、日本の動向〜

投稿日|2026年2月18日
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アドボカシーの現場から ~声なき人の声となる~

「アドボカシーの現場から」は、ワールド・ビジョン・ジャパンの活動の三本柱のひとつであるアドボカシーの働きを、担当スタッフの声でお伝えするコラムです。

国際会議や政府との対話を通じて、子どもや声なき人びとの声を政策に反映する。見えにくいけれど、子どもたちの未来を変える力をもつアドボカシーの現場を、ワールド・ビジョン・ジャパンの柴田スタッフがお伝えします。

連載2回目は、2024年にコロンビアのボゴタで初開催された「子どもに対する暴力撤廃のためのグローバル閣僚会議」に参加した柴田スタッフが、2026年1月1日発行の公益財団法人日本キリスト教婦人矯風会発行「k-peace」46号に寄稿した記事を紹介します。

EVACとは「End Violence Against Children(子どもへの暴力を終わらせる)」の略称で、子どもへのあらゆる暴力をなくすことを目的とした取り組みです。国連や各国政府、市民社会が連携し、政策づくりや啓発、現場支援を通じて、子どもが安心して生きられる社会の実現を目指しています。

子どもへの暴力撤廃へ!〜世界の動向、日本の動向〜

※公益財団法人日本キリスト教婦人矯風会発行「k-peace」46号(2026年1月1日発行)を許可を得て転載しています。

国連によると、世界の2〜17歳の子どもの約半数が、過去1年間に何らかの暴力を経験しています。こうした状況に終止符を打ち、すべての子どもが希望をもって生きることができる社会を実現するため、国内外で様々な取り組みが進められています。

特に2025年は、国際的にも国内的にも子どもへの暴力撤廃に向けた潮流が大きく加速してきました。本稿では、EVAC日本フォーラムの活動を中心に、世界と日本の動きを紹介します。

EVAC日本フォーラムとは

2016年、SDGsターゲット16.2(子どもに対する虐待、搾取、人身売買、暴力の撤廃)達成を目指し、国連事務総長の主導で「子どもに対する暴力撤廃のためのグローバル・パートナーシップ(GPVAC)」が設立されました。

日本では2017年にその理念に賛同したNGO・非政府組織が中心となり、子どもに対する暴力撤廃EVAC日本フォーラムを設立。現在、日本フォーラムを含め、NGO、NPO、非営利組織、学会など131団体が参加し、様々な機会に協働しています。

国際的な潮流

2024年11月、コロンビアの首都ボゴタで第1回子どもに対する暴力撤廃のためのグローバル閣僚会議が開催されました。130か国から80名の大臣を含む約1400名が参加し、各国政府、国連機関、NGO、学術機関、サバイバーなどの関係者が参集しました。

この会議では、行動を加速するためのボゴタ行動要請(Bogotá Call to Action)が採択され、Pathfinding Global Allianceが発足し、120か国が誓約を表明しました。

コロンビアで開催されたグローバル閣僚会議に参加したワールド・ビジョン各国のアドボカシースタッフ
コロンビアで開催されたグローバル閣僚会議にて|ワールド・ビジョンのスタッフたち(右から2人目が柴田スタッフ)

この会議が画期的だったのは、紛争や気候変動など世界が様々な課題に直面する中で、これまで注目されにくかった「子どもへの暴力」を国際社会の中心的課題として掲げ、解決に向け各国が高い政治的意思を示した点にあります。

日本からは、こども家庭庁の審議官が出席し、「ボゴタ行動要請」への賛同、Pathfinding Global Allianceへの参加、国際誓約の表明などを通じ、国際的なコミットメントを明確にしました。

筆者もEVAC日本フォーラムの代表として参加し、各国における高い政治的意思の表明や、関係者による熱意溢れる多様な取り組みに触れ、子どもへの暴力撤廃に対する世界的な意思の高まりを肌で感じました。

また、会議中は子どもやサバイバーが会議の中心的役割を担い、主要な登壇者として発言する力強い姿に勇気づけられました。最終日には、暗転した会場にトーチを持った子どもやサバイバーが現れ、自由と希望を象徴する光として世界各国から集まった関係者たちの心が一つとなって、子どもへの暴力撤廃に向けた連帯を誓う象徴的な瞬間となりました。

2024年コロンビアで開催されたグローバル閣僚会議の様子
コロンビアで開催されたグローバル閣僚会議にて|トーチを手に登壇した子どもやサバイバーたち

日本国内での取り組み

こうした国際的な潮流を日本に伝えるため、EVAC日本フォーラムは二つの取り組みを行いました。一つ目は2025年3月、オンラインで「第1回子どもに対する暴力撤廃のためのグローバル閣僚会議参加報告会」を開催しました。

国連事務総長特別代表、ユニセフ、闘争会議主催者、フォーラム参加団体など関係者が参加し、会議成果を日本の政策・実践にどう生かすかについて議論しました。

二つ目は同年5月、ムジート氏を日本に迎え、国連大学でシンポジウム「子どもに対する暴力撤廃に向けて『いまこそ行動を』」を開催しました。平日昼間の開催にもかかわらず約100名が参加。ムジート氏は基調講演で、子どもへの暴力が国のGDPの11%に相当する損失を生むと指摘し、保護とウェルビーイングへの投資が社会的利益をもたらすと訴えました。

行動計画改定と今後の展望

日本では2018年に「子どもに対する暴力撲滅円卓会議」を設置し、関係省庁横断的に取り組みを進めています。2025年には「子どもに対する暴力撲滅行動計画」の改定も予定されており、現場の視点を反映させた実効性の高い内容が求められます。

今後も国内外のパートナーと連携し、子どもたちが安心して生きることができる社会の実現を目指し、活動を続けていきます。

(転載ここまで)

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※アドボカシー=貧困や紛争の原因について声をあげ、問題解決のために政策や社会の仕組みに働きかける活動

子どもたちの声が、社会のしくみに届くまでには、多くの対話と積み重ねが必要です。
アドボカシーは、すぐに成果が見えにくい活動ですが、子どもたちの未来を守るために欠かすことのできない取り組みです。

次回も、アドボカシーの現場での経験を通して、アドボカシーの働きをお伝えしていきます。

アドボカシー・シニア・アドバイザー 柴田 哲子

国連の未来サミットに参加した柴田スタッフ

柴田 哲子(しばた のりこ)

東京外国語大学ロシヤ語学科卒業、東京大学大学院総合文化研究科修士(国際貢献)。
海外経済協力基金・国際協力銀行にて二国間援助に従事したのち、国際NGOの事務所長としてアフガニスタンに赴任し帰還民支援に携わる。現場での経験を通じ、課題解決のためには事業支援に加え政策を変えるアドボカシーが必要との思いを強める。2011年にワールド・ビジョン・ジャパン入団。2013年より子どもの権利に関するアドボカシーに従事。
SDGs市民社会ネットワーク進行役・開発ユニット幹事、教育協力NGOネットワーク副代表、こども家庭庁「子どもに対する暴力撲滅円卓会議、ワーキング・グループ」委員等、複数のNGOネットワークや政府の委員を務める。

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