なんとなくで国際協力を始めてみる?
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「どうして国際協力しようと思ったのですか?」
こういった類の問いはいわゆる国際協力業界で働いているとあちこちで直面する問題である。おそらく「国際協力」という部分は他の言葉に代えられてどのような業界でも始めに聞かれる質問なのではないかと思う。これがただの雑談であれば、そこまで困ることはないのだが、そこから踏み込んで、どのような原体験があってこの業界に興味を持ち始めたのかと聞かれると少し答えに臆することがある。
何故ならその質問をした人からの、国際協力をするに至る過程で何かしらの心を動かすような衝撃的なことがあり、何かしらの目覚めがあったはずだという期待を感じてしまう時があるからである。本当はそんなことはないのかもしれないが、少なくとも国際協力に従事する実務家の方に話を聞いていた学生時代の自分はそのような期待を抱いていたように思う。

実際にこちらも目覚めてしまうような体験を多くの諸先輩方から聞かされ、感化された結果としてこの業界に足を踏み入れた自分がいるし、そこにはいつもその人たちの熱く尊い思いがあった。しかし問題はいざ自分にこの問いが向けられると共有すべきストーリーがないように感じられることである。
自分がどのようにワールド・ビジョン・ジャパンで国際協力をするに至ったか振り返ってみると、日本の程よい田舎に生まれ、漫然と、しかし楽しい中学・高校時代を過ごしたのちに、当時なんとなく得意だった気がした英語を使って勉強がしたいという気持ちで「国際」とつく学部がある大学を色々と受けて運よく合格した大学に入学した。大学では国際政治学の勉強が面白く、勉強を続けていたらそれとなく人道開発援助に従事するのが自然に思えてきたが、大抵の場合最低でも2年以上の実務経験が求められており、周りの人がするように就職活動をして、大使館での勤務を経てワールド・ビジョン・ジャパンに辿り着いた。
もちろんその間に自分にとっては感動的な体験や衝撃的な事件があり、それが積み重なって今の自分の国際協力への思いに繋がっているわけなのだが、これまで話を伺った偉大なストーリーテラーの逸話を前にすると大したことのないような気がして尻込みしてしまい、口をつぐんでしまう。
例えば、学生時代の夏休みにアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所を訪れたことがある。広く晴れ渡る美しい青空とそこで起きた凄惨な歴史に大きなギャップを感じつつ、当時国際政治や戦争を勉強していた私は「何か平和のために役立つことがしたい」と強く心に誓った。その数時間後にはポーランド料理に舌鼓を打ち、ビールを飲んでいた。その時の思いは嘘ではないし、今も心に大事にしているものだが、平たく言えば学生が旅行にいった話だ。

ここまでなんだか卑屈になってしまったが、個人的には国際協力業界やNGOが崇高な思いや人に熱く語れる原体験がなくても、なんとなくで辿り着く場所であってほしいと願っている。当然そういったものは厳しい現場で強くあるための芯でありえるとは思いつつも、例えばなんとなく行ったことのない国に行ってみたい、その国について仕事を通じて知ってみたいとか、そこにただ求人募集があったからといった具合の人がいても面白いと思う。
NGO職員としてではなく、何か新しいことを始めてみたいという理由でボランティアを始めてみたり、臨時収入があり気分がいいから一部を募金箱に入れてみたりといった関わりもあるかもしれない。NGOの仕事は、一緒に事業を行うコミュニティの人々と文字通り膝を突き合わせて問題に正面から向き合うものであり、衝撃的な体験や心を動かされる場面に否が応でも遭遇するはずである。自分自身ワールド・ビジョン・ジャパンに入団する前に人に話せるエピソードがないと書いたが、在職1年半の間に共有したい話は山ほどある。ここには書ききれないので別の機会に書くこととしたいが、次の記事を待つ間、ひとまずほかのスタッフの記事もぜひ読んでほしい。

冒頭の「どうして国際協力しようと思ったのですか?」という問いに戻る。
この質問には答えるのは難しいが、聞かれること自体は幸いである。国際協力NGOで働いていると、「なんか自分にはよく分からないけど凄いことしてるんだね」とか「自分にはできないことだけど頑張ってね」といった言葉をかけられ話が終わってしまうことも少なくない。
もっとなんとなくで、どのような形でも国際協力を始める仲間が増え、「一体全体どうして国際協力なんてすることになったのか」という疑問も湧かないくらい国際協力の裾野が広がったうえで、思いを語らいあえるようになれば、ただの観光をした一学生の思い描いた平和な世界へも一歩近づくのではないかと夢に見たりしている。
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