笑顔の裏側 inルワンダ ~なぜ世界のために働くのか~
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よく聞かれる質問でトップ2に入るものがある。
①なぜそんな仕事をしているのか
②なぜそこまで頑張るのか
「なぜこの仕事をしているのか」
まず、①の質問。
「私はなぜこの仕事をしているのか」
その答えは、とてもシンプルで『信じる力』があるからだと思う。
自分を信じる力。そして、世界が変わると信じる力。この2つに支えられてきた。
しかし、この『信じる力』には正直何の確証もなく、どこから湧いてくるのか自分でも分からなかったりする。そのため、自分の持っている感覚自体が多くの方の感覚とはとても離れているのでは、と感じることもある。
例えば、もしレストランで隣の席から「来月アフリカ出張だからその日空いてないわ~」「黄熱病の予防接種打ったから今日はお酒やめとくよ」なんて声が聞こえてきたら、ちょっと気になるだろう。私はどうやら、その『気になられる側』の人間のようだ。他にも同僚と食事に行くと、各国で自分が経験した武勇伝が鉄板ネタのように繰り広げられ、なかなかニッチな話題で盛り上がるのはよくあることだ。
似た経験をしている同僚と話しているとたまに忘れてしまうのだが、こうした非日常かつ少し過酷さすら連想させる言葉は、「そんな(大変な)仕事」と思われてしまっても仕方がない。しかし、そんな非日常な印象の奥にある、揺るがない『信念』に今回の出張で気付かされることになった。

ルワンダ出張での出来事
先日出張でルワンダに行った時のことである。私は不運にも体調を崩した。
現地で病院に行く始末であり、ワールド・ビジョン(WV)のルワンダ事務所の中ではちょっとした有名人となってしまったが、前向きに考えると貴重な経験になった。
そして翌週にはご支援者の皆さまが日本から「支援地訪問ツアー」でお越しになる予定もあり、普段の出張とは異なるワクワク感や緊張感が入り混じっていた。
ツアーも無事に終わり、成田空港に全員で帰国できた時は心の底から「ほっ」とした。その安堵の反動だったのか、普段なら多少の疲れは笑って乗り越えられる私も、一時幽霊のように力が抜けてしまっていた。
(↑どうぞご心配なさらず。ブログというカジュアルな場を活かして、楽しく読んでいただけますと幸いです!)
しかしその2週間後、ひょんなことから忘れかけていた『信念』を思い起こさせられることになった。

思い起こされた『信念』
スケジュール上、現地でできなかったWVルワンダのスタッフとのミーティングを帰国後オンラインで実施することになった。議題は、今年で支援終了となるキラムルジ地域開発プログラムの今の状況とこれまでの道のりについてである。
プログラム開始当初の2008年から集大成である今年まで、約17年間キラムルジ地域を担当している、ジャン・ボスコ現地スタッフが多くのことを語ってくれた。
なかでも印象に残ったのが『平和の木』プロジェクトの話だ。キラムルジ地域では、『平和の木』というプロジェクトを実施してきた。ルワンダは、今から31年前、民族間の争いによってジェノサイド(大虐殺)を経験した国。その被害者と加害者がお互いの庭に苗木を植え合い、毎日お互いの家に通い、木を育てることを通じて、少しずつ信頼と平和の関係を築いていくといった他の国にはない特徴的なプロジェクトである。その話を聞いているうちに、ふとある疑問が頭に浮かんだ。

「WVのスタッフ自身も地域住民と同じような辛い状況の中で、どのようにして人々のために立ち上がり、前進する力を得たのか?」
返ってきた答えは、「Time to think」。考える時間を持った、とのことだった。
当時のWVルワンダでは、採用されたスタッフは全員PDW(Personal Development Workshop:自己啓発ワークショップ)を受けるのが必須だったそうだ。そこで最初に行われたのが、「考える=振り返る時間」。過去から現在までを見つめ、今自分がどんな気持ちでいるのかを見つめ直す。幸せなのか、苦しいのか、それとももっと複雑な感情なのか。そしてその理由も掘り下げていく。
このワークショップがどのような意図で実施され、参加したスタッフにとってどれほど効果的であったのかは分からない。けれど、このことを教えてくれたWVルワンダのスタッフは、このワークショップで自身にとって最も学びになったことを教えてくれた。
「The love…, increase(愛、それを広げていくことだ)」
そして、こう続けた。
「Increase future hope, become stronger, support your family, survive for future, and even when it’s challenging, stay encourage and work hard for future opportunities(未来への希望を育み、強くなり、家族を支えながら未来のために生き抜く。そしてたとえ困難に直面しても未来の可能性に向かって努力し続ける)」
少しバーンアウト気味だった私にとっては、とてもパワフルなメッセージだった。あまりに圧倒され、言葉が見つからなかった。しかしその声の力強さとメッセージの重みは、震えるような大きな励ましとして私の心に届いた。

「なぜそこまで頑張るのか」
では、冒頭の質問に戻ろう。
②の質問は、古くからの私の友人なら、「あ、私も聞いちゃったやつ!」と思ったかもしれない。
私はいわゆる天才肌ではなく、とりあえず頑張るしかなかった。そして自分で言うのもなんだか気が引けるが、どうやら私は頑張り屋さんであるようだ。しかし、それはあくまで自分の基準の話であり、世の中にはもっとすごい人たちがたくさんいる。その人たちから見ると、「そんなもんかい!」と突っ込まれそうなレベルに過ぎない。
そして、WVにはこのような自分の基準をはるかに超えて、今も、これまでも努力を積み重ねてきたスタッフが山のようにいる。そのため、この団体で「私、頑張ってます!!」なんて大きな声で言えるガッツはまだない。それほどまでに尊敬できる人や、ともに歩み、支え合いながら頑張れる仲間がいる。そして、挑戦する勇気や情熱をくれる存在が世界中のオフィスに集まっている。そんな環境に身を置けることが、私にとって大きな誇りであり、世界の子どもたちに向き合い続けたいと思える、何よりの原動力である。

世界の仲間から学ぶこと
こうして日本のみならず、WVには世界中に勇敢でかっこいいスタッフが集まっている。ルワンダのスタッフとのミーティングは、自分がその一員であることは誇らしくも思う一方で、『自分自身ももっと強くなりたい』と思った1コマであった。
最後に、「キラムルジ地域を担当していて1番印象に残っていることは?」と聞いたところ、自分だけで留めておくのはもったいない、とっておきのエピソードが返ってきたので紹介したい。
「キラムルジ地域開発プログラムでの1番の思い出は、WVジャパンのご支援者の皆さまからの温かいご寄付を通して活動できたことだ。リオやタクヤ(ルワンダ担当の前任である、私の上司)をはじめ、WVジャパンのスタッフと出会えて良い意見交換を重ねながらプロジェクトを進めることができた。本当にたくさんの思い出があるし、彼らを信頼しており、何よりも大好きだ。そして、最後には日本からご支援者の方々が現地に来てくださったこともとても嬉しかった。遠く日本からルワンダを思って応援してくれた皆さまの思いが、長い間希望すら持てなかった人々の暮らしを変えてくれた。今では当時小さかった子どもたちも成長し、平和に暮らすことができている。変革を与えてくれて本当にありがとう」

ルワンダという特別な地で学ぶことは多い。
笑顔の裏側に隠された、それぞれの過去や思いを知ること――それはこの仕事の『本当の意味』を教えてくれる。
もし、このブログを読んで、「一緒に応援したい!」と思ってくださる方が1人でもいれば、それはきっと、私の笑顔の裏にある大きな支えとなるだろう。
支援事業第1部
且田 真理

イベント開催のご案内
2025年5月、東京と大阪でルワンダ支援地訪問ツアーの報告イベント「ワールド・ビジョン・カフェ(WVカフェ)」を開催します。且田スタッフも東京で開催のWVカフェに登壇します。ぜひご参加ください!
- 5月10日(土) 14:00-16:00 東京(中野坂上ハーモニーホール)
- 5月24日(土) 14:00-16:00 大阪(梅田スカイビル)


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