【カンボジア発リアル・ストーリー】 人生を変えたチャイルド・スポンサーシップ

投稿日|2025年12月10日
執筆者:松岡 拓也
  • アジア
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  • #事務局

「彼はデキる!そして、なんて好青年なんだろう!」 

私は2017年から2021年まで、カンボジアに駐在し、チャイルド・スポンサーシップによる地域開発プログラム(AP)や「タケオ州における母子健康改善事業」の管理を担当しました。
そのとき一緒に働いたのが、ボレイ・チュルサールAPの責任者であるシネットであり、彼に対して抱いた印象が上記のものです。
その働きぶりと人間性に、周囲も一目を置く若きリーダーの原点には、実は“チャイルド・スポンサーシップ”との出会いがありました。
このブログでは、シネットが書いた自身のストーリーを和訳してお届けします。
彼の人生をチャイルド・スポンサーシップがいかに変えたのか、彼の言葉をぜひお読みください。

(和訳:支援事業第1部 人道・開発事業第1課 課長 松岡拓也 )

202512松岡さんブログ
シネット(左から3人目)と松岡(左から4人目)


シネットの生い立ちとチャイルド・スポンサーシップとの出会い

きっかけの言葉

「シネット(Sinet)、君は一生懸命勉強して、いつか大学に行くんだ。たくさん学んで、成長すれば、家族や地域の人々の力になれるよ。」
—ワールド・ビジョン・カンボジアのスタッフ ソムロン(Somrong)の言葉

チャイルド・スポンサーシップが変えた地域と私の人生

私はカンボジア南部のタケオ州で育ちました。私の家族の生活は質素で大変なものでした。ほとんどの時間をカニや魚を捕まえたり、草を刈ったり、田んぼで両親を手伝ったりして過ごしていました。

ワールド・ビジョンが私たちのコミュニティにやってきて、すべてが変わりました。2000年、私は8歳でしたが、チャイルド・スポンサーシップを通じて香港の心優しいスポンサーからの支援を受けるようになりました。恥ずかしがり屋だった私は、ワールド・ビジョンのスタッフから隠れていたことを覚えています。

しかし、ソムロンさんが私を呼んで親切に励ましてくれたとき、私の中の何かが変わりました。
私は一生懸命勉強して、ソムロンさんが私に勧めた道をたどろうと決心しました。

希望の種が芽生えた瞬間

ワールド・ビジョンの励ましを受けて、私は子どもの権利啓発、作文や絵のクラス、クリスマス会などの活動に参加しました。徐々に自信がつき、思い切って発言するようになり、自分にもリーダーシップの素養があることを発見しました。

同時に、ワールド・ビジョンは私たちのコミュニティを大きく変えました。貯水池を改修し、学校のフェンス、遊び場、用水路、村の道路を建設し、井戸と手洗い設備を設置しました。生活は楽になりました。水を汲むために2.5キロ歩くのではなく、300メートル歩くだけで済むようになったのです!

これらの経験を通して、教育とコミュニティへの支援は、本当に人々の生活を変えることができると実感しました。

ボレイ・チュルサール地域の子どもたちとシネット
ボレイ・チュルサール地域の子どもたちとシネット

夢を現実に – 大学への進学

一生懸命勉強し、2009年には奨学金を得て王立プノンペン大学で数学を学びました。大学進学の夢が現実のものになったと感じました。ワールド・ビジョンと香港のスポンサーが私に与えてくれた夢でした。
しかし、人生は簡単ではありませんでした。家族が経済的な問題に直面し、私は彼らを支えるために大学を中退しなければなりませんでした。
私の夢は終わったのだと感じました。

人生の目的を見つける

しかし、神は私を忘れず、祈りに答えてくださいました。
2011年にワールド・ビジョンでスポンサーシップの翻訳インターンの求人を見たとき、希望が戻ってきました。インターンとして採用され多くの手紙を翻訳する中で、火事で自分の家を失いながらも、支援を続けているあるスポンサーの手紙に感銘を受けました。周りからの愛と支援があれば、最も困難な状況を克服できることに気づきました。

一年後、私はスポンサーシップのプロジェクト・コーディネーターに昇進し、2015年に私が育ったタケオ州ボレイ・チュルサール郡(カンボジア南部)の地域開発プログラム・マネージャーになりました。

ボレイ・チュルサールとは現地語で「水の王国」という意味。船でないと行けない場所が多くある
ボレイ・チュルサールとは現地語で「水の王国」という意味。船でないと行けない場所が多くある

2012年に初めてボレイ・チュルサールを訪れたときのことは忘れられません。そのとき、私は一人の妊婦が難産に苦しみ、危機的状況に直面しているのを目撃しました。彼女は船で移動した後、タケオ州の州都にある病院まで行かなければなりませんでした。悲しいことに、船の旅だけでも約4時間かかり、その後病院までさらに2時間かかりました。

「もし彼女が真夜中に同じような状況になり、それでも船で長時間移動する必要があったとしたら、どうなっていただろうか?」と自問しました。その瞬間、私は胸が張り裂けそうになりました。ボレイ・チュルサールの人々の助けになりたいと思いました。
神が私の祈りに答えてくださるまでに11年かかりましたが、今日、私は自分の夢を生きています。その夢とは子どもたちや家族のために奉仕し、彼らが自分自身の力や可能性を信じられるよう助けることです。

恩返しとしての地域支援と恩人との再会

現在、私は子どもたちや家族に清潔な水、教育、健康、保護をもたらすプログラムをリードしています。私は働きながら学び続け、修士号を取得しました。
子どもたちや若者が自分自身を知り、大きな夢を持ち、目標を達成する手助けをすることに人生を捧げています。

2022年、ソムロンさんが私のオフィスを訪れた時は大喜びでした。ソムロンさんは、かつて励ました内気な少年が、チームを率いるようになるとは想像もしていなかったと。

「ワールド・ビジョンは私の職場ではなく、第二の故郷です。今日の私があるのは、誰かが私のような子どものスポンサーになってくれたからです。」

「『キャプテン翼』ボールはともだちプロジェクト」から受け取ったボールを手にする子どもたちとシネット
「『キャプテン翼』ボールはともだちプロジェクト」から受け取ったボールを手にする子どもたちとシネット

スポンサー・支援者へのメッセージ

あなたがこれを読んでいるなら、あなたの支援が本当に人々の人生を変えることを知ってください。私はその生きた証です。私を信じてくれた人、香港のスポンサーがいたからこそ、私は今こうして、他の子どもたちが自分自身を信じる手助けができるのです。
チャイルド・スポンサーシップは、子どもを支援するだけではありません。家族、コミュニティ、そしてカンボジアの未来を変えます。
私のような者の夢を実現してくれてありがとうございます。

「支援は未来をつくる」—シネットが教えてくれたチャイルド・スポンサーシップの力

ストーリーの紹介者・和訳者 松岡からのメッセージ

「チャイルド・スポンサーシップは、子どもを支援するだけではありません。家族、コミュニティ、そしてカンボジアの未来を変えます。」

これはシネットの言葉です。彼はこのことを自ら経験し、確信しています。私がカンボジアを離れるときには、「ボレイ・チュルサールAPが終了を迎えるまで、僕は必ずこの地域のために働き続ける」と力強く語ってくれました。

カンボジア以外でも、私は世界各地の支援地を訪問し、シネットのような「生きた証」について見聞きすることがあります。かつてチャイルド・スポンサーシップにより支援を受けていた元チャイルドが、今はワールド・ビジョンのスタッフとして、または政府や民間企業において、そして一人の親として、国の発展と家庭の平和に貢献しています。そんな姿を目にする度に喜びと誇りを感じます。

全ては皆さんからの温かなご支援のおかげです。ぜひこの支援の輪がさらに広がっていってほしいと願います!

上記は、シネットのブログ(英語)を基に一部編集したものです。原文をお読みになりたい方は、以下のウェブサイトをご覧ください。

ワールド・ビジョンのチャイルド・スポンサーシップ

子どもたちの命と未来を守るため、ワールド・ビジョンのチャイルド・スポンサーシップへのご協力をお願いします
子どもたちの命と未来を守るため、ワールド・ビジョンのチャイルド・スポンサーシップへのご協力をお願いします

ワールド・ビジョンでは、長期支援の一環として、チャイルド・スポンサーシップによる支援活動を実施しています。
チャイルド・スポンサーシップは、子どもの健やかな成長のために必要な環境を整えていけるよう活動するプログラムです。
支援を受けた子どもたちが、いずれ地域の担い手となり、支援の成果を維持・発展させていくことを目指しています。

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この記事を書いた人
支援事業第1部 人道・開発事業第1課 課長 松岡 拓也
支援事業第1部 人道・開発事業第1課 課長 松岡 拓也
東京外国語大学英語科を卒業。民間企業勤務を経て、青年海外協力隊としてボリビアに赴任。帰国後、日本貿易振興機構アジア経済研究所開発スクール(IDEAS)で学ぶ。2012年にワールド・ビジョン・ジャパンに入団。2017年から2021年までカンボジアに駐在し、日本政府、企業、個人のご支援による複数事業の管理に従事。現在、スペイン語通訳として地域の学校等でも活動。保育士。防災士。