ネパール防災支援3年の記録|地域レジリエンスを育てる取り組みとは
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「レジリエンス」という言葉
外務省の「日本NGO連携無償資金協力」による助成ならびに皆さまのご支援を受け、 ネパールで3カ年にわたり取り組んできたコミュニティ防災事業が、まもなく一つの節目を迎える。
私たちが目指してきたのは「災害に備える力」、そして「困難の中でも地域が自ら立ち上がっていく力」を高めることだった。
いわゆる「レジリエンス」を育てる取り組みである。
けれど、この「レジリエンス」という言葉。
私はこの仕事の中で、いったい何度口にしてきただろう。
会議でも、報告書でも、現場でも。
分かったつもりで使っていた時期もあった。
しかし、ネパールで仕事を続ける中で、この言葉は何度も私の想定を超えてきた。
日本語には「レジリエンス」にぴたりと当てはまる言葉がない。
「立ち直る力」、「しなやかさ」、「備える力」。説明しようとすると、いくつかの言葉を重ねる必要がある。
ネパールでも、似たような状況がある。
ネパール語には、レジリエンスに近い言葉として「ウタンシル(उत्थानशील)」という表現がある。直訳すれば、「立ち上がる力」。それは、倒れない強さというよりも、倒れてもまた立ち上がるしなやかさを表す言葉だ。
災害のあと、すぐに元に戻れるわけではない。
それでも、誰かが声を掛け、誰かが動き、できることから少しずつ前に進んでいく。
その姿こそが、私たちが現場で何度も見てきた「ウタンシル」だった。
レジリエンスは、計画や数値だけで捉えきれるものではない。
人々が日々どのように備え、判断し、行動しているか。そうした営みの中に、確かに息づいている。

条件の厳しい事業地で
事業地は、ネパール極西の丘陵地にある。
地形は厳しく、インフラも十分とは言えない。社会構造や制度上の制約も重なり、課題は決して単純ではない。
私がネパールと関わり始めてから約10年が経つ。この間に、ネパールは連邦制を導入し、地方政府の役割や責任は大きく変わった。制度や枠組みは整いつつある一方で、それを地域の現実に即して機能させていくことは簡単ではなく、現場では今も試行錯誤が続いている。
私自身も、かつての駐在を終えた後、一度現場を離れ、政府に近い立場からネパールのレジリエンスに関わった時期がある。
そして再び現場に戻ってきた。
立場が変わると、見える景色も変わる。
現場では見えなかった制度の壁が見え、逆に、制度の側からは見えにくい地域の現実があることも分かった。
制度の難しさも、地域のたくましさも、どちらも本当だ。
その両方を行き来する中で、レジリエンスという言葉の輪郭が、少しずつ立ち上がってきたように感じている。

「ウタンシル」の姿
レジリエンスは、計画通りに育つものではない。
しかし、育っていないわけでもない。時間をかけて、地域ごとに異なる形で、確実に形になっていくものだ。
この3年間で、制度の整備も進み、防災体制が強化され、住民の意識や行動にも変化が生まれた。一つひとつは小さく見えるかもしれない。
それでも、この事業が地域のレジリエンスを支える土台づくりの一助となったという手応えは確かにある。
私はいまだに、「レジリエンスとは何か」をきれいに言葉にすることはできない。
むしろ、分からなさを更新し続けている感覚の方が近い。
それでも向き合い続けたいと思えるのは、レジリエンスが、人と地域の営みの中で、じっくりと育ち続けるからだ。

事業はまもなく一区切りを迎える。
けれど、立ち上がる力は、ここで終わるものではない。
「ウタンシル」という言葉が示すように、何度でも立ち上がり、前に進もうとする姿は、これからも地域の中に息づいていく。
その連続の中に、今回の取り組みも、確かに位置づけられているのだと思う。
最後に、本事業の実施にあたり、外務省ならびにご支援をいただきました皆さまに、心より感謝申し上げます。

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