ルワンダ支援地訪問ツアーに参加して感じたこと

投稿日|2025年7月15日
執筆者:WVJ事務局
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※このブログは、2025年3月のルワンダ支援地訪問ツアーに参加くださったチャイルド・スポンサーの中西陽琉様が書いてくださったものです。

ルワンダを訪問した中西様(中央)
ルワンダを訪問した中西様(中央)

「平和の木プロジェクト」の視察

1994年に起きたジェノサイド(大虐殺)の加害者と被害者がお互いの家の庭に木を植え、水やりなどでの行き来を通して和解を促進する「平和の木プロジェクト」に参加したグループの皆さんからお話を聞いた
1994年に起きたジェノサイド(大虐殺)の加害者と被害者がお互いの家の庭に木を植え、水やりなどでの行き来を通して和解を促進する「平和の木プロジェクト」に参加したグループの皆さんからお話を聞いた

大前提として、善悪の話ではなく、ジェノサイドが起きてしまった要因について理解し、対処していく必要があると感じた。そういった意味で、「平和の木プロジェクト」は根本的な解決にはならないように感じ、どこか疑問が残るものだった。なぜなら、ジェノサイド後に何とか隣同士で生活をするための「対処療法」のように感じたからだ。被害者が加害者を簡単に許せるとは到底思えないし、仕方がない可能性があったとしても、人を殺してしまった人がその罪の意識から解放されるとも思えないからだ。

しかし、平和の木に何の意味もないかというと、そうではないだろう。一度起きてしまったジェノサイドのわだかまりを若い世代が引き継ぐことなく、穏やかに生活できるようにするためには、一種の「儀式」として平和の木はターニングポイントになると考えたからだ。

そして、この視察で自分自身の経験などを振り返り思うことがある。それは、人間はイエス様のような完璧な存在になりきれていないからこそ、人間らしさがあるということだ。人間は他人を思う気持ちを持っているものの、一定程度は利己的な動物であるだろう。そのように、不完全な生き物だからこそ、少しでも手を取り合うことが大事になると感じた。ワールド・ビジョンにおいては、支援する側と受ける側はもちろんのこと、それぞれの国内やコミュニティ単位での関係も大切になるだろう。ゆっくりと手を取り合うことが、ジェノサイドを含めた問題の解決に少しでもつながるのではないかと希望を持っている。

「平和の木プロジェクト」を通して大きく成長したアボカドの木のもとで写真撮影。見上げると、いくつもの実がなっていた
「平和の木プロジェクト」を通して大きく成長したアボカドの木のもとで写真撮影。見上げると、いくつもの実がなっていた

また、私はこの視察を通して改めて感じたことがある。何事も簡単に自分の口で語ることには慎重になるべきだということだ。確かに、より多くの人にこの問題について知ってもらうための発信は、とても意義のあることだと思う。しかし、問題の一片しか知らない私が発信することには慎重になるべきだろう。そんな中で、発信の責任を感じながらも、今回率直なコメントを書かせていただいた。それは、言葉の重みを感じたうえでも、この経験は共有することに意義があると感じたからだ。私が正確な情報を伝えることはできなくても、周りの人にきっかけを与えることはできる。

植樹体験

植樹体験では、木の植え方の説明を受け、現地の子どもたちと一緒に植樹をするというものだった。この体験で感じたことは2つある。

地域の小学校で子どもたちと一緒に果物の苗木を植えた
地域の小学校で子どもたちと一緒に果物の苗木を植えた

1つは、遠く離れた地域にいて、肌の色も言語も違う我々が1つの木を一緒に植え、その木が今後ルワンダの学校で成長していくということに対してのほっこりする気持ちだ。ありきたりかもしれないが、現地の子どもと一緒に1つの木を植えることは、このような気持ちにさせてくれた。

しかし、そのような感想と同時に、私はいつまでたっても「見る」側になっているのではないかと感じた。これが2つ目に感じたことである。悪い言い方をすれば、お金を払いルワンダに行き、用意された空間で、私のためにその場にいる子どもたちと共に木を植え、一緒に写真を撮る。その後の木の世話はすべて任せて帰国し、またお金を送り続ける。ワールド・ビジョンの活動自体は根本的な解決や自立を目標にし、「見る」側になってはいないが、活動のお手伝いをしている私は「見る」側になっているのではないかと感じてしまったのも事実だろう。

しかし、今回この体験をすることで、その状態を自覚することができ、今後も積極的に「見る」側ではなく、一緒に歩む立場として関わっていきたいと気づかせてくれた体験でもあった。

チャイルド、学校訪問で子ども達と触れ合った感想

今回、チャイルドと対面しての感想は、単純に素直に温かい気持ちになったということだろう。ツアーの間、常に考え事をし、少しでも自分の成長につながるようにしていた私だったが、チャイルドとの対面に関しては、ほぼ記憶がないほど温かい気持ちが頭も心も支配していた。

チャイルドのお母さんが携帯で一生懸命に家の写真を見せてくれ、幸せそうな顔をしているのを見て、もしかしたらチャイルドだけでなく、その家族に対しても少しは役に立つことができたのではないかという気持ちもあった。

チャイルドのお母さんが「あなたのお陰で養鶏を始められた」と飼育しているニワトリの写真を嬉しそうに見せてくれて、自分の支援で笑顔が生まれていることを実感できた
チャイルドのお母さんが「あなたのお陰で養鶏を始められた」と飼育しているニワトリの写真を嬉しそうに見せてくれて、自分の支援で笑顔が生まれていることを実感できた

そして何より、チャイルドとの交流で心が温かくなり、それが私を幸せにした。私とチャイルドは年齢が2歳差ということもあり、可愛がるというよりも兄弟のような気持ちで接することができたのも大きいだろう。

また、他の参加者とチャイルドの交流を見ていて感じたのは、参加者だけでなく、チャイルドやその家族にも温かい気持ちが生まれているということだった。そのチャイルドはほとんど喋らなかったが、腕にしがみついたり、横目でスポンサーを見たり、ことあるごとにスポンサーへの興味や信頼を感じることができた。チャイルドの親も、スポンサーを見るとすぐに笑顔になり、ハグをしていた。これは、単にお金や生活レベルの向上だけでなく、お互いの心も豊かになっているのではないかと感じた。

また、学校訪問などで子どもたちと触れ合ったときに印象的だったのは、我々が到着すると子どもたちは歓声をあげ、駆け寄ってきたことだった。そして、楽しそうに交流をしてくれた。しかし、その一方で「Give me money」と言う子どももいた。この状況を見て感じたのは、子どもたちは外国人、ましてやアジア人の来客が珍しくて素直に楽しんでいるのか、それともお金があるであろう人に気に入られようとして反応しているのか、という疑問だった。

最終的な答えは出なかったものの、私なりの整理としては、子どもたちは純粋に楽しんではいるものの、実際にお金に困っているのも事実であり、そのために「Give me money」と言ってきたのではないか、という結論に至った。つまり、それは決して気に入られるための行動ではないということだ。しかし、この結論には何の根拠もない。「アフリカ」の子どもたちは困ってはいるものの、純粋な子どもたちであり、そんな彼ら・彼女らに私が何かできることをしたいという幻想なのかもしれない。

しかし、たとえそんな動機であっても、現地の子どもたちと交流できたことは、今後の私の行動に何かしらの変化をもたらすだろう。

訪問した幼稚園で、たくさんの子どもたちから歓迎を受けた
訪問した幼稚園で、たくさんの子どもたちから歓迎を受けた

その他全体を通して印象的だったこと

今回のツアーに参加した理由は3つあった。1つ目は単純にチャイルドに会いたかったから。2つ目は、ワールド・ビジョンのスタッフや参加者と交流し、自分が応援しているコミュニティにはどのような人が、どのような思いで取り組んでいるのかを知りたかったから。そして3つ目は、支援地域のリアルな状態を知りたかったからだ。

1つ目のチャイルドとの対面についてはすでに書いたので、次に2つ目の目的について述べたい。参加者の方々と積極的に話す中で、最も印象的だったのは、話した方々が皆、人間味にあふれていたことだ。私は、人間として完璧すぎてきれいすぎる人を、どこか信用できないと思ってしまう。そういう人を否定するわけではなく、私にはできないことだからこそ、知らない世界に不安を覚えるのだ。しかし、今回話した方々に共通していたのは、寄付はまず「自分が幸せになることが第一」という考え方だった。また、今回のツアーについても「活動の視察も大事だが、チャイルドに会うことが第一」だという話を聞いた。この考え方に触れたとき、相手のことだけを考えるのではなく、自分自身の気持ちを大切にできている点が素晴らしいと感じた。

個性豊かなツアー参加者の皆さん。移動中のバスでも話が尽きなかった
個性豊かなツアー参加者の皆さん。移動中のバスでも話が尽きなかった

次に、ワールド・ビジョンのスタッフについて。私はワールド・ビジョン・ジャパンのスタッフ3名に共通の質問をした。それは、「スポンサーとチャイルドが対面している場面を見て、どのように感じるか」だった。この問いに対する回答は、大きく2つに分けられるだろう。1つ目は、「ワールド・ビジョンの支援がうまくいっていることへの評価」。2つ目は、「純粋に嬉しい、温かい気持ちになる」といった感情的なもの。前者には、ワールド・ビジョン・ジャパンのスタッフとしての視点が多く含まれ、後者には1人の人間としての感情が含まれている。しかし、3人とも後者の回答をしていた。これを聞いたとき、私は「組織の一員として」ではなく、「1人の人間として」この活動に関わっていることが伝わり、とても嬉しくなった。

ツアー前に実施したオリエンテーションにて。オレンジ色のベストを着ているのが同行スタッフ
ツアー前に実施したオリエンテーションにて。オレンジ色のベストを着ているのが同行スタッフ

これらの経験を通じて、私はチャイルドだけでなく、ワールド・ビジョンという団体そのものも応援したいと強く思うようになった。それは、1つの組織を支援したいというよりも、「自分と同じような信念を持つ1人の人間を応援したい」という気持ちに近い。そして、参加者やスタッフとの交流を通して、ワールド・ビジョンですら1つの「コミュニティ」であり、共通の目標を持って活動することで、最終的には世界の子どもたちのためになるのだと実感した。

3つ目の目的である「支援地域のリアルな状態を知ること」についても、多くのことを学んだ。その中で最も印象的だったのが、ガイドのフレッドの言葉だった。添乗員が「ルワンダの経済的成長が難しい現状をどう感じるか」と尋ねたとき、彼はこう答えた。

「決して豊かな国ではないけれど、それでいい。なぜなら、周りのブルンジやコンゴと比べるとずっと幸せだから」

私はこの言葉を聞き、「周りと比較しての幸せ」という考え方に疑問を持った。しかし、彼の言う「幸せ」は単なる比較ではなく、ジェノサイドという過去を乗り越えてきたルワンダの成長を踏まえたものなのだと感じた。

ガイドのフレッド(左)と添乗員の古澤さん
ガイドのフレッド(左)と添乗員の古澤さん

また、現地では何もかもが日本と違っていた。それは当然のことではあるが、今まで「当たり前」と思っていたことが、決して当たり前ではないと気づかされた。

しかし、1つだけモヤモヤが残った。それは、「私はルワンダの人々を『見る側』に立っているのではないか?」という疑問だ。車の中から手を振り、写真を撮り、説明を受ける。この構造自体に違和感を覚えた。完全に納得のいく答えは出なかったが、今後考え続けるべきテーマになったと思う。

こうした経験を通して、私は「自分の幸せを願うことも大切なのだ」と改めて実感した。そして、ワールド・ビジョンの「何もかもはできなくとも、何かはきっとできる」という言葉に強く共感し、この旅が自分自身の成長につながったと感じている。

チャイルド・スポンサー 中西 陽琉

ルワンダ支援地訪問ツアーに同行したスタッフより

2019年以来、6年ぶりとなる今回のツアーには、中西様を含む19名のチャイルド・スポンサーの皆さまにご参加いただくことができました。チャイルドとの対面では、子どもたちと参加者の皆さまの輝くような笑顔があふれ、なんとも言えない幸せな気持ちになりました。チャイルド・スポンサーシップを通してのご支援が、子どもたちにとって大きな励ましとなっていること、様々な地域の課題を改善する力にとなって変化が起きている様子を実際にご自身の目で見てくださり、帰国後の報告イベントでその体験を語ってくださったことにも感動しました。(ぜひ、イベント開催報告もご覧ください!)

中西様はツアー参加者の中で最年少でありながら、ほかの参加者の皆さまともすぐに打ち解け、スタッフの私たちにも率直な質問や感想を語ってくださっていたのがとても印象的でした。このように感想を文章にもしていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。

中西様には「ユースボランティア」の募集にも応募いただき、小学生むけの「ワールド・ビジョン・サマースクール」の実施のためにもご協力いただいています。まっすぐな想いと行動力にあふれる中西様がますます活躍の場を広げていらっしゃることを、とても頼もしく感じています。

サービス開発課 與十田 喜絵

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ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)は、日本の子どもたちが世界の現状をよく理解し、積極的に国際協力に参加していくことを願い、幅広い年齢層を対象として講師派遣や事務所訪問の受け入れなどの「グローバル教育」を実施しています。

この記事を書いた人
WVJ事務局
WVJ事務局
世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。

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